SENSA

2021.09.29

羊文学、「Hidden Place」ツアー完結。新木場スタジオコーストで鳴らした、愛すべき世界と対峙するための音楽

羊文学、「Hidden Place」ツアー完結。新木場スタジオコーストで鳴らした、愛すべき世界と対峙するための音楽

世界を憎むのは簡単だ。今日もどこかで誰かが誰かを傷つけ、理不尽に涙を流している。だが、それでも、だ。それでも、この世界は捨てたものじゃないことを、楽しくて心を震わせることもたくさんあるということを、羊文学の音楽は思い出させてくれる気がする。世界と、そこに生きる自分を肯定する。そんなポジティブなエネルギーが羊文学の音楽には宿っていると思う。

9月24日に新木場スタジオコーストで開催された羊文学のワンマンライブ「Hidden Place」も、そういうことを考えさせられる時間だった。

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ステージには観葉植物や様々なかたちのオブジェで箱庭のような空間にアレンジされていた。SEのJuana Molinaの「Vive solo」が流れ出し、塩塚モエカ(Vo/Gt.)と河西ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)がステージに登場。フクダが叩く野性的なタムドラムが底を支え、静かに滑空してゆくようなバンドサウンドにのせて、透明感のある塩塚のボーカルが伸びやかにフロアに響きわたった。疾走感あふれるサウンドにポップなメロディがはずむ「変身」から「踊らない」へ。ギター、ドラム、ドラムというベーシックなスリーピース編成でありながら、羊文学のオルタナティブなロックサウンドは、とても表情豊かにドラマチックな起伏を描いていった。

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羊文学のライブでは、イントロや間奏のたびに、フロントに立つ塩塚と河西がドラムセットの前に集まって演奏するシーンを何度も目にする。お互いの音を感じ合い、バンドで音を重ね合う喜び享受するようなその光景からは、音楽をピュアに楽しむバンドのスタンスがひしひしと伝わってくる。真夜中にまどろみのなかで〈おまじないちょうだい〉と何度も繰り返す「おまじない」、6/8拍子のリズムが大きく弧を描く「花びら」と、テンポを落とした中盤の楽曲たちは、さらに深い羊文学の世界へと聴き手を引きずり込んでいく。

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いくつものハイライトを描いたライブのなかでも、中盤に披露された「powers」が素晴らしかった。〈両手を高く広げ、君ならできるはずだ〉という歌い出しに、フロアから一斉に腕が上がった。派手さはないが、塩塚のボーカルを繊細に引き立たせる河西のベースが生き生きと躍動し、丁寧に構築されたバンドアンサンブルが次第に加速度を上げる。歌詞に綴られるのは、"君"の「選択」と「未来」を肯定するメッセージだ。〈君が世界を望めるように歌うよ〉と真っ直ぐに伝えるその歌は、羊文学が音楽を届ける意味そのもののようだった。

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真っ赤な照明がステージを染め、ループするフレーズが高い中毒性を生んだガレージロック「Girls」、塩塚が「思い思いにダンスしてもいんだぜ(笑)」と少しおどけた口調で言った「涙の行方」、ステージを優しく灯す間接照明のなかで届けた季節外れのクリスマスソング「1999」から、吸い込まれるような美しいシューゲイザーサウンドを聴かせた「ghost」へと、クライマックスにかけてはライブの人気曲を次々に畳みかけた。そして、「最後の1曲です」と届けたのは、ポップで開放的な「あいまいでいいよ」。序盤のMCで塩塚が「クリエイティブに楽しんでほしい」と伝えたとおり、それぞれが思い思いの楽しみ方で羊文学の音楽に身を委ねる、フリーダムな空間を作り上げて本編を締めくくった。

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この日のライブは、昨年12月にリリースされたメジャーデビューアルバム『POWERS』のレコ発ツアーの延期公演という位置づけだった。そのため、本編はあくまでも『POWERS』以前の曲にこだわった印象があったが、アンコールでは、最新EP『you love』からの2曲「マヨイガ」と「夜を越えて」が披露された。あふれるポップな煌めきのなかで、〈君の明日は どうしたってやってくる〉と力強く歌う「マヨイガ」も、〈幸せはいつもそこにあるのに気づかない〉と内省する「夜を越えて」も、最新の羊文学の姿だ。かつては世界に抗うように音を鳴らしていた羊文学が、いまは世界が愛すべきものであることを、その音楽で伝えようとしていた。

この日、ステージに去り際に、塩塚が残した言葉は、「みなさんの明日がまた幸せでありますように」だった。羊文学のまなざしはいつも「現実」に向いている。

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写真:Yuki Kawashima

羊文学「Tour 2021 "Hidden Place"」2021年9月24日 USEN STUDIO COAST SET LIST
01. mother
02. ブレーメン
03. 変身
04. 踊らない
05. 砂漠のきみへ
06. おまじない
07. 花びら
08. 人間だった
09. powers
10. ハロー、ムーン
11. ロックスター
12. Girls
13. 涙の行方
14. マフラー
15. 1999
16. ghost
17. あいまいでいいよ
<アンコール>
18. 銀河鉄道の夜
19. マヨイガ
20. 夜を越えて

プレイリストはこちら


RELEASE INFORMATION

ニューシングル「光るとき」
TVアニメ「平家物語」オープニング・テーマ
※リリース情報近日発表

ノンテロップオープニング映像・羊文学「光るとき」


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羊文学 ep「you love」
KSCL-3309 ¥2,100 +税

Track:
1 マヨイガ
2 あの街に風吹けば
3 なつのせいです
4 白河夜船
5 夜を越えて
6 マヨイガ with 蓮沼執太フィル

試聴はこちら


LIVE INFORMATION

まほうがつかえる 2021
【ビルボードライブ横浜】(1日2回公演)
12/4(土)1stステージ 開場14:30 開演15:30 / 2ndステージ 開場17:30 開演18:30
サービスエリア¥6,400
カジュアルエリア¥5,900 (1ドリンク付)
※ご飲食代は別途ご精算となります。
詳細はこちら
*本公演の横浜公演の予約はビルボードライブWEBサイトおよびプレイガイドにて行います。ビルボードライブ予約センターでの電話受付はございませんので予めご了承ください。
[お問い合わせ] ビルボードライブ横浜:0570-05-6565
〒231-0003 神奈川県横浜市中区北仲通5 丁目57 番地2 KITANAKA BRICK&WHITE 1F

【ビルボードライブ大阪】(1日2回公演)
12/11(土)1stステージ 開場14:30 開演15:30 / 2ndステージ 開場17:30 開演18:30
サービスエリア¥6,400
カジュアルエリア¥5,900 (1ドリンク付)
※ご飲食代は別途ご精算となります。
詳細はこちら
[お問い合わせ] ビルボードライブ大阪:06-6342-7722
〒530-0001大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2

発売日
Club BBL会員先行=2021/10/26(火)12:00正午より
一般予約受付開始=2021/11/2(火)12:00正午より


LINK
オフィシャルサイト
@hitsujibungaku
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