REPORT

2026.01.05

Keeshond、LOSTAGEを迎えたツアーファイナルで示す、リスペクトを超えたバンドの成長と悲しみの昇華

Keeshond、LOSTAGEを迎えたツアーファイナルで示す、リスペクトを超えたバンドの成長と悲しみの昇華

2025年12月12日(金)、東京・新代田FEVERにて東京を拠点に活動する4人組・Keeshondが『OUR NEST TOUR』のツアーファイナルを迎えた。6月にリリースした1stアルバム『Keeshond』を携え、全7公演を展開した本ツアー。バンドにとって最大キャパシティの会場へ挑戦したこの日のゲストは、LOSTAGE。インタビューにて「自分もこういうバンドをやりたいと思うようになった」と語っていた通り、4人が敬愛する大先輩を迎えた同公演は、ともすれば師弟対決の風貌を示してもおかしくはなかっただろう。しかし、この一夜で何よりも克明に示されたのは、Keeshondが初めてのアルバムをいかに消化してきたのかというアルバムツアーの本懐そのものであった。

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とはいえ、積もり積もったLOSTAGEへの憧れと敬愛が随所に露見しまくっていたのも事実。「ゆっくりゆっくりツアーを回って、最終日を迎えることができました!」と渾身の一発からオープニングを飾った「鶯」の温もりと侘しさをミキシングした音像は、間違いなくLOSTAGEの系譜に属していたと言えるはず。あるいは、<消した火種をまた灯して>と書き表した「目眩く」に滲む、暮らしと街の光をニュートラルに捉えた上でパチパチと燻り続けている空腹感をバーストさせる筆致も、どんどんと過ぎ去っていく日々に〈間に合わないのかな それもいいだろ 悪くないだろ〉(「My Favorite Blue」)と歌うLOSTAGEが示す態度とリンクしているわけで、キム・ジョンホン(Ba)が「人生を変えられたバンド」と3人を称しているのも納得である。

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こうしたリスペクトが結実したひとコマが、「若い芽を摘みにきた、と言ってもらえて嬉しいです」と投下した「あの花の名前を」だった。遠き日に見つけた一輪と自身を重ね合わせ、誰にも目を配られなくとも土壌を耕し抜かんとするこのナンバー。春先の気配を喚起させるピンクと若草色の照明がふわりと咲く中、数秒のブレイクを経て深く刻まれていった<種を蒔いていよう いつか 誰かのため>の1行は、五味岳久(LOSTAGE・Bass+Throat)が口にした「若い世代に何か残るものを遺したいと思っていて。それをずっと探してるねんけど。同じステージに立つことで、これからの彼らの足しになったらいいな」という言葉と共通する思いで綴られたに違いない。つまり、LOSTAGEからKeeshondへ、そしてKeeshondから次なるバンドへと託し、託された意志がこの瞬間、確かに花開いていったのだ。

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しかし冒頭に記述したように、Keeshondは魂としか形容しえない立ち姿を先人たちから受け継ぎ、自分たちなりに発展させていくのだと表明しただけではなかった。では、彼らが半年に及ぶ旅路で獲得したものは何だったのか。そのアンサーが、ハウリングと共にオレンジの光が舞台を包む中、次第にボリュームを上げていく演奏が灯火に息を吹き込むみたいに見えた「暮らしのどこかで」だったと思う。いや、正確に言うならば、この楽曲を最後に置かなかったことこそが重要なのではないか。というのも、取材でながみねゆうだい(Gt,Vo)が「無理矢理にでも前を向いた後、別れた人たちに対する思いを伝えようとした」「どこかで自分のことを見ていてねというメッセージをアルバムの最後に持ってきたかった」と話してくれた通り、「暮らしのどこかで」は離別や決別をテーマに据え、20代へ突入した4人のリアルが閉じ込めたアルバムのコアであり、絶対的な終止符だったはず。しかし、この歌で幕は下ろされなかった。「どこかで見ていてね」だけでは終わらなかった。彼らは別れの一歩先へ歩みを進めようとしたのである。数秒の静寂を経て、アカペラで放たれた〈私はここにいる。〉の1節は、この場所で音楽と生きていく決心を、この街で生き延びていく覚悟を体現していた。

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「暮らしのどこかで」に代わり、ラストを彩ったのは「drift apart」。友との別れに則して編まれた同ナンバーは、再会を祈る歌からリユニオンの誓いへと羽化を果たしていく。清々しい表情で歌われた<楽しさはとっておいて また再会を願うだろう>という最終ラインには、「会えるかどうかも分からないけど、頑張ってみるよ」なんて曖昧さはなく、直接交わした約束を自分自身の手で掴み取り、叶えようとする強固な意志だけが存在していた。音が鳴り止む直前、ながみねが叫んだ「またね!」の一言。それは彼らが真っ直ぐに別れと対峙したゆえに重みを帯びた、遠くない未来に顔を突き合わせるためのおまじないにほかならない。

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こうしてゴールテープが切られた『OUR NEST TOUR』。Keeshondはこの7本を通じて、どうすることもできない不可避の別れとその途方もない悲しみから逃げるのではなく、正々堂々とぶつかる術と筋力を獲得したよう。4人の音楽は決して底抜けに明るいわけじゃない。だからこそ、それでも果敢に現実と戦わんとする彼らの背中はたくましく、君とあなたへ少しばかりの大きな勇気を与えてくれた。

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文:横堀つばさ
撮影:稲垣ルリコ

RELEASE INFORMATION

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2025年6月4日(水)
Keeshond「Keeshond」
Format:Digital
Label:2st Records

Track:
1.鶯
2.drift apart
3.目眩く
4.sunk
5.あの花の名前を
6.明日をあつめて
7.knit
8.空を飛ぶように
9.別れの詩
10.暮らしのどこかで

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LINK
オフィシャルサイト
@keeshond_
@keeshond_band

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