YOURNESS、定期公演「Breathing」を完走。その先へ続く想いが循環した夜
REPORT
2025.12.26
「いろんな音楽を好きな人がいっぱい集まった」ジャンルを解体し、共振した一夜──んoonとDos Monos、音楽の境界が溶け合う現場
んoonが12月19日に東京・WWWXでツーマンライブ「んoonとDos Monos」を開催した。2025年のんoonは東名阪を回ったツアー「FIRST LOVE TOUR 2025」をはじめ、さまざまなイベントやフェスに出演。このDos Monosとのツーマンが本年の締めくくりとなる。一方のDos Monosは5月にマンガ家の伊藤潤二がアートワークを手がけたEP『Dos Moons』を発表。さらに12月24日には最新EP『Dos Moons 2』のリリースを控えていた。

場内が暗転すると、まずステージに没 AkA NGSが姿を現した。彼が手元の機材を操作し始めると、環境音と電子音が複雑に交錯するノイズが場内に響き渡る。ノイズは徐々に『Dos Moons』の収録曲「Pearl」へと繋がっていった。メランコリックな質感がループするビートレスのミニマルなトラックに、マイクを握った没がオートチューンを深く効かせた声で叫ぶようにラップを乗せた。続いてステージに現れた荘子itは、ギターを肩にかけると、落ち着いたトーンのラップを披露。キックやベースが加わり始めたトラックに、重く歪んだギターをレイヤー状に重ねていく。楽曲の全貌が露わになり始めたところに、TaiTanが登場。言葉を隙間なく詰め込むラップで、フロアの熱量を引き上げた。終盤、サックスのサンプリングと荘子itの激情的なギターソロが交錯。楽曲は壮絶なカオスへと変貌を遂げた。ヒップホップ、プログレ、メタル、民族音楽、ジャズ、アヴァンギャルド......。荘子itが影響を公言しているフランク・ザッパやキャプテン・ビーフハートのエクスペリメンタリズムを、2020年代のヒップホップ感覚で体現したかのような印象を受けた。


3rdアルバム『Larderello』の収録曲「medieval」は、荘子itが弾くギターによって大きく印象を変えた。TaiTanのアカペラからスタートする「MOUNTAIN D」は、荘子itのヘヴィなギターサウンドと没のオートチューンによるシャウトが、ジャンルレスな高揚感を高めていく。「QUE GI」はギターの推進力に、TaiTanと没のラップがそれぞれのグルーヴを重ねていった。「Oz」は3人のラップのBPMがそれぞれ異なるプログレッシブなナンバー。続け様にプレイした「KIRA KIRA」は最新EP『Dos Moons 2』の収録曲。荘子itの硬質なギターフレーズにTaiTanと没がエネルギッシュにマイクリレーするパワフルな楽曲で、特にフックの「全てがキラキラしていた毎日」はキャッチーでこれからライブの定番曲に育っていきそうな可能性を感じさせた。さらに同EPの1曲目を飾る「LETSUGOU」も披露。高速の16ビートから、ハードコアな2ビート、初期レイヴ的な高速ブレイクビーツ、ジャージーと同じBPMの中でビートパターンと音色が目まぐるしく変化して、メンバーは「れつごう」を連呼する。TaiTanが「わかんなくても適当に『れつごう』って言ってればどっかで合うから」と、初めて聴いた観客もどんどんと楽曲に参加していった。

「Lee Merlin」「In 20xx」は3人がマイクリレーする、今回のセットリストの中では比較的オーセンティックな楽曲。とはいえ、ビートは複雑で、ラップもフリーキー。「Estrus」はオリジナルとリミックスを混ぜたスペシャルアレンジで、3人の声もどんどんと熱を帯びていった。「KIDS」では没が強烈なシャウト。クライマックスの「HI NO TORI」では貯めるイントロで、没とTaiTanが「行こう!みんな」「レッツゴー!」と煽ると、観客から「レッツゴー!」と絶叫でレスポンスが返された。中盤にブラストビート、後半でヘヴィなメタルとどんどん展開していくバックトラックにそれぞれがラップを乗せていくあり様は、ヒップホップ的であり、パンク的であり、ダンスミュージック的でもある。つまりジャンルではなく、自分たちのビジョンに忠実な音楽を創る。これがDos Monosなのだ、と全身で表現していた。んoonへの感謝を述べて「Theater D (Encore)」でステージを降りた。なお、Dos Monosは2025年1月31日に東京・LIQUIDROOMでbilly woods、By Storm (ex- Injury Reserve)らを招いた自主企画オールナイトイベント「Theater D vol.5」を開催する。

しばしの転換を経て、楽器メンバーが位置につくと江頭健作の優しい音色の中、JCがゆっくりとステージに入ってきた。キーボードをメインにゆったりとアレンジされた「Pillow」からライブはスタートした。「Age」の後に披露した「Tragedy」では早速、圧倒的な演奏力を見せる。ハープのキャッチーなフレーズがリフレインする「Freeway」では、エレピの滑るような音色、積島直人の6弦ベースで奏でるプログレばりに複雑なベースライン、サポートドラムス・岸田佳也のマスロックばりに的確でタイトかつ存在感あるリズムが一体となって壮大なアンサンブルを奏でた。




「Green」はインパクトのあるハイハットの刻みが特徴で、ハープとキーボードが徐々に音を重ねていく。そのメロディーのボトムは積島のベースが支えるという超絶技巧派バンドだからこそ成せる楽曲。JCの歌とドラムの推進力を中心に据えた「Kaiya」は、ハープ、ベース、キーボードの演奏力で楽曲を色付けた。んoonのファンクネスが色濃く表現された「Conversation Piece pt.3」は、キーボードとベースラインが絡み合いに、ハープがしなやかで美しい音色を添える。グルーヴィだが浮遊感もあるところがこのバンドらしさと言える。

中盤のセットリストは、ジャジーな「Godot」、ベースを弓で弾いて不穏な歪みを出す「To Dog」、キーボードの中毒性あるメロディーとハープの音色が心地よい「Touch」といった、んoonの自由で実験的な音楽性と観客を魅了する演奏力が両立した楽曲が並ぶ。さらに、疾走感のある「NANA」から、10月に発表した最新曲の「HEBITORA」へ。この曲では、ハープをエフェクターで思い切り歪ませ、ギターのようなノイズを轟かせる。そのド派手な音に呼応するように、ベースとドラムも複雑なリズムを刻み続ける。一方で、JCのボーカルと江頭のキーボードはシンプルで優しいメロディーを紡ぎ、これら対極にある音がアンサンブルした瞬間、とてつもないスケールの世界が生まれた。その勢いのまま「Forest」に突入。壮大なメロディラインと、Squarepusherを彷彿とさせる積島の変態的なベースラインに目も耳も奪われた。JCが「WWWX! 一年、お疲れ様でした〜!」と観客に挨拶したあと、代表曲「Summer Child」をプレイ。メンバー全員が少しずつ、丁寧に音を重ねて、焦らずに楽曲のテンションを高めていき、JCの「Dance」という掛け声で一気に緩和して、間奏パートに突入することで強烈なカタルシスを与える。それまでビートに揺れていた観客もたまらず声をあげた。歌い終えた後、JCは「んoonとDos Monos! 私たちが好きな人を呼んでやりました(笑)。本当にかっこよかった。Don Monos、Thank You!」と観客に感謝を伝えた。そして「Billion」で雄大で強烈な演奏を聞かせてステージを後にした。


演奏が終わると観客はすぐにアンコールを求めて、バンドもそれに応える。ウエスが奏でるクリスマスらしいメロディとともにJCもステージに帰ってきた。JCは「(私たちは)Dos Monosがとても好きで、今回一緒にできてすごい良かったんだけど、私もさっきあっちとかあっちとかそことかいろんなところで(Dos Monosを)観てて。いろんな音楽を好きな人がいっぱい集まったなと思ったら、もうほんとに......、ありがとうって感じ」。「なんか"んoonってどういうジャンルなんですか?"ってよく聞かれるんですけど、カテゴリーとかではなく、みんなが好きな音楽で勝手に体が動いちゃうみたいなことに反応して、この師走の金曜日にみんなが来てくれたことが本当に嬉しい。ありがとう」と話した。

そして、ウエスがさきほどのメロディを再び演奏し、そこにJCが某王道クリスマスソングのイントロだけ歌ってからタイトな「Gary」に繋げる甘辛アレンジ。JCが鈴を鳴らして、ストイックだがクリスマスを感じるスペシャルバージョンだ。歌い終えた後、JCは「ここで観たことは忘れてください。動画撮った人もいると思うけど、そっと消してください」と話して、観客を笑わせた。最後に「Tokyo Family Restaurant」と「Amber (Summer Ver.)」というスタイリッシュな代表曲を演奏して、素晴らしいツーマンライブを締め括った。
んoonは2026年1月21日に同じく東京・WWWXで自主企画ツーマンライブの第二弾となる「んoonと折坂悠太(band)」を開催することが決まっている。
文:宮崎敬太
撮影:宮下夏子

んoon「Hebitora」
2025年10月1日(水)
Format:Digital
Label:FLAKE SOUNDS
Track:
1.Hebitora
試聴はこちら

会場:渋谷WWW X
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:んoon and to be announced.
料金:ADV. ¥5,500 / (各1D代別途)
チケット :
チケットぴあ(URL) https://w.pia.jp/t/hoon-tokyo/
ローソンチケット(URL) https://l-tike.com/hoon/
イープラス(URL)https://eplus.jp/hoon/
@hoon_jp
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場内が暗転すると、まずステージに没 AkA NGSが姿を現した。彼が手元の機材を操作し始めると、環境音と電子音が複雑に交錯するノイズが場内に響き渡る。ノイズは徐々に『Dos Moons』の収録曲「Pearl」へと繋がっていった。メランコリックな質感がループするビートレスのミニマルなトラックに、マイクを握った没がオートチューンを深く効かせた声で叫ぶようにラップを乗せた。続いてステージに現れた荘子itは、ギターを肩にかけると、落ち着いたトーンのラップを披露。キックやベースが加わり始めたトラックに、重く歪んだギターをレイヤー状に重ねていく。楽曲の全貌が露わになり始めたところに、TaiTanが登場。言葉を隙間なく詰め込むラップで、フロアの熱量を引き上げた。終盤、サックスのサンプリングと荘子itの激情的なギターソロが交錯。楽曲は壮絶なカオスへと変貌を遂げた。ヒップホップ、プログレ、メタル、民族音楽、ジャズ、アヴァンギャルド......。荘子itが影響を公言しているフランク・ザッパやキャプテン・ビーフハートのエクスペリメンタリズムを、2020年代のヒップホップ感覚で体現したかのような印象を受けた。


3rdアルバム『Larderello』の収録曲「medieval」は、荘子itが弾くギターによって大きく印象を変えた。TaiTanのアカペラからスタートする「MOUNTAIN D」は、荘子itのヘヴィなギターサウンドと没のオートチューンによるシャウトが、ジャンルレスな高揚感を高めていく。「QUE GI」はギターの推進力に、TaiTanと没のラップがそれぞれのグルーヴを重ねていった。「Oz」は3人のラップのBPMがそれぞれ異なるプログレッシブなナンバー。続け様にプレイした「KIRA KIRA」は最新EP『Dos Moons 2』の収録曲。荘子itの硬質なギターフレーズにTaiTanと没がエネルギッシュにマイクリレーするパワフルな楽曲で、特にフックの「全てがキラキラしていた毎日」はキャッチーでこれからライブの定番曲に育っていきそうな可能性を感じさせた。さらに同EPの1曲目を飾る「LETSUGOU」も披露。高速の16ビートから、ハードコアな2ビート、初期レイヴ的な高速ブレイクビーツ、ジャージーと同じBPMの中でビートパターンと音色が目まぐるしく変化して、メンバーは「れつごう」を連呼する。TaiTanが「わかんなくても適当に『れつごう』って言ってればどっかで合うから」と、初めて聴いた観客もどんどんと楽曲に参加していった。

「Lee Merlin」「In 20xx」は3人がマイクリレーする、今回のセットリストの中では比較的オーセンティックな楽曲。とはいえ、ビートは複雑で、ラップもフリーキー。「Estrus」はオリジナルとリミックスを混ぜたスペシャルアレンジで、3人の声もどんどんと熱を帯びていった。「KIDS」では没が強烈なシャウト。クライマックスの「HI NO TORI」では貯めるイントロで、没とTaiTanが「行こう!みんな」「レッツゴー!」と煽ると、観客から「レッツゴー!」と絶叫でレスポンスが返された。中盤にブラストビート、後半でヘヴィなメタルとどんどん展開していくバックトラックにそれぞれがラップを乗せていくあり様は、ヒップホップ的であり、パンク的であり、ダンスミュージック的でもある。つまりジャンルではなく、自分たちのビジョンに忠実な音楽を創る。これがDos Monosなのだ、と全身で表現していた。んoonへの感謝を述べて「Theater D (Encore)」でステージを降りた。なお、Dos Monosは2025年1月31日に東京・LIQUIDROOMでbilly woods、By Storm (ex- Injury Reserve)らを招いた自主企画オールナイトイベント「Theater D vol.5」を開催する。

しばしの転換を経て、楽器メンバーが位置につくと江頭健作の優しい音色の中、JCがゆっくりとステージに入ってきた。キーボードをメインにゆったりとアレンジされた「Pillow」からライブはスタートした。「Age」の後に披露した「Tragedy」では早速、圧倒的な演奏力を見せる。ハープのキャッチーなフレーズがリフレインする「Freeway」では、エレピの滑るような音色、積島直人の6弦ベースで奏でるプログレばりに複雑なベースライン、サポートドラムス・岸田佳也のマスロックばりに的確でタイトかつ存在感あるリズムが一体となって壮大なアンサンブルを奏でた。




「Green」はインパクトのあるハイハットの刻みが特徴で、ハープとキーボードが徐々に音を重ねていく。そのメロディーのボトムは積島のベースが支えるという超絶技巧派バンドだからこそ成せる楽曲。JCの歌とドラムの推進力を中心に据えた「Kaiya」は、ハープ、ベース、キーボードの演奏力で楽曲を色付けた。んoonのファンクネスが色濃く表現された「Conversation Piece pt.3」は、キーボードとベースラインが絡み合いに、ハープがしなやかで美しい音色を添える。グルーヴィだが浮遊感もあるところがこのバンドらしさと言える。

中盤のセットリストは、ジャジーな「Godot」、ベースを弓で弾いて不穏な歪みを出す「To Dog」、キーボードの中毒性あるメロディーとハープの音色が心地よい「Touch」といった、んoonの自由で実験的な音楽性と観客を魅了する演奏力が両立した楽曲が並ぶ。さらに、疾走感のある「NANA」から、10月に発表した最新曲の「HEBITORA」へ。この曲では、ハープをエフェクターで思い切り歪ませ、ギターのようなノイズを轟かせる。そのド派手な音に呼応するように、ベースとドラムも複雑なリズムを刻み続ける。一方で、JCのボーカルと江頭のキーボードはシンプルで優しいメロディーを紡ぎ、これら対極にある音がアンサンブルした瞬間、とてつもないスケールの世界が生まれた。その勢いのまま「Forest」に突入。壮大なメロディラインと、Squarepusherを彷彿とさせる積島の変態的なベースラインに目も耳も奪われた。JCが「WWWX! 一年、お疲れ様でした〜!」と観客に挨拶したあと、代表曲「Summer Child」をプレイ。メンバー全員が少しずつ、丁寧に音を重ねて、焦らずに楽曲のテンションを高めていき、JCの「Dance」という掛け声で一気に緩和して、間奏パートに突入することで強烈なカタルシスを与える。それまでビートに揺れていた観客もたまらず声をあげた。歌い終えた後、JCは「んoonとDos Monos! 私たちが好きな人を呼んでやりました(笑)。本当にかっこよかった。Don Monos、Thank You!」と観客に感謝を伝えた。そして「Billion」で雄大で強烈な演奏を聞かせてステージを後にした。


演奏が終わると観客はすぐにアンコールを求めて、バンドもそれに応える。ウエスが奏でるクリスマスらしいメロディとともにJCもステージに帰ってきた。JCは「(私たちは)Dos Monosがとても好きで、今回一緒にできてすごい良かったんだけど、私もさっきあっちとかあっちとかそことかいろんなところで(Dos Monosを)観てて。いろんな音楽を好きな人がいっぱい集まったなと思ったら、もうほんとに......、ありがとうって感じ」。「なんか"んoonってどういうジャンルなんですか?"ってよく聞かれるんですけど、カテゴリーとかではなく、みんなが好きな音楽で勝手に体が動いちゃうみたいなことに反応して、この師走の金曜日にみんなが来てくれたことが本当に嬉しい。ありがとう」と話した。

そして、ウエスがさきほどのメロディを再び演奏し、そこにJCが某王道クリスマスソングのイントロだけ歌ってからタイトな「Gary」に繋げる甘辛アレンジ。JCが鈴を鳴らして、ストイックだがクリスマスを感じるスペシャルバージョンだ。歌い終えた後、JCは「ここで観たことは忘れてください。動画撮った人もいると思うけど、そっと消してください」と話して、観客を笑わせた。最後に「Tokyo Family Restaurant」と「Amber (Summer Ver.)」というスタイリッシュな代表曲を演奏して、素晴らしいツーマンライブを締め括った。
んoonは2026年1月21日に同じく東京・WWWXで自主企画ツーマンライブの第二弾となる「んoonと折坂悠太(band)」を開催することが決まっている。
文:宮崎敬太
撮影:宮下夏子
RELEASE INFORMATION

んoon「Hebitora」
2025年10月1日(水)
Format:Digital
Label:FLAKE SOUNDS
Track:
1.Hebitora
試聴はこちら
LIVE INFORMATION

んoonと 第2弾
2026年1月21日(水)会場:渋谷WWW X
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:んoon and to be announced.
料金:ADV. ¥5,500 / (各1D代別途)
チケット :
チケットぴあ(URL) https://w.pia.jp/t/hoon-tokyo/
ローソンチケット(URL) https://l-tike.com/hoon/
イープラス(URL)https://eplus.jp/hoon/
LINK
オフィシャルサイト@hoon_jp
@hoon_jp_




