INTERVIEW

2026.08.21

「信頼が確固たるものに変わった」──バンドからアンサンブルへ。Khamai Leonに訪れた変化とは?

「信頼が確固たるものに変わった」──バンドからアンサンブルへ。Khamai Leonに訪れた変化とは?

Khamai Leonに革命が起きた。確かに、1stアルバム『hymn』を引っ提げ、颯爽とバンドシーンに頭角を現した2022年から、彼らはそのバンド名の通り、音楽性を変え、ライブを変え、よりバンドらしく、より4人の生き物らしく脱皮を重ねてきた。しかし、このインタビューで語られているように、「バンドらしさ」というキーワードがKhamai Leonに鎖として纏わりつく瞬間もあったという。そんな中、4人が到達したのが「Contemporary Ensemble from Tokyo」という新たなスローガンだ。
「エクスペリメンタル・クラシックバンド」という名刺を脱ぎ捨てた彼らの言う「アンサンブル」とは、全く異なる個性を均一化することなく、同時に存在させる奇跡的な調和のことであり、それは8月12日に届けられた2nd EP『C.E.F.T pt.1』にも通ずるものだった。
もう一度言う。Khamai Leonは革新の時期にある。その背景と変化を4人に訊いた。

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「これくらいじゃ、バンドは崩れないな」という信頼が確固たるものに変わった(尾崎)

─8月12日に2nd EP『C.E.F.T pt.1』がリリースされました。バンドの新たなコンセプトである「Contemporary Ensemble from Tokyo」を掲げた1枚ということで、1st感、言い換えれば初期衝動を宿した作品だと感じています。皆さんは、このEPをどのような1枚になったと捉えていますか。


尾崎勇太(Vo,Flu) :指摘してもらった1stの質感は、僕らとしても意識していたポイントで。『IHATOV』『風の谷』と作品を重ねていくごとに、プリミティブな感情というか、初期衝動的な要素が薄れている感覚を抱いていたんですよね。勢いで突き進めないことに対するコンプレックスがあったし、色んなものを抑制した結果が最近のクリエイションだった。だからこそ、今まで積み上げたものを軸にしながらも、解放していく作品になっていったんです。

─近年の理性的なムードとバンドを始めた当時の感覚を、混ぜ合わせようとしていたと。


尾崎:1st以降、僕は明確にJ-POPを意識するようになったんですよ。バンドを組んだ当時は、バンドミュージックにすら興味がないような状況だったので、「好きにやったらええやん」と思っていた。でも、『hymn』で一定の評価をいただいたことで「売れたい」という気持ちが芽生え、自分たちなりのJ-POPを追求するようになって。ただ、今振り返ってみると、その探求は不十分だったし、どっちつかずだったかもしれないとも感じているんです。

─それはポップスへ振り切る上での迷いがあった、という話?


尾崎:いや、ポップスを意識しすぎるがあまり、作品もクローズドになっていたんですよね。分かりやすく言うと、「こういう曲がヒットしているから、俺らはこんなことをやらないと」みたいな、浅はかな考えに陥ってしまっていたというか。でも、今のリスナーには、多様な表現の中にポップネスを見つける力が備わっているじゃないですか。だったら、根本的に新しいものを作って良いんだ、と思えたんです。びっくりするくらいのポップスをやったって、ゴリゴリの重たい曲をやったって良いし、むしろそういう曲をネイティブに横跳びできるようになるべきだし。僕らはJ-POP的な土壌にも、マニアックなエリアにも存在できるからこそ、もっと色んな可能性を探るべきだなと。誰も聴いたことがないけど、なぜだか面白い。そう思ってもらえるものを目指すようになりました。

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─よく分かりました。米光さんは、このEPをどう見ていますか。


米光椋(Ba):今回は「pt.1」と書いてある通り、続きももちろんあるんですけど......続きがある前提で話して良いよね?

尾崎:大丈夫。「pt.2」の構想も既に始まっていますし、今作はソナタ形式で言うところの提示部なんですよ。これまでコミットしてきた音楽観から少し変わったものを見せる中で、どうやって受け取ってもらえるのかを確かめている。その意味ではある種のベンチマークなんですよね。

米光:そう。尾崎が言ってくれたようなシリーズ的な制作を前提とした時に、「pt.1」として必要なパワーを持った作品にできた気がしているんです。これまでよりも的を絞って、取り組むことができたというか。

─先ほどの尾崎さんのお話然り、「pt.1」というタイトル然り、『C.E.F.T pt.1』は新しいフェーズの1歩目というイメージなんですかね。


尾崎:1歩目です、明らかに。ただ、自分たちとしては、「バンドとしての思想がようやく揃ったな」っていう感覚なんです。やりたい音楽性が揃ったわけじゃなくて、「自分たちはこうあるものなんだ」っていうことを定義できたというか。今回「Contemporary Ensemble from Tokyo」という名称も使ったのも、その一例で。「バンド」じゃなくて「アンサンブル」なんですよね。

─「バンド」という形式に拘りたくない、ということ?


尾崎:フロントマン、リズム隊、みたいな役割を固定したくなかったんです。もちろん、音楽的にそうならざるを得ない部分もあるけれど、マインドとしてはそれじゃ駄目だった。4人それぞれが色んな場所で音楽活動をしていて、多様なジャンルや文化に触れている以上、それらを認め合って、高め合って、1つの作品にしていくべきだと思ったんですよね。今作は、そういうマインドを持って作った1枚目のディスクでもありますし、「これくらいじゃ、バンドは崩れないな」という信頼が確固たるものに変わったという点ではゴールでもあるんです。

─となると、Khamai Leonが「アンサンブル」を掲げるようになったことで、米光さんと赤瀬さんの立ち位置にも変化があったのでしょうか。


米光:グイグイ前に出るようになったわけではないんですけど、「アンサンブル」の方が自分たちに合っている気はしていて。作品を作る上でも、ライブをするにしても、伸び伸びと音を出せるようになりましたね。

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赤瀬楓雅(Dr):基本的な役割が大きく変わったわけではないですが、音楽に対する自分の考え方や思想にバンドの在り方がフィットしたと感じています。というのも、僕はよく「自分のことをドラマーだと思っていない」って言うんですよね。なぜなら、ドラムに限らず、表現したいことが沢山あるから。写真もだし、ゆくゆくは歌も歌ってみたい。そういう欲望があるので「Contemporary Ensemble from Tokyo」という響きはしっくりきていますし、各々の考えを出し合った上でお互いにリスペクトできたことが、Khamai Leonの歴史においても大事だったのかなって。

尾崎:もう1つ付け加えるなら、凄く複雑だったスケジュールの調整がしやすくなりましたね。「バンド」と銘打っていると、誰かが欠けた時にマイナス1として受け取られるけれど、「アンサンブル」ならその日そのメンバーでの演奏をしたら良い。実際、バンドという形態に固執していた時は4人が揃わないお誘いはお断りしていたんですけど、今は積極的に出演できるようになりました。

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「僕が作らなきゃ次の物語は始まらない」という使命感があった(beja)

─凄く面白いです。bejaさんは『C.E.F.T pt.1』を振り返ってみて、いかがですか。


beja(Key,Gt):今の話とも繋がるんですが、「エクスペリメンタル・クラシックバンド」として活動してきた時に比べ、バンドという質感をある種演じる必要がなくなった1枚なのかなって。最初に「1stっぽい」とも言っていただきましたけど、あの時はメタ認知が1つも存在していなかったのが良かったんですよ。

─......「メタ認知」というと?


beja:あえて言うならば、「Khamai Leonはバンドである」という不要な認識が付与されていなかったというか。「4人で集まったら、こういう音楽ができます」くらいの気持ちしかなくて、自分たちがバンドだとも思っていなかった。そんな中で「バンドらしくあるためには」という命題と向き合いながら、『風の谷』まで走ってきたんですよね。もちろん成功した部分もありますけれど、Khamai Leonからしか出てこない熱量があったか、と問われたら即答はできなくて。というのも、特に僕はバンドを沢山聴いてきた分、「もっと捻らないと面白くないぞ」みたいな考えに陥ってしまうこともあったんです。

─どこかで既視感を感じてしまう部分があった。


beja:そう。一方で、捻れば捻るほど、ポップな音楽からは遠ざかっていく。そのバランスを尾崎と僕で取り合っていたんです。そういう状況の中で活動を続けてきたから、2025年の9月にTOKIO TOKYOでワンマンを終えて、尾崎が疲れてしまって。そこで、僕は「自分のターンだな」と強く思ったんです。

─bejaさんがバンドの舵を握るタームに入ったことを感じた、というか?


beja:そうですね。「僕が作らなきゃ次の物語は始まらない」という使命感があったから、デモを一気に投げたんです。実際、「Hallucination」や「minamo」、「欲張りたい」はそこから出来上がった曲で。本来のKhamai Leonが持っていた意識しない気まぐれさ、みたいなものを抽出するために、曲を作っていったというか。そういう意味では「Contemporary Ensemble from Tokyo」というコンセプトありきで出発していったEPだったわけではなくて。バンド史上一番白熱した紆余曲折を経てたどり着いた結晶だし、むしろ新しいコンセプトにたどり着いた原因たちがこの作品なんじゃないかと思っています。

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「真の意味で尾崎勇太とbejaの曲」。紆余曲折の果てでたどり着いた「縁(yosuga)」

─「バンド史上一番白熱した」ということですが、具体的にはどんな議論があったのでしょう。


beja:前提の話になるんですけど、『風の谷』をリリースするまで、僕の中では「尾崎が何を言っても否定しないでいよう」と絶対的に決めていたんですね。なんでかって言うと、尾崎が歌い始めた時に、多くの反対を受けたから。......まぁ、その意見は当たり前で、インストの形で評価されているのに、わざわざ歌を入れる必要性はないじゃないですか。それでも、尾崎はこれまでやったことのない歌に挑戦しようとしていて。そういう状態で尾崎が「やりたい」と言っている以上、否定するわけにはいかないんですよ。ただ、その分僕の「本当はこうしたい」っていうエゴが弱くなっていったのも事実で。ワンマン以降、そのエゴを初めて真剣にぶつけ合うようになっていったんです。

─全てを肯定することを辞めたと。


beja:そう、イエスマンを辞めたんです。そもそも、僕と尾崎が繋がっているのは音楽的趣向ではないので、好きなメロディーやポップス哲学は全然違うんですよね。なので、「もっとこういう歌にした方が良いんじゃないか」「こういうメロディーが良いんじゃないか」みたいに、これまで話せなかったことを沢山話した。それこそ、「腹割り」ってワードが流行るくらい(笑)。もちろんフラストレーションも溜まっていきましたけど、ようやく僕も僕自身と向き合えたし、僕が正義だと思ってたことが正義じゃなくなる瞬間もあって。そうやって新しい方向に向かっていく中で、最後の戦いになったのが「縁(yosuga)」でした。

尾崎:bejaが言ってくれた通り、「縁(yosuga)」はもともとボツにする予定の曲だったんですよ。EPには、bejaが書いた別の曲がリード曲として入る予定だった。でも僕が最後の最後で「やっぱ違うかも」って、「縁(yosuga)」を引っ張り出してきたんですよね。

─なぜ最後の最後で、「縁(yosuga)」を選んだんですか。


beja:最初の「縁(yosuga)」は「本気でポップスを作ろうや」という会話を交わしながら作っていった曲で。尾崎が思うポップスと、僕が思うポップスを擦り合わせていくような作品だったんですね。そんな中で、さっき話したような衝突の結果、「Contemporary Ensemble from Tokyo」というワードが生まれて。そこに合わせる形で考えた新しい曲が、本来はEPに収録される予定だったんです。

尾崎:でも、あえて言うなら、その曲はオルタナティブ過ぎたんですよね。独特だったし、個性的だったけど、僕の中で腑に落ちなかった。

beja:そうやね、「小径」や「森」みたいな質感を持った奇抜な楽曲だった。でも、今振り返ってみると「Contemporary Ensemble from Tokyo」というスローガンを掲げた尾崎に向けた曲じゃなくて、自分を助けるために書いてしまった歌だったんだと思います。尾崎の気持ちを汲み、ぶつかり合っていく中で醸造された黒い気持ちを吐き出すような側面もあった。そんな中で尾崎から『やっぱり、「縁(yosuga)」にしたい』って連絡が来たら、向き合うほかないじゃないですか。

─確かに。


beja:それで「縁(yosuga)」を通じて、尾崎が歌いたい旋律ともう一回向き合っていった。これまでも僕と尾崎で一緒に曲を作ることはあったし、クレジットをKhamai Leonにしていたこともあったんですけど、この曲は真の意味で尾崎勇太とbejaの曲なんですよね。どっちも折れている部分がなかったし、「Contemporary Ensemble from Tokyo」という誰も折れる必要がない環境にたどり着くためにワークしてくれた曲なんです。

─この曲がなかったら、「Contemporary Ensemble from Tokyo」というワードも生まれてないくらいですよね。


beja:この腹割り、議論がなかったら......解散してた可能性もあります。でも、ちゃんと言い合えるメンバーだ、って確認できたんで。だからこそ、怖いものがなくなったんです。

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Khamai Leonというものがこの先恐ろしい存在になっていくことを証明する日『What is Khamai Leon?』

─非常に赤裸々な話をありがとうございます。今日のお話を伺って、ここからは明確に見えてきたKhamai Leonとしての音楽を提示していくステップになるのかなと。その1歩目が9月23日(水・祝)に開催される2ndワンマン『What is Khamai Leon?』ですけれど、どういった1日にしたいですか。


米光:「Contemporary Ensemble from Tokyo」という言葉を掲げた状態で、これまでリリースしてきた曲を披露できることが凄く楽しみで。昔の曲も、今の曲も、全力で出し切りたいと思っています。

赤瀬:本当に「What is Khamai Leon?」を体現できるライブになるというか、ようやく4人それぞれが「Khamai Leonとはなんぞや」という問いに対する立ち位置や在り方を見出した段階だと思うんですよね。で、自分の居場所が分かっている事実だけで、音楽って変わるので。まるっきり更新された4人の気持ちや覚悟を表現できたらなと。

─bejaさんと尾崎さん、どちらが締めますか?


beja:流石に尾崎が最後で(笑)。「What is Khamai Leon?」、言い換えれば「What is Contemporary Ensemble from Tokyo」を意味するライブになるわけですが、僕らは決して奇抜で新しいことをやろうとしているわけじゃなくて。とにかくこのスローガンの肝は、全員が突出していること。どこか凸凹した4人が、色んなものを受け入れて1つになっていく集合体であることなんで。WWWに来てくれた人たちがその一員になってくれたら良いなと思っています。

尾崎:僕はKhamai Leonのことを変化し続ける人間たちだと思っているんですけど、ワンマンはその変化し続ける人間たちが1点に集中する場所なわけで。なおかつ、僕らは受験も含めて、音楽でかまさないといけない場を経験している猛者なんですよ。そういう仕事人たちが集まっている以上、凄まじい爆発力の1日になると確信しています。そして、Khamai Leonというものがこの先恐ろしい存在になっていくことを証明する日でもあると思うので。とにかく「見とけよ」って気持ちでいっぱいです。

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取材・文:横堀つばさ
撮影:赤瀬楓雅 / 尾崎勇太

RELEASE INFORMATION

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Khamai Leon「C.E.F.T pt.1」
2026年8月12日(水)
Format: Digital
Label: Nozokimi

Track:
1.C.E.F.T Theme
2.We can't change the weather
3.Hallucination
4.minamo
5.縁(yosuga)
6.欲張りたい

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LIVE INFORMATION

Khamai Leon 2nd one-man show "What is Khamai Leon?"
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2025年9月23日(水・祝)
会場:渋谷WWW(〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下)
open 17:00 / start 18:00
料金:一般 ¥4,500 +1D / U-22 ¥3,500+1D※要証明書
チケットURL:https://eplus.jp/khamaileon/

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オフィシャルサイト
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