10代から音楽と楽器を抱いて活躍してきた関根史織とマスダミズキが共振する理由とは?対バン企画『stico×miida Vol.3』スペシャル対談
INTERVIEW
2026.01.27
Keishi Tanaka×LOSTAGE五味岳久スペシャル対談──まっすぐ生きてきたバンドマンが「居心地の良い部屋」を築き上げるまでのストーリー

"やりたくなかったらやらない"ってスタンスは、ずっと変わっていない(五味)
─おふたりの出会いって、KeishiくんがRiddim Saunterの頃ですか?
五味:いや、Riddimのときって、喋ってないよなあ?
Keishi:うん。会釈とかぐらい(笑)。
五味:同じイベントに出たりはしてたけど。「RUSH BALL」かなんかで、順番が続いていて、袖かなんかでライブを観たことは覚えていて。ただ、そのときも喋ってはいない。
Keishi:弾き語りの対バンとかをするようになってから(仲良くなった)かなあと思っていて。あとはアチコさん(Ropes)とか、共通の知り合いのミュージシャンがいて、話をするようになって。それも10年以上前の話ですけど。Riddimからってなると......結構、大昔なんですよね。ただ、活動していた時期は一緒だから。『ジャパニーズ・オルタナティヴ・ロック特選ガイド』(2010年上梓)っていう、中込(智子)さんが書いてくれた本のなかで、同じ時代のバンドとしては取り上げられていて。僕らの時代だけ(バンド数が)少なかったんですよ。そこにRiddimとLOSTAGEが入っていて、うれしかったし。意識するようになったのは、そのぐらいからかもしれないです。
五味:確かに。
─オルタナティブ・ロックとしては同じ枠組みですけど、音楽性としてはめちゃめちゃ近しいわけではないから、私も対バンとかの記憶はないんです。でも、さっきKeishiくんが言ったように、アチコさんとか、周りにいる方々は近しかったと思います。
Keishi:そうですね。あ、でも似顔絵が最初かも(※五味はXが旧Twitter時代にバンド仲間や音楽業界関係者の似顔絵アイコンを描いて話題に。2011年にはイラスト集『五味アイコンBOOK #oshare in DICTIONARY』も上梓)。そのときは、まだRiddim Saunterだったんですけど、描いてもらったんですよね。だから、出会ってはいます。
五味:だから、共通の知り合い......っていうか、先輩が多かった。
Keishi:DAWAさん(FLAKE RECORDS)とか。だから「僕も描いてほしいです」ぐらいの会話はあったかもしれない。でも、"僕のこと、どう思ってんのかな"みたいな時期はありました、正直。
五味:ははは。
Keishi:たとえば僕らみたいに、ダンスミュージックを鳴らしてライブをしていたバンドとかって、あんま好きじゃないんじゃないかなって(笑)。
五味:結構そういうこと言われるけどね(笑)。音楽性で人間を見てはいないから。四つ打ちだからダメとか、そういうのはないですよ。
Keishi:五味さんは"喋りかけてくる奴、好きじゃないわ"みたいなのもあるのかなって(笑)。
五味:様子を伺っていたと(笑)。

─じゃあ五味くんから見て、当時のRiddimやKeishiくんの印象って、どんな感じだったんですか?
五味:すごい勢いがある人たちやなっていう。それに共通の先輩の話も聞いていたから、僕が嫌いなタイプの人間ではないことはわかっていました(笑)。
Keishi:よかった(笑)。
五味:ただ、僕は人と仲良くなるのに時間がかかるので。性格的に警戒するっちゅうか。だから、正当な手順を踏んで仲良くなっていった感じはする。年齢も微妙に(違って)。(五味)拓人(LOSTAGEのギタリスト。五味岳久の弟)と同い年やんな?
Keishi:そうです。
五味:だからKeishiくんと僕は3つ違うんです。そういう意味でも気は使っていたというか。めんどくさい先輩とは思われなくないし。
Keishi:(笑)。
五味:かといって世代で言うと同じところにいるので。僕も様子を見ていた感じでした。
─それが、弾き語りとかを一緒にやるようになって、音楽的にも人間的にも距離が縮まっていった感じなんでしょうか。
五味:そうですね。
Keishi:いろんなとこでも言ってる話なんですけど、奈良で五味さんとツーマンで弾き語りをしたときに、本番前に「ちょっと散歩行きません?」って誘ったんですよ。で、30分ぐらい歩いて。そのときのライブのMCで五味さんが「そんな(散歩に誘ってくる)奴、初めてだったわ」みたいな話をしていて。
五味:(笑)。そんな言い方はしてはない!もっと柔らかかった。
Keishi:それがよかったんだよね、って言ってくれて。
五味:街ブラしたんですよ。酒飲むわけでもなく。
Keishi:相談があったわけでもなく。でも、僕にとっては自然なことというか、よくやることで。五味さんにも、その印象が残ってくれたんだって、MCを聞いて思いました。狙ったわけではないんですけど。そのあたりから様子見タイムが終わっていく、みたいな。

─でも、そこから楽曲提供するまでには、さらに踏み込んだ関係性になっていった年月を感じるんですが。Keishiくんには、どんな思惑や心情があったんでしょうか。
Keishi:その散歩の日から話すようになった期間が10年ぐらいあって。コロナ禍に、五味さんの代打(出演)をする日があったんです。
五味:(新代田)フィーバーやな。
Keishi:そうです。2日前ぐらいに連絡が来て、スケジュールも空いていたし「やります」ってなって。せっかくだからLOSTAGEのカバーをやろうと思って「ポケットの中で」を歌ったんです。盛大に失敗したんですけど(苦笑)。〈ポケットの中で〉っていう、いちばん大事なフレーズがうまく歌えなくって。失敗したからこそ、もうちょっと歌いたいって思って、何回か続けていたら、しっくりくるようになって。自分だけじゃなく、周りのミュージシャンやお客さんのリアクションからもいい感触があって。LOSTAGEの曲って独特な歌い回しとかあるから、(五味さん以外の)他の人が歌ってどうなるんだって感じもありますけど。これはもしかして、自分にとっていいのかもって思えて。それから2024年に一緒に九州ツアーを、まとめて4本まわったときに、いつか(楽曲提供を)お願いできたらいいなって、お酒を飲みながらとか話した感じです。正式なオファーは、もっと後ですけど。
─KeishiくんのLOSTAGEのカバーは音源にもなっていますが(『UNPLUGGED Ⅱ』)、五味くんはどう思ったんですか?
五味:いい曲やなって言ったら変ですけど(笑)。自分じゃない人に歌われると、客観的に聴けるじゃないですか。それで改めて、こういう曲やったんやって。Keishiくんやからできること/僕やからできることとか、比べることで見えてきたりするから。それで、Keishiくんがどういう歌い手で、僕がどういう歌い手かも考えながら聴いていました。
─では楽曲提供の依頼が来たときには、どう思いましたか?
五味:僕はやってみたいと思いました。こういうこと(楽曲提供)をやったことがなかったので。でも、バンドのことは僕ひとりで決められないじゃないですか。今までも何度か楽曲提供の依頼はあったんです。アイドルグループとか、バンド寄りじゃないところから。でも全部断っていたんです。メンバーと相談して、そういうの俺らは向いていないって。だから今回も、断らなあかんかもしれないって思ったんですけど、メンバーも「やりたい」って。
Keishi:めちゃめちゃうれしいじゃないですか、それ。
五味:俺よりも、あとのふたり(五味拓人、岩城智和・Dr)のほうが保守的というか。"バンドってこうやろ"っていうのが固まってるから。それは、良くも悪くもだけれど。無理にやるもんでもないと思うし。"やりたくなかったらやらない"ってスタンスは、ずっと変わっていないので。みんながやる気出したらやれるな、って思っていたんですよね。今回は、もともとみんな、Keishiくんのことを知っていたから。
─しかも今回、楽曲提供だけではなく、編曲やレコーディングの演奏もLOSTAGEとがっぷりやったんですよね。
Keishi:オファーの段階でも......もちろんバンドで動くとなると、大きなことだから。しかも映画の時期と被っているから、タイミング的にできない可能性もあって。だから、五味さんから弾き語りで音源をもらって、僕のほうでアレンジをして、いつものバンドメンバーでレコーディングするっていうプランもありつつ。でも、もし(編曲や演奏も)LOSTAGEでやってもらえたらうれしいですってオファーしたんですけど。そのマックスをやってもらえた感じですね。想定していたいろんなパターンのすべてをやってもらえたので、うれしかったです。
─五味くん、LOSTAGE側としては、やるならとことん一緒にやるっていうのが総意だったというか?
五味:そうですね。中途半端なものを作っても意味がないから、マックスやる(笑)。いちばんこうしてほしいって言われているなら、やりますよっていう。まあね、時間に追われるとか、どう考えても無理なら相談したかもしれないですけど、なんとかいけそうな算段もあったし、単純にそれでやりたかった。だからメンバーに相談したんで。僕ひとりでやるより、そっちの方が面白いでしょ。

九州ツアーを一緒にまわっていなかったら、こういう歌詞にはなっていないのかな(Keishi)
─歌詞や曲は、どう作っていったんですか? LOSTAGEがガッチリ固めたものをKeishiくんに投げたのか、それとも両者ですり合わせる過程もあったのか。
Keishi:ほぼほぼできあがった状態で聴きましたね。
五味:やったことないことだったので、すり合わせるやり方も普段からやっていないので、いつもの僕らのやり方でやらせてもらって、それをKeishiくんの曲に仕上げてもらうっていう。一回カバーもやってもらってるから、"これぐらいの感じやったら、こういうふうに歌うかな"っていうのは頭のなかにあって、それを目指して曲を作って。あとは申し訳ないけどなんとかして!って感じでした(笑)。ちょっとだけ歌メロとかコーラスとかに、Keishiくんの手間も入っているんですが。
Keishi:バンドでやってくれるってなったときに、僕は任せたかったんですよ。LOSTAGEにもいろんな楽曲がありますけど、どんな感じの曲が来ても受け止めるって思っていたので。
五味:ほんまに?(笑)。断らないつもりでおったの?
Keishi:もちろんもちろん。最初は歌詞のない、五味さんのホニャララ語みたいな感じで歌ってる曲を聴いたときも「これでいきましょう」ってなりましたけど、歌詞があがったときに、かなり興奮したというか、震えたというか。「この歌、歌いたいな」って。
五味:ああ、よかった。
Keishi:(原曲が更新されて)送られてくるたびに、レコーディングが楽しみになりました。
五味:結構、時間がかかったんです。「この曲、どうなんやろ」っていう時期もあって。
Keishi:ツアーとかリリース日とかが決まっていくなかで......。
五味:進捗を確認されつつ。曲のBPMしか決まってないみたいなこともあって(笑)。
Keishi:できあがったから言えるんですけど、「無理かもな」って思った瞬間もあった(笑)。
五味:俺も連絡をもらうたびに「『無理かもな』って思われてるな」って(笑)。
Keishi:最後にグググっと進んだんですよね。裏話ですけど、レコーディングの数日があって。ベーシックを録る日ぐらいに、歌詞の最終版をもらったみたいな感じだったんです。でも僕が1日とかで自分の歌として歌いきれる自信がなくて。
五味:そりゃそうや。
Keishi:五味さんの歌を1日で、自分の体のなかに入れるというか......入れるだけでもダメだと思うし、そこから自分の歌にするのに、ちょっと時間が欲しいなって思って、(ボーカルの)レコーディング予定日を延ばしたんですよね。それでも、リリース日は遅れないことはわかっていたので、もうちょっとしてから録りますっていう調整はありました。
五味:ご迷惑をおかけしました(笑)。
Keishi:いやいやいや。リリース日が遅れなければ問題ないです(笑)。

─遅れた理由として五味くんは、曲や歌詞を書くのに悩んだんですか? それとも単純に忙しかった? また両方だったのか。
五味:どっちもあるんですけど。曲の展開とか構成やメロディは早い段階で固まったんですけど、歌詞がね。Keishiくんに歌わす歌詞なので、ワンクッションあるっていうか。俺が歌うわけではないから、Keishiくんが歌ったときに、変に聴こえる可能性がある。"Keishiくんはこんなこと言わないだろう"とかあると思うので、音楽というよりは、言葉の使い方や意味を考えていたら"これでいいんかな"ってなって。仕上がるのに時間がかかりましたね。
─曲に関しては、五味くんのソングライティングのなかでも、アコースティック寄りのサウンドで、BPMゆっくりめで。この方向性は、すんなり早く定まったんですか?
五味:うん。僕らアコースティックアルバムをコロナ禍にリリースしていて(『HARVEST』)。ツアーに行けないので、配信で出したんです。そのときKeishiくんがいち早く聴いてくれて、僕の第一声に「痺れた」みたいに言ってくれたのを覚えていたので。(楽曲提供を)頼まれた時から、"あのアルバムの感じをやってほしい"っていうのがあった。
─これまでのやり取りのなかにヒントがあったんですね。そういう過程を考えると、歌詞も曲も、知らない人に楽曲提供するのとは訳が違ったっていうか。
五味:そうですね。じゃないと引き受けないと思う。僕らは、知らない人に曲を書くのは無理じゃないかな。信用できないので(笑)。
Keishi:僕も、歌詞はお願いできないかもしれない。歌詞を他の人に頼むっていうのはふたりめで。もうひとりは村松拓(Nothing's Carved In Stone、ABSTRACT MASH。「青のサーカス」を共作)。五味さんを信用しているから、何が来ても歌おうと思っていたし。さっき言った九州ツアーを一緒にまわっていなかったら、こういう歌詞にはなっていないのかなとか。そういうことも説明を受けずにわかったし。お互いを知っていないと、こうはならないと思う。それがうれしかったし、僕のことをイメージしているのがわかったし。
五味:曲を書いたというか、手紙を書いてみた感覚に近いかな。
─レコーディングはどこでやったんですか?
五味:静岡の藤枝。ゴッチ(後藤正文。ASIAN KUNG-FU GENERATION)が作ったスタジオのMusic inn Fujiedaです。
Keishi:僕、奈良で録ると思っていたので。ゴッチさんのスタジオで録るって言われて、気にはなっていたんで、うれしかったです。
五味:ゴッチも「使ってよ」って言ってくれて。
2026年第1弾シングル、リリース決定!
— Keishi Tanaka (@KeishiTanaka) December 18, 2025
LOSTAGEの五味さんに楽曲提供を依頼し、LOSTAGEと共に編曲、レコーディングをした楽曲『居心地のいい部屋』を、1月21日にデジタルリリースします。
Keishi Tanaka meets LOSTAGE
『居心地のいい部屋』
2026.1.21 Release
Format : Digital
Label : FRIENDSHIP. pic.twitter.com/iYuRN0JkO4
─そこでもミュージシャン同士の繋がりが見えていいですね。SNSで公開されているショート動画のレコーディング風景も、Music inn Fujiedaのものですか?
五味:そうです。
─レコーディングは、五味くんが先導したのか、コミュニケーションをとりながらだったのか、どんな感じだったんでしょう?
Keishi:LOSTAGEのレコーディングに僕がいる感じでした。曲のいちばんいい状態を知っているのはLOSTAGEの3人なので(お任せして)。僕が言ったのは「BPMを1上げますか」とかそういうことだけ。
五味:ちょっと元気になったほうがいいな、って。
Keishi:1上げたらやりやすくなるかなって。客観的な目線だとわかるようなところですよね。あとの演奏面や音は、僕が何か言うと僕のサウンドに寄っちゃうので、それをやると今回の意味が薄まると思いますし、なるべく何も言わないようにしようと思っていました。
五味:こっちは逆に不安になってきて。"これでいいんかな?"って(笑)。
Keishi:「Keishiくんがいいほうで」みたいな質問もされたんですけど「(決めてもらって)いいっす」みたいな(笑)。
─歌に関しては、五味くんからKeishiくんに何か言ったりしましたか?
五味:それも、ほとんどなかったね。さっきKeishiくんが言っていたように、自分のなかに一回入れて、いいテイクを聴かせてくれたので、言うことはなかった。あとコーラスはKeishiくんに丸投げしたんですけど、そのアレンジは参考になりました。僕が考えつかないメロディの当て方や抜き差しを、人がやっているのを見て勉強になりました。それに対して僕も「これ足す?」みたいなやり取りはありましたね。
今のモードが、"居場所"が音楽やライブに集まる人のなかにあるイメージだった(五味)

─歌詞に関して、もうちょっと突っ込んで聞きたいんですが。「居心地の良い部屋」っていう言葉は、Keishiくんを思い浮かべたときに、五味くんのなかから出てきたんですか?
五味:そうですね。あんまり解説しすぎたら、ネタバレみたいでおもんないんですけど。『ROOMS』っていう、Keishiくんがやっているイベントがあって。それに僕が呼んでもらう機会もあって、そこから(タイトルが)きているんですけど。僕らの映画のテーマにもなっているんですけど"居場所"が音楽やライブに集まる人のなかにあるイメージが浮かんだんです、今の自分のモードで。それを歌詞に落とし込んだというか。Keishiくんと一緒にいた時間とか、空間とかを思い起こさせるような歌詞が書けたらいいなって、漠然と思っていました。
―五味くんが言っていたように、映画のMINORxU監督のコメントにも「幸福とは居場所があること」とあって。今、LOSTAGE、五味くんが考えていることと、この「居心地の良い部屋」がリンクしているんだろうなって感じていたんです。Keishiくんは「居心地の良い部屋」という言葉を、どう受け止めたのか、そしてKeishiくんにとって「居心地の良い部屋」とはどういうものなのかを、伺いたいと思ったんですけど。
Keishi:今、居場所の話をしていましたけど。2019年に自分が「ONE LOVE」っていう曲を出したときに、考えていたことがあって。僕はそれまで、自分で自分の居場所を作るみたいな感覚が大事だなって思っていたんです。たとえばライブを自分で企画して、自分の居場所を作るとか。でもツアー中に、"これって結局居場所を作ってもらってるんだよな"って感じて。自分で作るのも大事だけど、作ってもらった居場所に自分が入ることの幸せもあるし、それを「ONE LOVE」って歌にしたんです。ちょっと話が前後しますけど、LOSTAGEの映画で、居場所の話とかをしているのにも共感したというか。同じようなことって僕が言っていいのかわからないですけど、居場所を自分が作ってるつもりでも、誰かが作ってくれていたりもするし。『ROOMS』も、僕にとってはもちろん、お客さんにとっても居場所になったらいなと思うし、五味さんにとっても「居心地の良い部屋」であってほしいとか、そういうことを思っていました。お客さんを見て書いてくれたのかもしれないし、本当のところは聞いてないのでわからないですが、そのなかに五味さんが入ってくれているような気がしたので。それがうれしかったです。
─シンクロする想いがあったんですね。
Keishi:"誰かに作ってもらう居場所って必要だよな"っていうのが、2019年以降のテーマみたいになってて。あんまり自分だけでがんばってもどうにもならないことというか、居心地をよくしようと思っても苦しくなってくこともあるじゃないですか。そういうところで、この曲に救われる人がいるんじゃないかなって想像できる歌詞だなあと思います。

─この歌詞を生み出した五味くんにとっては、「居心地の良い部屋」ってどんなものなのでしょうか。
五味:結局、どこにあるかとか、どういう場所かとかじゃなく、どういう人が一緒にいて、その人が何を考えててとか、それを自分がどう思うかとか、距離とか温度みたいなものですよね、居心地って。だから部屋じゃなくても、野外でもいいんですよ。そういうものの良し悪しだと思います。究極"誰といるか"っていうところに落ち着くんだと。Keishiくん(の歌)だから、こういうことになったんだと思いますけどね。
─おふたりとも年齢や経験を重ねて、充実した「居心地の良い部屋」を作り上げた今、〈覚えておいてくれ〉〈忘れないでいてくれ〉って願うシーンって、いつを指すんでしょうか?
五味:活動が長くなっていくと、1回のライブとか、作った1曲とかの比重って、どんどん少なくなってくるので。慣れというか、そういうのが当たり前になっていく。ただ、そもそも音楽ってなんやったっけ?って考えたとき、薄まっていく気持ちに立ち返りながらやるっていうことは、僕らみたいに自分で作って自分で歌う人たちは大事やと思う。そういう意味で覚えておくとか忘れないとかっていう気持ちは、意識しないとなくなっていくんで、普段から手繰り寄せているような感覚はあります。
─今のお話を聞いて、Keishiくんはどう思いますか?
Keishi:なるほどなと思いましたし、お客さんの生活のなかで〈覚えておいてくれ〉〈忘れないでいてくれ〉がどう響くかも興味深くて。〈あなたとわたしのあわいで/覚えておいてくれ〉ってパンチラインというか。それぞれに思い浮かぶ関係性のなかで、過去のことを願う人もいるし、今のことを願う人もいると思う。五味さんが「手紙を書くように」って言っていましたけど、一対一の話に聴こえて。僕と五味さんもそうだし、僕とお客さんもそうだし、そこに想いを馳せられる歌詞だなって。
─いちリスナーとしての感覚で語ると、さっき五味くんが言っていた、一つひとつの思い出の比重が少なくなってくるっていう話はすごく頷けるんです。40代ともなると切なさや怖さもあって。そんなことを考える日々に、この歌詞は響きますね。
五味:Keishiくんが40代半ばから後半にかけて歌っていくうちに、この曲も育っていくんじゃない?
Keishi:歌い続けたいと思える曲ですよね。そういう曲をいただけたことはすごくうれしいし、大切にしようと思います。
五味:俺も歌っていこうかな、自分の現場で。もうちょっと落ち着いたら。曲を育てるっていう意味でもいいと思うし。
Keishi:聴きたいですね。僕はデモでは聴いているけど、お客さんも聴きたいだろうし。"五味さんが歌うほうがいい"ってなったらあれですけど(笑)。
五味:(笑)。これ、最近ライブでやった?
Keishi:やってます。
五味:それを観たお客さんが俺に「すごいよかったです」って感想を話してくれて。
Keishi:この共作のニュースが出る前に、(何の情報も話さずに)「新曲やります」って演奏したことがあったんですけど。勘の鋭いひとりだけ「もしかして(五味さんの提供曲)?」ってわかっていましたね。聴けば確かに"五味さんのメロディだ"って思うんだろうなって。
五味:自分ではわからんのよね、それ。
Keishi:最初に歌ったとき、これは(自分のなかに)入れないとカバーになっちゃうなって思いました。"Keishi Tanakaのリリース"として成り立たないなって。それは、五味さんが弾き語りとかで歌いはじめると伝わるんじゃないかな。
五味:クセ強めに歌っとくわ(笑)。

制作もライブも、この年齢になってより自由にやれていることがうれしい(Keishi)
─最後に、まったく別のベクトルではありますが、Keishiくんも五味くんも過去を振り返るタイミングを迎えているということで、それぞれの活動についても伺えればと思います。まず五味くんは、LOSTAGEが映画になった状況を、どう思っていますか?
五味:観た人のリアクションも届いているんですけど、いまいち実感がないっていうか。映画になったこと自体は、そこまで大したことない――って言ったらあれですけど。たまたま25年もバンドをやると映画になるのかって。塵も積もれば、じゃないですけど。好きでやってたことが、第三者の視点で区切られて、それがみんなのところに届いているっていう。
─スクリーンでLOSTAGEを観て"こういうバンドだな"って客観視できました?
五味:恥ずかしいっすよね。でも、なんとなく自分が思っていた"こういうふうに見られてんのかな"っていうところから大きく外れてはいなかった。ただ、映っていないものもあるじゃないですか。そこまで届けようと思っていないし。25年がちょうどいいところでまとまっている感じはしました。
─Keishiくんもご覧になったんですよね。
Keishi:はい。でっかい事件が起きるようなドキュメント映画も面白いんですけど、これは暮らしを映画にしたような、初めて観るような感じでした。LOSTAGEがそういう道を選んできたからだと思うし。もちろん大変なことはあったんでしょうけど、基本的には暮らしが2時間とかの映画になるって面白くって。でも、普通のバンドだったら面白くならないと思うんです。
五味:いや、25年やったら、(映画に)なんのよ。
Keishi:いやあ、どうだろう。もちろん映画を作りたくてバンドやってる人は少ないと思うけど、LOSTAGEは暮らしていたら映画になっただけの話っていう。それを客観的に見て面白いというのがやはり稀有なバンドだなと。めっちゃ酔っ払いました(笑)。
五味:いいじゃないですか、"酒が進む映画"。
Keishi:「五味さーん!」って飲みながら話しかけたくなる(笑)。もちろん音楽をやっている人間として重ねられる気持ちもあるし、素晴らしい映画でした。
五味:ありがとうございます。
─一方、Keishiくんは1年間限定でRiddim Saunterを再始動していて。2025年11月の復活一発目ライブ「尽未来祭」のステージも観ましたが、胸いっぱいになりました。
Keishi:僕も、よかった感覚があります。そう自分たちが思えないとヤバいなって思っていたから。"やんなきゃよかった"がいちばん最悪なので。
─確かに。これは、解散したときの延長線上の感覚なんですか? それとも、再びはじまった感覚なんですか?
Keishi:結構、区切ってやっているかもしれないですね。"前こうだったからこうしよう"みたいなことは、あんまりなくって。1年だけっていうのもあるんですけど。
─1年間っていうのも、最初から決まっていたんですか?
Keishi:1年っていうのは後で決めたんですけど。"さすがにライブ1本やって終わりはないよね、長くて1年かな"って感じで。「1年しかやらないの?」って言われますけど、僕としては長くしたんですよ。"(解散したので)もうやるわけないじゃん"と思って14年を過ごしていたんです。それぐらいの覚悟で解散したんで。休止ではないし。いろんなきっかけがあってやることにしたんですけど、事実として解散はしてるんです。そういう意味では、期間限定で今やるっていうだけで。前と同じことをやろうとも思っていなくって。どちらかというと、解散から14年、それぞれが活動したことを持ってやる、その形がRiddim Saunterっていうだけで、ソロの延長でもある。言い方が難しいんですけど、Riddim Saunterから変化したくてソロになって、今はその逆が起きているっていう。
─なるほど。
Keishi:それに、復活を望む人の声を断り続けることにも飽きてきたというか、逆に"苦しいことから逃げてるんじゃないか?"って思っちゃって。めちゃめちゃ大変じゃないですか、止まったものを再び動かすことって。"大変だからやってないんじゃないか?"って。だから大変なことをやったら、また面白いことがあるかなって。未来のためにやっているっていうか。もちろん懐かしんでもらってもいいですけど、それだけだど"やってよかった"とはならないですね。だから今年1年やって、そこで得たものを持って、それぞれの活動に戻っていくっていうのをやりたかった。

─傍らで見ていて、五味くんはどう思っていますか?
五味:いや、(復活することを)全然教えてくれていなかったんですよ! 楽曲提供の話とか、頻繁にやり取りしていたのに、急に"復活"って発表されていて(笑)。(ソロとバンドを)同時進行でやるんか!?っていう。でも、僕、どっちかっていうと解散とかから復活するのは否定派というか。"それってかっこいいんか?"って思っていたんですけど。でも、コロナ禍以降に考え方が変わって。いつできなくなるかわからないようなものを、みんな続けているわけじゃないですか。奇跡を紡いで。運よく自分はずっとやれていたけど、そうじゃなくなったとき、止まってしまったバンドを"もう一回動かそう"っていうってなる気持ちってすごいなって。それって、誰かに否定されるような気持ちではないし。仮にそれがお金のためとかであったとしても、ですよ。"もう一回動かそう"っていう気持ちって、悪くないよな人間としてって。だから(Riddimも)楽しみやなって素直に思いました。
Keishi:全部が繋がっていると思います。だから(ソロとバンドを)並行していくことをは悩まなかったし。うれしかったのは、Riddim Saunterの復活を喜んでくれている人たちのなかに、「Keishi Tanaka(の活動も)やめないでくださいね」って言ってくれる人もいて。そういう人がいることが、僕のなかでは重要だった。
─LOSTAGEはいろんなことがあっても、踏ん張って続けてきて......。
五味:踏ん張ってないよ(笑)。
─いろいろはあったでしょ(笑)。
五味:たまたまよ、たまたま。映画のなかでも言ったけど、続けるためにやってるわけではないから。ラッキーなだけです。
─でも、続くバンドもいれば、また活動するバンドもいて。バンド好きとして勝手なことを言うと、活動が止まったバンド、解散したバンドも、気持ちや状況が整ったら、もっと自由に再開していいんだよって思います。いろんなものに縛られないで、純粋にいい演奏、いい楽曲を私たちに届けてほしいなって。そしてリスナーも、幾つになっても自由に音楽を享受できる環境が整っていけばいいなって、改めて両者の動きや今回の共演から思いました。
五味:ライブもやりますしね。
─2月1日は奈良ネバーランド、2月13日には新代田フィーバーで、Keishi TanakaとLOSTAGEの対バンライブがありますね。
五味:まだ一緒に演奏したことはないのよ。レコーディングしただけで。(ライブで)できんのか!?っていう(笑)。今後、どういう形態で演奏されていくのかわかんないですけど、僕らとKeishiくんが一緒に演奏するのは、今んところそこ(のライブ)だけの予定です。
Keishi:LOSTAGEと対バンしないライブでも、バンドセットで演奏しようとは思ってますけど、ぜひLOSTAGEが一緒にやってくれる貴重なこの日を観ておいてほしいです。
五味:こないだKeishiくんとも話したんですけど、ストリングスが入った大所帯の編成でも演奏してほしいなって。この曲がこっからはじまって、どっかで向かっていく。誰かの手が入って、思ってもいなかったものになっていく。そういう楽しみがありますね。
Keishi:10人編成もいけるし、ひとりでも、3人でもいける。とても素晴らしい曲です。
五味:ハードル上げすぎやねん(笑)。
Keishi:(笑)。さっき高橋さんが「やる側も聴く側も自由に音楽を楽しんでほしい」って言っていましたけど、今回はそのひとつというか。制作もライブも、この年齢になってより自由にやれていることがうれしいので。ぜひ、今しかない時間や空間を共有しに来てほしいです。

取材・文:高橋美穂
撮影:山川哲矢
RELEASE INFORMATION

Keishi Tanaka, LOSTAGE「居心地のいい部屋」
2025年1月21日(水)
Format:Digital
Label:FRIENDSHIP.
Track:
1. 居心地のいい部屋
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RELEASE INFORMATION

Keishi Tanaka Release Party in Nara
2026年2月1日(日)奈良 NEVER LAND
OPEN 17:30 / START 18:00
出演:Keishi Tanaka(Band Set)/ LOSTAGE
料金:ADV ¥4,800 (+1drink) / DOOR ¥5,300 (+1drink)
チケット一般発売中
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/keishitanaka/
イープラス https://eplus.jp/keishitanaka/
ローソンチケット https://l-tike.com/keishitanaka/
info:GREENS 06-6882-1224(平日12:00~18:00) https://www.greens-corp.co.jp/
Keishi Tanaka Release Party in Tokyo
2026年2月13日(金)東京 新代田 FEVER
OPEN 19:00 / START 19:30
出演:Keishi Tanaka(Band Set)/ LOSTAGE
料金:ADV ¥4,800 (+1drink) / DOOR ¥5,300 (+1drink)
チケット一般発売中
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/keishitanaka/
イープラス https://eplus.jp/keishitanaka/
ローソンチケット https://l-tike.com/keishitanaka/
info:SMASH 03-3444-6751 https://smash-jpn.com/
LOSTAGE INFOMATION
映画『A DOCUMENTARY FILM OF LOSTAGE -ひかりのまち
LINK
オフィシャルサイト@KeishiTanaka
@keishitanaka
@KeishiTanaka_official
@keishitanaka.official
@keishitanaka
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