SENSA

2024.12.04

「何かを変えないといけない」バンドの危機感から生まれた渾身の2nd EP『1ther』──岐路を迎えたTattletaleのこれまでと拓かれた未来

「何かを変えないといけない」バンドの危機感から生まれた渾身の2nd EP『1ther』──岐路を迎えたTattletaleのこれまでと拓かれた未来

山積みになったタスクを横目に、ダラダラと過ごしてしまった休日。どうしようもない情けなさと焦りが、ブルーライトを浴びすぎて鈍くなった頭を駆け巡る。
北海道札幌に根を下ろす3人組・Tattletaleが12月4日(水)にリリースする2nd EP『1ther』(エーテル)は、そんな焦燥感を振り切り、今この瞬間に変化を遂げることを決意したからこそ産み落とされた1枚だ。自分たちの現在地を見つめ直し、先に巣立っていった盟友たちを追い越そうとする本作には、歌うことへの純真な喜びが凝固した「Flameseed」をはじめ、鬱屈とした激情を叫ぶ前作『0state』より遥かに視野の広くなった全7曲が収められている。本作でターニングポイントを迎えたTattletaleの今に迫る、バンド初のインタビュー。


生で見て衝撃を与えられるバンドになりたい(川上)
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─インタビューは今回が初ということで、まずは結成の経緯から伺わせてください。2020年10月にカタカナ表記のタートルテイルを結成されたとのことですが、どのような流れでTattletaleが誕生したのでしょうか。


川上龍太郎(Gt,Vo):大学進学を機に地元の釧路を離れ、札幌に住むことになって。どうしてもバンドがやりたかったのでスタジオで声をかけたり、セッションをしながらメンバーを探していたんですね。そしたら、歩夢(高橋)を紹介してもらうことができて。その後、勇哉(竹前)と知り合い、結成に至りました。

─竹前さん、髙橋さんがバンド加入を決めた理由は何だったんですか?


竹前勇哉(Dr):結成前に龍太朗(川上)、歩夢、それぞれとスタジオに入ったんですが、歩夢はセッションを始めた瞬間から噛み合う感覚があったんです。一方、龍太朗とのセッションは印象的で。ギターも弾かずに、いきなりエフェクターでハウリングさせながらシャウトし始めたんですよ。その様子が強烈で興味を持ちましたね。

髙橋歩夢(Ba):俺も龍太朗との最初のセッションがキッカケだったかな。轟音の中でポップなメロディーを作り上げている姿を見てこういう人間にはなれないと思ったし、悔しかった。だから、もう呼ばれることもないと感じていたんですよね。でも、次の日にお誘いの連絡がきたので、「加入していいんですか?」みたいな。

川上:歩夢以外のベーシストの方ともセッションをしたんですけど、歩夢が一番パッションでベースを弾いている気がしたんです。当時は技術的に特段上手いわけでもなかったんですが、5年10年とバンドをやっていく上で、この人にベースを弾いてもらえたら面白いんじゃないかなと。

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─川上さんとしては先々を見据えたメンバー募集だったんですね。お話いただいた経緯を経て、2021年3月に皆さんの本格的な活動がスタートします。活動を始めるにあたり、Tattletaleの未来図に関してどのような青写真を描いていたのかを教えてください。


川上:そもそも自分の聴いてきた音楽として、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやNUMBER GIRL、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、Pay money To my Painが存在していて。そういった音楽に触れてきて、札幌に来て161倉庫で初めて観たCARTHIEFSCHOOL(北海道札幌を拠点に活動する3ピースバンド)が衝撃的な出会いだったんですよね。札幌でせっかくバンドをやるのであれば、今まで聴いてきたものと札幌で体感してショックを受けた音楽を融合したいと考えていました。

髙橋:全員がCARTHIEFSCHOOLに憧れていたから、札幌のシーンに根付こうとしていたよね。

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─札幌のシーンというワードも出ましたが、札幌や北海道の音楽シーンは現在非常に注目されている印象があるんです。そういった中で、札幌のシーンにどのように位置付こうと考えていらっしゃいますか。


髙橋:おっしゃっていただいた通り、札幌のシーンは注目度も高くて、世の中に見つかるバンドも増えたと感じているんですよ。ただ、その分閉鎖的になったり、衰退してきている気もしていて。無限にバンドがいる中の、ごく一部が注目されている感覚なんです。

─個々のバンドへの注目は集まっているものの、横の繋がりが薄れていると。


髙橋:そうですね。

川上:僕としては、札幌のライブシーンはジャンルがバラバラなのが特徴的だと思っていて。全然違う音楽性のバンドが1つのイベントに集まって、誰がライブで一番かませたのかを競い合っている。そういう競争の中で育ってきたので、ライブバンドでありたいんですよね。良い音源を作ることにスポットを当てるのか、良いライブをすることに焦点を当てるのかでライブの見え方は変わってくると思うから、僕らは生で見て衝撃を与えられるバンドになりたいなって。

音楽はどれだけ難しいフレーズを弾けるかというスポーツではなく、伝えたいことを伴った芸術であるべき(川上)

─川上さんご自身がCARTHIEFSCHOOLのライブから影響を受けた点も、ライブへの欲求に繋がっていると感じました。川上さんはnoteに文章を投稿されていますが、その中で音楽以上に人の心を動かす存在として言葉を挙げられているじゃないですか。でも、実際には音楽活動を選択している。言葉の重要性を実感した上で、それでも音楽を選んだ理由はなんだったのでしょう。


川上:僕が音楽を始めたのは、中学校3年生の終わりのころで。部活を引退して時間があったから、何となく格好良いと思っていたギターを弾き始めたのがキッカケだったんです。だから、自分の伝えたいことが先に存在していて、それを伝えるための手段として音楽を選んだわけではなくって。でも、色々な人の意見を聞きながら音楽を続けていく中で、少しづつ自分の伝えたいことが生まれてきた。今はその言いたいことを歌に乗せている感覚です。

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─伝えたいことは最終的に歌詞や言葉に還元されると思うのですが、言葉の存在をどのように捉えていらっしゃいますか。


川上:4小節の音楽と4小節の言葉をぶつけることを比べたら、絶対に4小節の言葉の方が伝わりやすいと思うんです。だからこそ、MCにしても文章にしても言葉の選び方には気を付けたいなと。

─少しずつ伝えたいことが生まれてきたというお話もありましたが、言語化したい思いはどういったキッカケで生じるんですか?


川上:音楽はどれだけ難しいフレーズを弾けるかというスポーツではなく、伝えたいことを伴った芸術であるべきだと思っていて。そういった思いで歌に意味を付けることを意識し始めましたけど、筆を取るキッカケは日常の中で一喜一憂したことなんですよね。例えば、戦争が始まったことやアルバイトでお客さんに文句を言われたこと、周囲の結婚のニュースや友達のバンドが売れたことだったりもする。だから、大きな構想があるというよりも、生活において心を動かされたことが主題になっています。

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焦燥感をバネに。羽化したTatteletaleが世へ放つ2nd EP『1ther』

─12月4日(水)に2nd EP『1ther』(エーテル)がリリースされます。ライナーノーツに「2023年の10月くらいに、俺らこのままじゃやばくね?ってメンバー3人が同じ方向を向いた時期がありました。」と記載されている通り、本作は今お話いただいた周囲の結婚や音楽活動の進展に伴う焦燥感から生まれた1枚だと思います。バンドに危機感が芽生えたキッカケは何だったのでしょうか。


川上:このままダラダラ10年、20年とバンドを続けていても、うだつが上がらないままだと考えていましたし、メンバーの結婚や就職で解散することを想像したら悔しくて。周囲が大学を卒業して就職したり、バンドを解散したりしている中で、「今やらないと終わる」と思ったんですね。「27歳で死ぬ」みたいな定説の前に、何かを変えないといけないなと。

髙橋:一緒にやってきた明るい赤ちゃんが、サーキットフェスをはじめ、大きなイベントにバンバン出演し始めたことが大きかったです。僕らがバンドを始めた頃はコロナの影響もあって、精力的に活動しているバンドも少なかったんですよ。そんな中、俺らと明るい赤ちゃん、Arata、hometown fairgroundは、世に出ることも深く考えず各々活動していて。仲間だった明るい赤ちゃんがトップに躍り出た一方で、俺らは「分かる奴が分かればいい」「俺らが伝えることはしなくていい」とアンダーグラウンドな思考に傾倒してしまっていた。その差を目の当たりにして「これじゃまずいんじゃないか」と感じたんです。

─変化していく周囲から置いていかれる感覚が強かった。


髙橋:そうですね。取り残されていく感覚があったから、今までにないくらい焦った。メジャーシーンで活躍する友達を見てアンダーグラウンドに留まるかを考えた時、俺らはその立場じゃないなと。もちろん、アンダーグラウンドで活動し続けているバンドにリスペクトはあるんですけど、自分たちにはできないと思ったんですよ。

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─アンダーグラウンドで続けられないと考えたのはなぜですか?


川上:だって、みんな格好良いんですもん。

髙橋:本当にそう。アンダーグラウンドで続けているバンドは、スタイルが研ぎ澄まされているじゃないですか。そういったバンドと共演する中で、僕らは同じことはできないと思いましたし、自分たちがアンダーグラウンドの看板を立て続けるのも違うなって。

─アンダーグラウンドにもオーバーグラウンドにも属せない感覚があったからこそ、強い焦りがあったんですね。夜明けを意味する「Dawn」から「Daylight」「Twilight」と続く曲順を筆頭に『1ther』からは光の様相の変化や時間の移ろいを感じるのですが、1日の流れを描くことになった理由は?


川上:安直な理由で恥ずかしいんですけど、タイトルはカードゲーム「カードファイト!! ヴァンガード」に登場する「アンバー・ドラゴンシリーズ」からとってきていて。そのカードは「暁(ドーン)」「白日(デイライト)」「黄昏(ダスク)」「蝕(イクリプス)」「夜刻(ミッドナイト)」の順で進化していくので、それに合わせてシリーズで曲を作っていったんです。

─タイトルが先行して決まっていたということですが、「Flameseed」はほか6曲とは異なり、時間や光が直接的に表題と関係していないと思います。この曲の由来は何なのでしょう。


川上:これも「カードファイト!! ヴァンガード」に登場するカードの「フレイムシード・サラマンダー」から命名しました。

─違う種類のカードが命名元ということも含め、一段と外に開けた「Flameseed」は本作の中でも異なる雰囲気だと感じていて。<優しさを、明日を、月並みでもお前に歌うよ>と前向きなメッセージで本作が締めくくられることにオーバーグラウンドへの思いも伺えますし、この曲を最後に据えられたこと自体が希望だと思うんですよね。


川上:「Flameseed」は、トップシークレットマンとの対バンをキッカケに1曲の中で展開が変わりまくったら面白いと思って、手癖から生まれた曲なんです。この曲が一番最後にできたんですけど、当初は明るくしようとは考えていなかった。展開が特徴的だからライブでは映えるんじゃないかな、みたいな認識でした。

髙橋:でも、どこに置くかは話し合ったよね。カード的にも意味合いとしても「Dawn」から「Midnight」までは繋がりはあるけど、「Flameseed」はないし。「Flameseed」を最後に置くことで、また「Dawn」で新しい1日が始まるイメージを表現したんです。

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─当初は明るい曲を想定していなかったにもかかわらず、結果として前向きなナンバーになったのはなぜなんですか?


川上:トップシークレットマンのお客さんが盛り上がってくれてポジティブな気持ちだったのもあるんですが、勢いで作ったことが大きかったんじゃないかな。高校生の時、ハヌマーンを聴きながら曲を作り始めた感覚に近しいものがあったし、やりたいことに立ち返ったことで必然的に明るい歌詞になったんだと思います。

─初期衝動を大切に作られた「Flameseed」がエンディングを彩ること、危機感から誕生した楽曲が収録されていることなど、お話を聞いて『1ther』は皆さんにとって転機となる1作だと再確認しました。


竹前:前作『0state』が明るい雰囲気ではなかった分、『1ther』で開けた楽曲を制作できたことは、Tatteletaleにとって大きな進展だと感じています。あとは、前作以上に音色をはじめ、1つ1つのセクションに意味が伴うようになって。各所にこだわりが散りばめられた作品になったので、そのこだわりを感じてほしいな。

髙橋:やっと始まったなと。今振り返ると『0state』は聴く人を選ぶ作品だったと思うんですよ。でも『1ther』は自分たちの殻を破ることができましたし、多くの人に受け取ってもらえるものを生み出せた気がしますね。

川上:修行と話し合いを重ねて制作できた1枚なので、今のTatteletaleにとって渾身のEPになったと思っています!

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取材・文:横堀つばさ
撮影:Ayuna

RELEASE INFORMATION

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Tattletale「1ther」
2024年12月4日(水)
Format:Digital
Label:FRIENDSHIP.

Track:
1.Dawn
2.Daylight
3.Twilight
4.Dusk
5.Eclipse
6.Midnight
7.Flameseed

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LIVE INFORMATION

Umisaya×Tattletale 共同リリースパーティー
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2024年12月21日(土)
札幌SOUNDCRUE
OPEN 18:00

出演:
Umisaya
Tattletale
CHEMTRAIL

チケット:
¥2,500 / U23 ¥1,500

LINK
@tattletale_0318
@tattle_tale_official

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