SENSA

2024.11.22

隣で走り続けてきた10年を経て語り合う現在地──She Her Her Hers 髙橋啓泰×The fin. Yuto Uchino対談

隣で走り続けてきた10年を経て語り合う現在地──She Her Her Hers 髙橋啓泰×The fin. Yuto Uchino対談

She Her Her Hersがニューアルバム『Pathway』を完成させた。中国での人気が急上昇し、昨年以降は1000人規模のライブハウスツアーや大型フェスへの出演を繰り返してきたShe Her Her Hersの新作には、以前から中国にファンベースを持ち、盟友でもあるThe fin.のYuto Uchinoが参加して、8曲中4曲でミックスを手掛けている。一方、The fin.は2021年発表の『Outer Ego』でこれまでの音楽性に一区切りをつけ、昨年末に発表された「Swans」以降、ピアノやサックスを用いてジャズやソウルに接近した新たなスタイルを提示している。初めての対バンからはちょうど10年。ともに「浮遊感」や「空気感」を大切にしながら活動を続け、近年また新たな一歩を踏み出したShe Her Her Hersの髙橋啓泰とThe fin.のYuto Uchinoに、それぞれの現在地について語り合ってもらった。

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シーハーズはずっと横を走ってる音楽の友達(Yuto Uchino)

─まずはお二人の最初の出会いについて話していただけますか?


髙橋:The fin.とFREE THROWの合同ツアーに僕らが潜り込ませてもらった感じで(笑)、名古屋・東京・仙台で一緒になったんです。そのときに買ったThe fin.のレコードは今でも持ってます。

─それがちょうど10年前の2014年なんですよね。当時のことって何か覚えてますか?


髙橋:その頃Beach FossilsとかCaptured Tracks周りのアーティストが好きだったので、Yutoとはその辺の話をしたような記憶がある。Heavenly BeatっていうBeach Fossilsのメンバーがやってる別プロジェクトのこととか、そういう会話ができるっていうことは、絶対音楽の趣味合うだろうなと思ったのは覚えてますね。

Yuto:俺的にはShe Her Her Hers(以下、シーハーズ)のみんなは「優しいお兄ちゃんたち」みたいな感じだったけど、(松浦)大樹だけちょっと歳が近くて、ウイイレの話をしたり(笑)。でも最初に見たときからすごい音楽好きやって、めっちゃいいバンドいるなって、びっくりした。

髙橋:僕らは当時から対バンに困るバンドだったんですけど(笑)、The fin.とやれたら反応してくれる人が結構いるんじゃないかなと思って、それで声を掛けさせてもらったっていうのがありました。もちろん、The fin.の音楽自体が大好きだったし。

Yuto:シーハーズはその頃からずっと横を走ってる音楽の友達みたいな感じですね。

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─Yutoくんがシーハーズの楽曲のミックスを担当したのは『silver rain』が最初ですよね。タイミング的にはちょうどコロナ禍だったと思うんですけど、Yutoくんに依頼をしたのはどんな経緯だったのでしょうか?


髙橋:今回とも結構近しいんですけど、今までの活動にさらに一つ刺激を与えたいっていうのと、もうワンランク音の質を上げたいっていうのがあって。Yutoは自分のバンドでミックスをやってるから、バンドで積み上げていく感覚もわかりつつ、エンジニアの能力も持ってるので、意思疎通が取りやすいかなって。自分たちのことをよく知らない人だと話を合わせるのが大変で、細かい調整が必要になったりするけど、Yutoならそこがスムーズに行けるんじゃないかと思って、それでお願いした感じですね。

Yuto:ミックスをするときはそのバンドに対する深い理解があった方が自分の中のチョイスもわかりやすくなるので、シーハーズはメンバーの顔も見えてるし、ライブの音も知ってるし、音楽性とかやりたい方向も見えてたので、音を聴いた瞬間に自分の中で聴こえるものがあったから、そういう意味では自分がやる意味があるなと思ってやってました。

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もっと人間味のあるというか、完成しきれてないものにまた寄り戻しがあるかなと思っている(髙橋啓泰)

─新作の『Pathway』は8曲中4曲をYutoくんがミックスしているわけですが、アルバム自体はどのような方向性を意識していましたか?


髙橋:2023年のアジアツアーが自分たちにとって今までで一番大きい規模のツアーで、そのときのお客さんの熱量とか、チームの盛り上がりを感じながら一緒にツアーをやったら、来年もまた同じ時期にツアーをやりたいなと思ったんです。そのためにはまたアルバムをリリースすれば、一番お客さんが集まりやすいと思ったので、スケジュールを逆算しながら制作を進めていきました。ミックスに関しては、前作は自分でやったんですけど、また新たな刺激が欲しくて、今回はYutoと小森(雅仁)さんと奥田(泰次)さんにも声をかけた感じですね。

─前作からライブを意識したビートの強い曲が増えてきて、今回もその延長線上にはあると思うのですが、どんな意識がありましたか?


髙橋:フェスにもたくさん出たし、1000人ぐらいの規模でツアーもやらせてもらったので、やっぱりそれまでのライブハウスとはちょっと違うというか、イメージよりもお客さんが遠くて、そういった人たちも一緒に楽しめるような曲が欲しいなと思いました。自分が昔から思ってるのは、実際にその会場に立った経験で曲ができると思ってて、1万人の会場をイメージして曲を作ろうとしても、実際に立たないとわからないと思うんですよね。去年はフェスで何千人・何万人の前でもライブをしたから、自然にそういう場所に似合う曲ができていった感じです。

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─ミックスに関しては1曲1曲についてやり取りがあるのか、それとも全体的な方向の提示ぐらいで、まずはやってもらう感じなのか、どちらが近いですか?


髙橋:細かいやり取りはあんまりしなかったよね。

Yuto:デモが送られてきて、音を聴いたら「こういう感じだな」っていうのがもうわかるので。啓泰からも「好きにやっていいよ」っていう話は聞いてたし、まずは音を聴いて、自分が思うシーハーズを作っていく作業でした。シーハーズは初期の頃から聴いてきてるので、だんだんビートが強くなってきてるのはすごく感じてたし、ライブでも最近はそれを感じるので、ビートの部分は楽曲の芯としてしっかり出して、縦のラインというか、啓泰の歌がそこに乗っかってくるっていうのは一番意識しましたね。

─7月に先行で配信されていた「drip」はこれまでのシーハーズらしさと現在のシーハーズらしさが混在していて、今回のアルバムを象徴する曲のひとつかなと。


髙橋:「drip」は浮遊感とメロディーの強さとビート感がバランスよくできた曲だったので、Yutoから最初にラフミックスが返ってきたときに、もうその時点ですげえかっこいいなと思って、仕上がりまでもスムーズにいった曲でしたね。もともと作り始めたのは去年の夏かな。まだ前のアルバムを作ってたんですけど、制作に詰まると新曲が作りたくなる節があって、アルバムが佳境になると新曲が作りたくてしょうがなくなってくるんですよ(笑)。で、「よさそうな曲ができちゃったから、これは次以降に出そう」と思ったんですけど、夏の終わりだったので、そういう雰囲気が閉じ込められたかなと思います。

─コーラス、バイオリン、マリンバ、パーカッションなど、実は音がたくさん入ってるわけですけど、でもそれをスッとシンプルに聴かせるのが流石だなと。


髙橋:それこそミックス様々です(笑)。でももともと奥行き感は意識していて、同じフレーズなんだけど、音色を変えてたり、楽器が変わってたり、ちょっとハモるようなフレーズだったりで、何度聴いても発見がある。基本はシンプルで、ちゃんと歌が立ってる曲が僕の理想としてる形ではあるんですけど、そこに奥行きがあると一番ベストだなとは思ってますね。

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─Yutoくんは「drip」のミックスに関してどんなことを意識しましたか?


Yuto:聴こえ方がベタッとならないように、抜け感はすごく意識しました。でもなんか......そんなに何も考えてないです(笑)。音楽がいろいろ言ってるので、ミックスはそれに従ってるだけというか、ミックスで何か作れるわけじゃなくて、そこにある音をどう配置していくかみたいな話だと思うので。もちろん、その配置の仕方を間違えれば、曲の聴こえ方も変わっちゃうし、グルーヴも変わっちゃうわけですけど、シーハーズっていうバンドが一番よく聴こえる配置に自分が手を引かれてるぐらいの感覚ですよね。

髙橋:声は基本は素のままで渡しつつ、他の楽器はディレイだったりとか、空間系を少し、邪魔にならないぐらいにはかけてお願いしてます。でもYutoから戻ってくると全然違いますね。多分今DTMとかで自分でミックスしてる人多いと思うんですけど、やっぱり自分でやるのとは違うんですよ。このレンジの広さとか、どうやってるんだろう?って毎回思う。1日データを聴きながら説明してほしいぐらい。最近YouTubeとかでそういう動画結構多いじゃないですか。Disclosureとか、Jacob Collierが出してる動画を見ると結構面白いので、Yutoにも出して欲しいくらいです。

Yuto:ミックスはセンスと理論の2本柱があると思うんです。基本的に今のミックスは2MIXで、その中にドラム・ベース・ギター・ボーカル・シンセだったりを詰め込まないといけないってなったときに、単純に数字で割り切れちゃう部分と、それをどうコントロールするかっていうセンスの部分とのバランスやと僕は思ってて。もちろん知らないといけないこともあるし、単純に耳を鍛えないといけないっていうのもあると思うんですけど、ずっとやってると、「結局勘やな」みたいな。正解とかないじゃないですか。なんでこういうドラムがかっこいいと思うのか、それってその人のセンスやし、そこには自分がどれだけ音楽を聴いてきたとか、そういうものが出るんですよね。一曲ミックスを始めてから終わるまでには半端じゃない量の決断をしないといけなくて、今はデジタルでやれることがたくさんあるから、選択肢がすごく多いんです。その中で多分10年ぐらい自分の作品とかをミックスして、いろんな作品も聴いてきて、毎日思ってることとかがナチュラルに出てるんですよね。それによって、さっき啓泰が言ってくれたみたいに「なにか違うな」と思ってくれるんやろうけど、それを説明しろと言われてもわからない。

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─これまでの蓄積全てがあった上で、その瞬間のセンスが発揮される。


Yuto:自分は常に新しいものを試したいタイプなので、ずっと変わっていってるんです。10年前の自分のセッションを開くと「こんなことやってたんだ」って、逆に新鮮に思ったり。俺は半年周期ぐらいでガンガンやり方を変えていくので、いらないなと思ったものはすぐ捨てるし、新しいものを試すし、みたいなところはあります。でもだんだんシンプルになってるかな。最近難しいことはしてないですね。

髙橋:自分で初めてミックスした『location』の音って別に良くはないんですけど、この前たまたま聴いたときに引き込まれる部分があって、音の質だけじゃない良さってやっぱりあるなって、ホントここ最近感じてて。単純に音を良くするだけじゃない、曲の持ってる空気感をいかに捉えるかみたいなことがやっぱり大事なのかなって。最近はAIもあるし、これからもっと整理された音楽が増えていくだろうけど、もっと人間味のあるというか、完成しきれてないものにまた寄り戻しがあるかなと思っているので、なぜ自分の昔の作品にちょっと心が動いたのか、今はそれを探したいモードになってます。

─「drip」以外の曲で言うと、Yutoくん的に心が動いた曲は?


Yuto:俺は圧倒的に「Last Days」が好きです。この曲いい曲やな。最初聴いたときから好きやった。アルバムの最後っていうのもあって、そういうイメージをしながらミックスしました。

髙橋:『location』はProphetを使って、全然弾けないのに頑張って弾いて作り上げた作品で、そこからパソコンでいろいろいじれるようになって、言い方悪いけど楽できるようになっちゃって、綺麗にまとまりやすくもなったし、そうやってアルバムを作って、ミックスもしてたんですけど、「Last Days」に関しては自分でまた必死にシンセを弾いてたり、もうちょっと空気感を大切にしたいなと思って作った曲だったので、そう聴こえてたならすごく嬉しいし、また次に向かえるヒントになるなって。でもこれは「ここ差し替えてもらっていいですか?」みたいなやり取りをめっちゃやらせてもらった曲で。

Yuto:毎日LINEが来るんですよ。「やっぱりここをこうして、ここ入れ替えて」みたいな。

髙橋:「Last Days」はその前の「Pulse」からの流れで聴いて、曲に入ったときの引き込まれる感じを大切にしたかったので、それもあって何度も流れで聴いて、「もうちょっとここの間が」とか言って。それで時間かかっちゃったと思うんですけど、本当にありがたいですね。

Yuto:俺は自分も曲を作ってる立場やから、作曲者が納得するまでやるっていうのが一番大事かなと思ってるので。俺はいわゆるミックスエンジニアではないので。俺がこうやってシーハーズをやってるのは普通に好きやからやってるっていうのがあるので、そこがなくなったら、俺がやってる意味ないなって。

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─ちなみに、9月にリリースされたaccobinの新曲「Particle」も共同作曲が啓泰くんで、ミックスがYutoくん。啓泰くんはアッコさんとは長い付き合いなんですよね。


髙橋:付き合いはめちゃくちゃ長いですね。同い年で、もう15年以上になるかな。

─シーハーズのファーストアルバムではアッコさんが作詞をしていたり。


髙橋:そうなんです。もともとのきっかけが、アッコと深夜にDJイベントをやっていて、その企画でバンドをやろうってなって、自分が曲を書いて、アッコに歌詞を書いてもらうっていう流れで、それでシーハーズができたんですよ。そのときからいるメンバーはもうとまそんだけなんですけど、最初はほぼ全曲でアッコに詞を書いてもらってて。とはいえもちろんチャットモンチーがあったので、メンバーで歌詞を書くようにして、作詞講座みたいなのをやったりして(笑)。

─「Particle」のミックスがYutoくんなのは啓泰くんからの指名で?


髙橋:いや、多分Yutoにはアッコから話が行ったはず。

Yuto:ロンドンでずっと仲良くしてたAnchorsongっていうアーティストがアッコさんと友達で、そっちから話が来たんですよ。で、蓋を開けたら啓泰だった(笑)。だから、たまたまです。

髙橋:ミックスがYutoだって聞いて、ちょっと安心したというか(笑)。最近は楽曲提供の仕事もあって、ミックスが外部の人ってなると、一瞬Yutoが頭に浮かびはするんですよね。The fin.のイメージもあるかなと思うので、なんでも頼むのは違うかなと思うんですけど、また何かはまるのがあれば一緒にやりたいですね。

もうちょっと音楽の中で自由になりたいというか、だんだん不自由になってきてたんでしょうね(Yuto Uchino)

─The fin.は『Outer Ego』でこれまでThe fin.としてやろうと思ってたことをやりきった感があり、また新たな方向性を探してきた中で、昨年からの新曲たちが出ているそうですね。ピアノやサックスが前に出て、ジャズやソウルに通じる雰囲気がより増していますが、どのように新しい音楽性を見出していったのでしょうか?


Yuto:単純に聴く音楽がめちゃくちゃ変わったんですよね。自分の興味が移っていく中で、自然に自分がやりたいこと、自分が出したい音が変わっていくっていうのが今起こってること。今までの10年は自分の中の1個のアイデアをずっと突き詰めようとしてたところがあったと思うんですけど、そのアイデアが今新しくなって、でもそれがすごく遠いところにあるので、どうやってそこへの道を進んでいこうかなって、今はまだよちよち歩きみたいな時期だと自分の中では思ってますね。すごく遠くに見えてはいるんですけど、遠すぎて右に行っても左に行ってもずっと前にある。太陽とかお月様みたいな感じです(笑)。

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─聴く音楽がどう変わったのでしょうか?


Yuto:これまではどっちかっていうと1960年代以降のロックをずっと追いかけてきたんですけど、今は1920年代以降のジャズとかの方に行っちゃってるんで、もうバケモンみたいなのがいっぱいいるじゃないですか?作品が大量にあるので、そういうのを聴いてるのが楽しいんですけど、ただ昔過ぎてもわからなかったりするし、今は1960年代・1970年代が多いですね。その中で自分がちょっとでもいいなと思ったものに引っ張られて聴いていくみたいなことをやってるんですけど、これまで自分がやってきた音楽とは全然違うからこそ惹かれてるところがあって、メンタリティも違いますし、音楽を作っていく考え方とかストラクチャーも全然変わってきてるので、そういう意味で自分にもっとできることがあるんだって見つけられたワクワク感が一番大きいかもしれない。ずっとひとつの道を進んでたけど、パッて右を見たらすごいでっかい公園があって、「あれ?こっちの方が楽しそうじゃない?」みたいな。本当に初心者みたいな気持ちでやってますね。

─ひさびさの新曲として昨年12月にリリースされた「Swans」は特に後半のサックスパートが印象的でしたが、それもリスニングの変化の中から生まれたものだったわけですよね。


Yuto:もうちょっと音楽の中で自由になりたいというか、だんだん不自由になってきてたんでしょうね。一つのスタイルで10年ぐらいやってると、だんだん自分が作ってるものに自分が絡めとられていくから、どこかで壊したいと思ってたのかもしれない。でも今3曲シングル出しましたけど、やりたいことは全然まだまだできてないんですよ。多分次のアルバムでも全然できない。でもやるしかない。今生まれるものは確実に生んでいってるので、とにかく今やれることをやってる感じですかね。

─啓泰くんはThe fin.の最近の変化や新曲にどんな印象を持っていますか?


髙橋:空気感がすごくいいのと、あと最近は生感を強く感じるので、それを今の人たちも聴けるようなサウンド感に上手く落とし込んでいて、さすがだなと思って聴いてます。もともとThe fin.のトップラインがすごく好きで、それはずっと変わらないし、でも上手く変化をしていて、ある意味羨ましいですね。The fin.の生楽器の美しい感じはすごく理想的というか、この質感はテクニックだけじゃないような気もするし、真似ようとしてできるようなことではないですけど、生での美しさみたいなところは自分たちももっと研究したいなと思います。

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─サックスのHinata Ishiiさんは現在ライブにも参加されていますが、もともとどのように出会ったのでしょうか?


Yuto:saccharinのライブを手伝ってて、大樹が紹介してくれました。喋ったら出身も近くて、いろいろ被ることがたくさんあって、1回ジャズのセッションに遊びに行ったら、サックスを聴いたときにこれ絶対合うなと思って、一緒にレコーディングをして、そこからライブもしてもらって、それが2年前ぐらい。でも自分の中では「生か生じゃないか」みたいのはそんなに考えてなくて、それよりサウンドスケープみたいなものが自分の中にあって、やっぱり大事なのは空気感なんですよね。

─確かに、「Swans」を聴いたときは生っぽい方向に行くのかなと思ったんだけど、次に出た「Towards the Sun」はかなりディレイをかけたり、凝ったミックスになってたから、シンプルに生の方向に行くわけでもないのかなって。


Yuto:そうですね。どっちかにこだわってるっていう頭はないかもしれないです。その曲が欲しがってるものを、俺が出してるってだけかもしれない。

─最新曲の「Alone in the Sky」ではひさしぶりにNakazawaくんがドラムを叩いてるんですよね。


Yuto:作ってる段階で「Nakazawaみたいなドラムやな」と思ってたんです。で、「ちょっと叩いてよ」って、録ったんですけど......そのまんまになりました。Nakazawaやなっていう(笑)。

─『Outer Ego』には「Deepest Ocean」があったり、もともとThe fin.は神戸の出身だから、海のイメージがあったんですよね。でも「Swans」を経て、「Towards the Sun」で「Alone in the Sky」だから、海から宙に昇って行ってるような印象もあります。


Yuto:そのうち火星まで行くんじゃないですかね(笑)。でもやっぱり自分の中で、その浮遊感みたいなのはずっと大事にしてて、それをリヴァーブだったりで表現してたんですけど、もっと音楽的に表現できるようになってきたのかもしれない。やり方も増えてきたし、自分が持ってる浮遊感の正体みたいなものを自分の中でだんだん掴んできたりもしてて......でもやっぱり単純な興味かもしれないですね。今自分が聴いてる音楽の、なんでこういうふうに聴こえるんだろうとか、なんで今自分の心が動くんだろうみたいな、今まで聴いてた音楽とは違う感情がそこには絶対あって、そういう感情を自分がわかるようになってきたっていう......年とったなっていうのもありますけど(笑)。

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まだフレッシュに、次の作品の未来を描けてるようなアーティストが隣にいるのはすごく心強い(髙橋啓泰)

─2人が出会ってからももう10年ですしね(笑)。最後にこれから先のことも聞かせてもらうと、シーハーズは12月にまた中国に行くんですよね。


髙橋:12月は映像を入れて主要都市を回る予定で、キャパもちょっと増やしました。前は1000ちょっとだったんですけど、今回は1500とか1800とかで、これが来年以降にも繋がるので、お客さんに集まってほしいなと思います。今年は出演予定のフェスが中止になったり、思うようにいかないこともあったんですけど、ツアーは自分たち主導で、周りに振り回されずにできるので、本当に大切に、見せたいことをしっかり見せられる場としてやっていきたいなと思います。

─そして、来年の2月にはリキッドルームでのワンマンライブも決まっています。


髙橋:そこをしっかり売り切りたいですね。今活動しているモチベーションって、いい曲を作ることももちろんそうですけど、昔より圧倒的にお客さんの表情とか熱量を感じる機会が増えて、それが何よりのモチベーションになってるので、たくさん集まってくれたら、また来年もアルバムを出すかってなるかもしれないし、ぜひ集まってほしいです。

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─The fin.は『Days With Uncertainty』の10周年を記念した「Night Time」のリミックスがリリースされていますが、まだ次のアルバムに向けてはこれからですかね?


Yuto:一応来年アルバムを出すぐらいの感じでは動いてるんですけど、正直今の感じだと次のアルバムで俺がやりたいことは絶対できないので、今俺がやれることをやるアルバムかなっていう。もう正直5年10年ぐらい見てるんです。自分がやりたいのは結構遠くにあるので。そこにちょっとでも近づければいいなっていうのはあるんですけど、でも今やってる曲もすごく好きなので、これからもずっと変わっていく、今はその途上かな。

髙橋:自分の年齢になるともう音楽から離れてる人もいっぱいいますけど、10年経ってもまだフレッシュに、次の作品の未来を描けてるようなアーティストが隣にいるのはすごく心強いし、そういうバンドが周りにもっと増えてくると嬉しいなと思いますね。

取材・文:金子厚武
撮影:林将平

RELEASE INFORMATION

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The fin.「Night Time (Bad Milk Remix)」
2024年11月6日(水)
Format:Digital

Track:
1.Night Time (Bad Milk Remix)

試聴はこちら

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The fin.「Days With Uncertainty」
2024年11月3日(水)
Format:Record,Digital
品番:RDCA-1078
価格:¥4,000(税抜)

販売はこちら


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She Her Her Hers 「Pathway」
2024年10月30日(水)
CNDT-0003
¥2,200 (tax in)

Track:
1.Ethos
2.Thirsty
3.moreish
4.Strawberry Picking
5.drip
6.Dreamkiller
7.Pulse
8.Last Days

試聴はこちら


LIVE INFORMATION

The fin.
2024年11月23日(土)
「地球市民フェス」 at 長崎

2024年12月19日(木)
"RedRising with BASEMENT BAR" at 東京・下北沢BASEMENT BAR *

*ミニマルセットでの出演


She Her Her Hers "Pathway" Release Tour 2024-2025

2024年12月6日(金) 广州 MAOLivehouse(太古仓店) ※SOLD OUT
2024年12月7日(土) 成都 CH8 绿树演艺中心
2024年12月8日(日) 北京 东三LIVE乐游园  ※SOLD OUT
2024年12月11日(水) 上海 瓦肆 VAS est


She Her Her Hers "Pathway" Release Tour 2024-2025 final
2025年2月20日(木)
会場:LIQUIDROOM
開場時間:18:00 / 開演時間 19:00
券種:
スタンディング
一般前売料金(税込)¥4,500
学割前売料金(税込)¥2,500
※ドリンク代別

問い合わせ:
SMASH
https://smash-jpn.com


LINK
The fin.
オフィシャルサイト
@_thefin
@the_fin
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Bandcamp

She Her Her Hers
オフィシャルサイト
@shhh_s
@sheherherhers_official
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