SENSA

2023.07.05

「生きること」と「音楽を作り続けること」が重なる人が立ち上がらせるリアルな思い──金廣真悟『Heartbeats』インタビュー

「生きること」と「音楽を作り続けること」が重なる人が立ち上がらせるリアルな思い──金廣真悟『Heartbeats』インタビュー

グッドモーニングアメリカのフロントマンであり、Asuralbert Ⅱなどでも活動する金廣真悟から、ソロアルバム『Heartbeats』が届けられた。すべての楽器の演奏に録音、さらにミックスやマスタリングまでも彼一人で手掛けることによって生まれた一作である。独創的かつメロディアスなバンドサウンドに乗せて、愛する人たちへの思い、歳を重ねることへの思い、地元への思い、自らの過去への思い......様々な思いが、リアルに立ち上がってくる。ここには、円熟したソングライターとしての魅力的な筆致とスキルがあり、同時に、金廣の中にあり続けるロックバンドや音楽への消えることのない憧憬もまた瑞々しく滲む。祝福と喜びがあり、その隣に、不安と孤独がある。「生きること」と「音楽を作り続けること」が重なる人だからこそ作りえたアルバムと言えるだろう。
本作『Heartbeats』はどのようにして生まれたのか、金廣に話を聞いた。個人的に、金廣に取材をさせてもらうのは2度目だった。1度目に取材したとき、彼は「ずっと生産者でありたい」と言っていた。彼は「消費すること」よりも「創る」ことによって、世界を見つめ、人生を語ろうとする人である。そんな彼の実直さと真っ直ぐさは、このインタビューの発言からも感じ取ってもらえるだろう。最後には、今年、2020年の活動休止以来初となるフェス出演を発表したグドモに対しての思いも聞いた。


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中学生の頃「40歳になったら『40』というタイトルの曲を書こう」と思っていた

─この度リリースされるソロアルバム『Heartbeats』の制作はどのようにして出発したのでしょうか?


金廣真悟:昨年、「幻聴」をシングルで出させてもらったんですけど(同曲は、映画『人でなしの恋』の主題歌として書き下ろされた)、あの曲を作り終わったタイミングくらいから、「ゆっくりとフル(アルバム)でも作れたらな」と思い始めました。それから仲のいい弾き語り小屋(新代田crossing)のオムニバスのために「潮風」という曲を書いたり、ちょいちょい、いい曲ができている手ごたえがあって。そこから段々と、「もうちょっとで40歳だな」と意識し始めたんですよね。高校生の頃に、「40歳になったら『40』というタイトルの曲を書こう」と思っていたんです。エルヴィス・コステロの「45」という楽曲があるんですけど、あの曲の字面を見たときから思っていて。「45」じゃなくて「40」なのは、その方が僕の中ではキリがよかったからなんですけど。「もう、その歳なんだな」と思って。

─高校生の頃から40代を見据えられていたというのは、珍しい気もしますね。高校生で40代の自分を想像するのは、なかなか難しいことだと思うので。


金廣:そうですよね。なんでなんでしょう......。本当にふわっと思っていただけなんですけどね。コステロの「45」という曲に凄く衝撃を受けた、という訳でもなくて。今回も、「そういえば......」となんとなく思い出したくらいなんです。「40」という曲を書こうと思っていたことなんて、ずっと忘れていた。僕が30代に入るちょっと前、グドモ(グッドモーニングアメリカ)を始めたばかりの頃にLOST IN TIMEが「30」という曲を出したんですけど、そのときも思い出さなかったし、海北(大輔)さんはそのあと「40」という曲もやっているんですけど、その曲を聴いたときも思い出さなかった。ただ、このアルバムの曲を作っているときに、ふと思い出したんです。去年はコステロをよく聴いていたからかな。

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─やはり、金廣さんにとってコステロは大きな存在ですか。


金廣:ずっと好きですね。コステロって一応、デビューは1970年代の「初期パンク」に分類される人だと思うんですけど、多くの人が想像するようなパンクではなく、音楽的にはザ・ベンチャーズのようなポップで、キラキラした音楽の流れを汲んでいる人でもあって。「やっぱり、コステロいいなぁ」と思って聴くことは多いです。

─「幻聴」をリリースされたときの金廣さんのコメントを見ると、ご自身のスタジオを作られたことが書かれていて。なので、お一人で音楽を作るための制作環境を整えられていた期間があったということかなと思うのですが。


金廣:そうなんです、自分で録ることができる環境にしました。そもそもの発端としては、ドラムを買ったんですよね。それで、Asuralbert Ⅱではベースを弾いているし、ドラムもあるし、「一人で作れるな」と思って。あと、Asuralbert Ⅱでベースを弾いているぶん、ギターをジャカジャカ弾きたくて仕方がなくて(笑)。それなら、Asuralbert Ⅱでやっているマニアックなものとは違う王道的なもの、自分が通ってきた道が見えるような音像のものを作りたいなと思ったんですよね。それで、「幻聴」は自分一人で、なおかつ、バンドサウンドで作ったんです。

─実際、本作『Heartbeats』は1曲目「誰かのソラシド」からその音の迫力に引き込まれるアルバムだと思いました。「一人で作るバンドサウンド」という、そのアンビバレントさやロマンティシズムが、強烈に、音の魅力として伝わってきます。


金廣:一人で作ると他の人を絡めないから広がりは減っちゃうかもしれないけど、そのぶん「俺!」という感じのものは作れたかなと思います。正直、「幻聴」や「潮風」のときは、なかなか自分の思うような仕上がりの音像にできなかったんです。知識がないぶん、尖った音になりすぎてしまったというか。曲はいいんですけどね。音も、自分にしかできないものは作れているとは思うけど、それをもっと聴きやすいものに落とし込むことはできていなかった。でも、アルバムを作りながら少しずつ、自分で納得できるレベルのものは作れるようになったなと思います。3、4回やり直しましたけど(笑)。でも、段々とエンジニア寄りの考え方ができるようになってきたかもって。「幻聴」も「潮風」も、このアルバム用にミックスし直しています。

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─本作は演奏もすべて金廣さんご自身でやられているし、ミックスやマスタリングもご自身でやられているということですが、ミックスの段階などで意識されたことはありますか?


金廣:メインの考え方として、声がそんなに上にいないようにしたい、というのはありました。グドモのときは、ボーカルを上に置くサウンド作りだったんです。でも、今回はどちらかというとボーカルが下にいて、バスドラよりもベースが下にいて、ギターよりもベースとドラムが大きい。そうすることで、ちょっと古臭いというか、自分の好きな感じの音になるんです。やっぱり、ざらついて、声のひずみがちょっと乗っているくらいの音の方が僕は好きなので。あまりやりすぎないようには気を付けましたけど(笑)。

─そうした点で、リファレンスにしたアーティストや作品はありましたか?


金廣:サブスクで聴いたりしているなかでも、音圧を感じるというか、「この音すげぇな」と思うものはあって。去年聴いた中で特にそれを思ったのは、bonobosとVaundy。この2組は音がいい、というか、俺的に「カッコいいな」と思いましたね。もちろん曲によりけりではあるんですけど、この2組はリファレンスにしました。

今回のアルバムは思っていることをそのまま書いているような歌詞ばかり

─本作は金廣さんのボーカリストとしての表現力が、音楽的な幅広さや作品全体の魅力に繋がっていると言える作品だと思います。歌に対しての意識に関して、ここ数年で変化はありますか?


金廣:単純に、歌は上手くなったかなと思います......この歳になって(笑)。曲提供をしたりする中で、仮歌で女性の主線を自分で歌ったりすることもあるんですけど、そういうことをやっていると上手くなるんですよね。あと、今までだったら「ロックバンドとしてやりたくないな」と思っていた歌い方、自分の中のカッコよさを基準に考えると好きじゃない歌い方もあったんです。「こうすればもっと綺麗に歌えるよ」と言われても、どれだけ怒られてもやらなかった歌い方があって(笑)。僕は音程が取れないくらいの方がいいし、枯れているくらいの声の方がカッコいいと思うので。そこは今も変わらないんですけど、最近は「綺麗に歌うのもいいな」と、ミュージシャンとして納得することができるようにはなりました。歳を取ったんですかね。たしか、「40」を初めてライブでやったときに、「金廣、歌うまいじゃん!」と言われたんですよ。「ロックな感じはもう染み付いているから、無理に意識しなくても大丈夫だよ」とも言われて。

─なるほど。ボーカリストとしても、「40」はターニングポイントの1曲となったと言えるのかもしれないですね。高校生の頃から作ることを意識されていた「40」は、結果的にどのようにして生まれたのですか?


金廣:アルバム用の曲を作り出していく中で、去年の10月に、お婆ちゃんが亡くなって。そのことを曲に書きたいなという気持ちがそもそもあったんです。そういうことを思いながらメロディを作っていく中で、高校生の頃に「40」という曲を作ろうと思っていたことを思い出して。この曲、歌詞は速攻で全部書けたんです。今回のアルバムは思っていることをそのまま書いているような歌詞ばかりなんですけど、「40」は特にそういう部分が強い曲だなと思います。思っていることを書き留めた感じというか。

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─心から零れるものを書き留めているという感覚は『Heartbeats』というアルバム全体に通じるものだと思うんですけど、このアルバムで「なにを歌うか?」という点は、金廣さんはどのように定めていったのでしょうか?


金廣:定めたというほどのことでもないんです。そもそも、俺は今のことしか書けないんですよね。そのぶん、今の自分のことを書けば、そこにどんな自分が出ていてもアルバムとして1本筋が通ったものになることはわかっていて。なので、なにかを定めるということはしていないんですけど、ただ、環境は変わったし、そういう部分は出ていると思います。今は、そこまで間口を広くして生きていないんですよね。どちらかというとミニマムに生きているなと思う。友人関係にしても、仕事にしても。グドモのころはドカーッと間口を広く生きていましたけど、今は、そういう感じでは生きていないので。

─アルバム収録曲には「heartbeat」という曲があったうえで、アルバムのタイトルは複数形の『Heartbeats』という言葉が掲げられています。アルバムのタイトルはどのように決めたのでしょうか?


金廣:アルバムのタイトル、すげぇ悩んだんです。最初は『40』にしようかとも思ったんですけど、「なんか、あからさまだな」と思って(笑)。そういうのは、あまり好きではないので。そういうことをいろいろと考えていくうちに、自分の中での一番の変化は、子どもが生まれたことだよなと。そういう意味で「heartbeat」は象徴的な曲なんです。この曲では、子どもの心音をまだ奥さんのお腹の中にいるときに録って、その音を曲に使っているので。アルバムタイトルを複数形にしたのは、『heartbeat』のままだと、これもあからさまだなと思ったのもあるんですけど(笑)。......子どもの心音と大人の心音って、こんなにも速さが違うんだって驚いたんですよね。今、うちの子どもの心音はまだ速いんですけど、これから段々と大人のスピードに落ちていくらしくて。泣くと速くなるとか、そういう話を聞くと、感情によって心音って変わるものでもあるんだなと思うし。そう考えると、今回のアルバムの曲はどれも「heartbeat」と言ってしまっていいのかなと。

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─お子さんの心音を使って曲を作るというアイディアはずっとあったんですか?


金廣:お腹にいるときに「鳴ってる!」と気づいたんです。すげぇ速いので「大丈夫?」と心配になったりして。心音は、ピンマイクと聴診器を合体させて、アナログな感じで録りました。まさに、自分のスタジオだからできたこともでもありますね。思った以上にちゃんとした音として録れました。

─お話を伺う限り、本作の制作とお子さんが生まれてくる時期は重なっていたということですね。


金廣:そもそも、子どもが生まれてくるまでに12曲作ろうと思っていたんです。(生まれてきたら)どんな感じになるのか想像もつかなかったので。とにかく生活は変わるだろうし、生まれてくるのを期限にしようと。そうしたら、予定よりも12日くらい早く生まれてくることになって、想定よりも制作期間が短くなったんですけど(笑)。ミックスは子守りをしながらヘッドフォンでもできるかなと思ったんですけど、とにかく、録るところまではちゃんとやらなきゃと思って。そうしたら、結果的に12曲じゃなくて13曲録れました(笑)。

─実際、お子さんが生まれて心境の変化などはありますか?


金廣:変わったとは思うんですけどね、どうなんだろう......。まだ3か月経っていないですからね。もっとこれから変わっていくんだと思います。今のところは、ちゃんと世話をしないと死んじゃう生きものがいる、という感じですね。気が付いたら泣いていますから。死なないようにしてあげないと。子どもが生まれてからはライブも休んでいたんですけど、5月に縁の深い場所から弾き語りで呼んでもらったので、少しずつ、出るようになっていて。まだ子どもが生まれてから書いた曲もないので、心境の変化を曲に落とすこともできていないんですよね。どう変わるのか、わからないです。NHKで流れるような、子どもの歌は作ってみたいですけどね。

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─「heartbeat」の歌詞の中に〈トルコ・シリアの地震の最中に 私はあなたを思って歌 歌ってる〉とありますが、身近な日常の景色や自分自身の心象風景を歌いながら、その視点の中に遠い国で起こっている出来事や社会的な事象が入り込んでくるところが、本作の歌詞のひとつの特徴だと思ったんです。「40」でも〈今もミサイルは飛んでくる〉と歌われていたり、「惑溺」でも〈こんままずっと 誰にも銃を向けずに済む様な 普通の日々を〉と歌われていたりする。社会的な事象にピンポイントにフォーカスを当てているわけではないけど、どうしても入り込んでくる景色やニュースがあるし、そこに心は揺り動かされる。そうやって、社会と個人の心の関係までを切り取った歌詞がとてもリアルだと思ったし、先ほどおっしゃったように、「今」を書き留めたアルバムとしての説得力に繋がっていると思います。


金廣:日常的に、入ってくるものはありますからね。非現実的に感じるものもあれば、凄く近くに感じるものもありますけど、どうしても「見えるもの」というか。それに、僕自身、結婚をして、子どもが生まれて、近い未来に対して「どうなるんだろう?」と思うことは増えたので。自分の事は差し置いて「大丈夫かな、日本?」とも思うんです。別に政治に詳しいわけではないけど、漠然とした不安はある。そういうものは、書きたい......というか、書いちゃうんです。みんなの幸せを思うことは僕にはできないですけど、自分に関わってくれた人には元気でいてほしいなと思うし。エゴと言えばエゴですけど、そういう部分は全部、書いているかなと思います。

グドモの頃からずっと歌っている。一人でも、一人なのは一人じゃないよって

─アルバムの幕開けを飾る1曲目「誰かのソラシド」は〈Call me by your name〉という言葉から始まりますが、この言葉でアルバムを始めることに対してはどのような思いがありますか?


金廣:これは、意味的には「僕は君のもの」みたいな言葉なんですけど、この曲はそこまで意味は意識していなくて。最初に宇宙語みたいな感じで歌詞を書き始めた頃から、この言葉だったんです。

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─4曲目の「カタチ」では〈カタチになります様に〉〈カタチに出来るだろうか〉というフレーズが歌われますが、この曲で歌われる願いや不安は、どのような感情から生まれてきているものなのだと思いますか?


金廣:この曲はちょっと逆説に近いというか。僕はアイドルにも曲を提供したりしているんですけど、本当はこの曲もアイドルにあげるように書き始めたんです。でも、いざ作ったら「これ、俺が歌いてぇな」と思って(笑)。それで、歌詞も自分が歌うように変えた曲なんですけど、意味的には、「カタチなんていろいろだし、叶っているんだよ」というような感じですかね。それが想像していたカタチと同じかどうかはわからないけど、どんなカタチであれ、カタチにはなっているんだよっていう。もちろん、それでも願っちゃうものはあると思うんですけどね。でも、カタチって、やってきたことがあるからこそ生まれるものだし。

─自分の「カタチ」を、そのまま受け入れるのは実は凄く難しいことでもありますよね。やはり、理想と現実のギャップに苦しむ部分は出てきてしまうというか。金廣さんはどのようにして自分自身のカタチを受け入れてきたと思いますか?


金廣:受け入れるというか、「しょうがない」という諦めの気持ちにも近いんですかね。「しょうがない」って、「仕様がない」ということですよね。あるべきものが、あるままだから、しょうがない。たとえば、俺の字が超汚いとしたら、それは努力すれば今からでも変えることができることだけど、現時点では、しょうがない(笑)。それが俺の今の時点でのカタチだから。でも、俺が思い描く「こういう字が書きたい」というものがあれば、そこに向けて練習すればいいだけの話で。死ぬまでは、なんでもできるなと思うので。

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─「北野街道」は実際にある道の名前が曲名に冠されていますが、この曲は金廣さんにとってどのような曲なのでしょうか?


金廣:KICK THE CAN CREWのLITTLEさんと仲良くさせていただいているんですけど、彼が「八王子少年」というプロジェクトやられていて。そこで一昨年、一緒に曲を出させてもらったんです(「グッドモーニング八王子 feat 金廣真悟」)。そのときに「もう1曲、ロックっぽい曲を作りたいな」と思って作ったんですよね。特に、北野街道は学生時代毎日通っていたし、バイトもしていたし、1曲の歌詞に収まりきらないくらいの感情がある道なので。音楽的にも、こういう楽曲は入れたかったんです。ベースが16分を刻んでいて、サビらしいサビがあるというよりは、A、Bで終わり、くらいの感じの曲。

─先ほど音像の話の中で、「自分が通ってきた道が見えるような」というお話がありましたが、今作を作る中で、自分自身の過去や、来た道を振り返ったりすることも多かったですか?


金廣:40歳になったこともあるし、今は八王子に住んでいますから、特にそういう部分はあると思います。八王子は、自分が中学から20代の半ばくらいまで住んでいた場所なんです。コロナ禍に入ってから戻ってきていて。最初はコロナであまり外を出歩けなかったんですけど、最近は出歩くようになって、そうなると、いろいろと思い出す機会は増えますよね。高校の頃の友達と飲んだりする機会もあったし、昔を思い出す機会はやっぱりあります。そういう瞬間には「曲を書こう」と思うことも多いし、昔聴いていた曲を聴き返すことも多い。昔の自分と今の自分を比べて、卑下するようなことはないんですけどね。でも、切なくなることはあるし、昔の自分と重なるような年頃の子が歩いていたりすると、眩しくも見えますよね。「ああいう感じだったなぁ」とか、「あの時、ああして思っておけばよかったなぁ」とか......まぁ結局、今が一番いいんですけどね(笑)。

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─アルバムを締め括る「六等星」からは、金廣さんの中にある普遍的なメッセージを感じます。「自分は一人だ」と感じている誰か、あるいは、そう感じているかつての自分自身に向けられているような歌詞だと思いました。


金廣:この曲で一番歌いたかったことは、〈一人じゃないから〉ということですね。グドモの頃からずっと歌っていることです。一人でも、一人なのは一人じゃないよって。ずっと歌ってきたことを、この歳になって、また歌ってみたいなと思って。

─「一人でも、一人なのは一人じゃない」。金廣さんの歌の中にそうしたテーマが入り込み続けているのは、何故なのだと思いますか?


金廣:音楽って、大体、一人で聴くものだと思うんです。最近はシェアする文化もありますけどね。でも、少なくとも僕がイヤホンで音楽を聴いていた頃からずっと、音楽は一人で聴くものだと思っていた。僕は転校が多かったので、孤独感もあったんだと思います。その孤独感を、音楽が和らげてくれたなと思う。そういう経験があるから、ずっと、こういうことを歌いたいんだろうなと思います。

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─グドモに関しても伺いたいのですが、9月に愛知県で開催されるフェス「TREASURE05X 2023 "NEW PROMISED LAND"」に出演することが発表されています。2020年の活動休止以来のステージとなりますが、再びグドモでステージに立つことに関しては、今、どのような思いがありますか?


金廣:9月のイベントに関しては、活動休止にしていることは知ったうえで、主催の方に「周年だから出てほしい」と言っていただいて。僕もメンバーもその人のことが好きなので、想いに応えたいと思いました。ただ、申し訳なさもメンバー全員抱えてますね。僕らは活動休止したタイミング的に、バンドとしてコロナ禍で闘っていないので。コロナ禍で、アーティストやライブハウス、レーベル、事務所が厳しい状況に置かれているときに、僕らは闘ってきていない。それなのに「TREASURE05X」のステージに立っていいのか? と。「TREASURE05X」は、多くのアーティストにとって目指すべきフェスだと思うので。でも、そのうえで誘っていただいたので、その人への感謝の気持ち全開で、出させていただくことにしました。

─最後に、音楽の伝わり方は限定することができないという前提での質問なのですが、今の時点で、金廣さんは本作『Heartbeats』がどのように聴き手に伝わってほしいと思いますか?


金廣:どうだろう......。なにかを目的にして作ったアルバムではないんですよね。今の自分には、売れたい意欲が強くあるわけでもないし。ただ、いいものを、自分の好きなように作らせてもらって......本当に、今の自分を残すこと、吐露すること、そういうことを中心に作ったアルバムだなと思います。詰めが甘い部分も含めて、凄く自分らしいアルバムだと思うんです。なので、シンプルに聴いて楽しんでもらえたらいいなと思いますね。今のところ、関係者の人は喜んでくれています(笑)。グドモの活動をまたやることに関して、筋を通さないとなと思って、最近、コロムビアの自分の担当だった人たちと飲みに行ったんです。そうしたら、みんな、このアルバムのことを「凄くよかった」と言ってくれて。そこはよかったなと思っています。

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取材・文:天野史彬
撮影:服部健太郎

RELEASE INFORMATION

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金廣真悟「Heartbeats」
2023年7月5日(水)
Format:Digital
Label:namakemono records / Zimoto Records

Track:
1. 誰かのソラシド
2. 常飲
3. ヒーロー
4. カタチ
5. 幻聴
6. 分からない
7. 北野街道
8. 惑溺
9. 40
10. heartbeat
11. 潮風
12. 甘えてるのです
13. 六等星

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LIVE INFORMATION

吉祥寺SHUFFLE 16th Anniversary SPECIAL LIVE!!
吉祥寺SHUFFLE
7月14日(金)
OPEN/START 18:30 / 19:00
出演:金廣真悟 (グッドモーニングアメリカ)/高高-takataka-/涼木 聡(Yeti)

Sound Stream sakura 22th ANNIVERSARY
千葉Sound Stream 佐倉
7月24日(金)
OPEN/START 18:00 / 18:30
出演:金廣真悟 (グッドモーニングアメリカ)/佐藤駆(CULTURES!!!)/伊藤純平(Fusee)/白井竣馬(Arakezuri)/光(月がさ)

髙尾山どっこいShow 2023夏
髙尾山薬王院本堂
8月26日(土)
OPEN/START TBA
出演:金廣真悟 (グッドモーニングアメリカ)/and 2 special guests!!!


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