SENSA

2019.12.31

「いろんな曲を歌えるほうがかっこいい」。SSW・やましたりなの「王道」のかたち

「いろんな曲を歌えるほうがかっこいい」。SSW・やましたりなの「王道」のかたち

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関西を中心に弾き語りで活動し、楽曲配信サービス「TuneCore Japan」のCMソングに起用されたことをきっかけに、知名度を全国に広げている奈良在住のシンガーソングライター・やましたりな。2019年11月には1stフルアルバム『catchy』で全国デビューを果たし、「eo Music Try 19/20」のファイナリストにも選出されるなど、まさに追い風が吹き始めている状況だ。彼女がストリートライブを始めたのは高校時代。高校卒業をきっかけに本格的に歌手の道を志した彼女は、どんな気持ちのもと音楽活動を続けてきたのだろうか。『catchy』の話も訊きながら、やましたりなという人物像を探っていった。


−今も奈良にお住まいなんですよね。


はい。住んでいるのは奈良で、活動拠点は大阪です。奈良から大阪の主要の街まで1時間かからず行けちゃうんで、全然通えるんですよ。

−やましたさんが活動範囲を大阪や京都にまで伸ばしたのは2015年頃で、現在は商業施設・グランフロント大阪とFM802の共同プロジェクト「MUSIC BUSKER IN UMEKITA」の公認アーティストです。ストリートライブにはどんな魅力があるのでしょう?


ライブハウスはちゃんと観てもらえる環境なぶん、その期待に応えるためにもいいライブをせなあかんなって気持ちなんですけど、ストリートはいろいろ挑戦ができるんですよね。歌い方を変えてみたり、いろいろ試していくなかで「あ、こういうことしたら人は寄ってきてくれんねや」という発見があったり。あと、知らない人に見つけてもらえるのもいいですね。ストリートは自分を知ってもらう場所で、ライブハウスは知ってくれた人に好きでいてもらう場所というか。どの場所でも日々勉強ですね。

−遡ると、やましたさんは幼少期から歌がお好きだそうですね。


赤ちゃんの頃からカラオケに連れてかれてたくらいのカラオケ一家で(笑)、歌うことが日常やったんです。モーニング娘。さんがすごく好きで、プロマイド集めたりCDを買ったりしていたし、倖田來未さんもすごく好きやったから、「歌いながら踊る人になりたい!」と小さい頃から思ってました。でもダンススクールに通うことが難しくて。それでも漠然とずっと歌手になりたいと思ってたんです。

−そんな時に出会ったのがギターだったということですか?


そうですね。勉強するのが嫌やからテキトーに選んだ高校に入学して(笑)、そんな時にストリートライブをしている人たちを見掛けたんです。「ギターが弾けたらストリートライブできるんかな?」と思ってたら、同じ時期に阿部真央さんを知って。ギターを持って歌う女性もかっこいいなと思っていたので、ギターを始めました。

−オリジナル曲を作り始めたのも同じ頃でしょうか。


高校時代に作り始めました。最初は阿部真央さんのカバーをしていたんですけど、いろんな曲をカバーしていくうちに初心者には難しい曲が増えてきて(笑)、「知ってるコードで自分で作ったほうが早いやん!」ってオリジナルを作り始めました。高校卒業してから「本格的に歌手の道を目指したい」と思うようになりましたね。

−高校時代のストリートの経験が、歌手になりたいという気持ちを強くさせた、ということ?


奈良は歌ってるだけで珍しがられて、人が集まってくれるんですよ。聴いてくれる人がちらほら出てくると気持ち良くなってきて(笑)。ストリートを始めてから「ライブハウスにも出てみいひん?」と声を掛けられて、高校卒業してからライブハウスに出るようになりました。そこでいろんな音楽を知って、コアな部分も見えるようになって。それはそれでかっこいいけど、自分はもっと王道の音楽や、キャッチーな音楽をやりたいなと思ったんですよね。

−それがきっかけで大阪での活動をお決めになった。


でも大阪はすごい人がめちゃくちゃおって。そのなかで「自分が楽しむことをなによりも優先してやってるだけでは通用せえへんな。どうやったら人に伝わるようになるかな?」と考えるようになりましたね。意識的にお客さんの目を見るようにしたり、ライブのスタイルはストリートでの経験が影響してると思います。

−しっかり活動を積み重ねて今に至るというわけですね。


やりたいことがこれくらいしかないんです。働きたくもなかったし(笑)、好きなことで生きていきたいと思ってたから、ほかの道に進もうと思ったことがなかったんです。嫌なことがあったら曲を作って発散してました(笑)。バイト先に遅刻しまくってて、めちゃくちゃ嫌われまくったとき「自分クズやな~」と思いながら書いたのが「DUST」です(笑)。10代後半から20代前半の頃は負の感情を昇華するために曲を書いてましたね......。曲はめっちゃポップなんですけどね(笑)。

−ははは。報われない感情が綴られた曲が多い印象はありました。


それがまさに今言った時期に書いた曲たちですね。「ステータス」とか「ヒカリエ」とか「17:00」とか......この曲たちを書いてた頃は荒んでたんでしょうね(笑)。シンガーソングライターはひとりで活動しているぶん孤独になりがちやし、あんまり人と群れようとしないところがあるのかなと思っていて。昔はそういう面が強く出ているぶん「わたしの音楽気に入らへん人は別にええわ」みたいに反骨精神もすごく強かった。でもそれは、今思うと、お客さんと向き合ってすらいなかったなって。

−なるほど。大阪でストリートライブをするようになって「どうやったら伝わるかな?」と考えるようになった話とつながってきますね。


そうですね。活動していくなかで「音楽は聴いてくれる人がおって、一緒にやってくれる仲間がいないと成り立たないな」と思うようになって。聴いてくれる人に感謝しようという気持ちや、聴いてくれる人を楽しませたいという気持ちが......やっと芽生えてきました(笑)。そういう意識を持ちだしたら、ストリートでも耳を傾けてくれる人が増えたかな。

−では今は陽の気持ちで曲を作ることが多いのでしょうか?


んー、というよりは「いろんな曲を作りたい」って気持ちが大きいのかな。語弊があるかもしれないんですけど、「こういう音楽がしたい!」というこだわりがあんまりないんです。その代わり、自分がちょっとでもやってみたいなと思ったことは、いろいろ挑戦したい。バラードばっかりやと、聴いてる人たち眠ならへん?と思っちゃって。

−(笑)。


わたしにも暗い曲は多いんですけど、そのぶんバランスが良くなるようにしたくて。アルバムにはそういうのが反映されてるんかな。いろんな曲を歌えるほうがかっこいいと思うし、阿部真央さんがそういう人だと思うんです。いろんな表現ができる人に惹かれてきたから、自分もそれに近づいていきたいなと思ってますね。

−『catchy』は鼓舞するような曲もあれば、どっぷり悲しみに浸れる曲もあるので、聴く人もその日その日でフィットする曲が変わるんじゃないかなと思います。


「楽しい気持ちになりたいからこの人の曲聴こう」とか「今は静かな気持ちになりたいからこの人の曲にしよう」っていうのを、全部自分だけでできるんやったら、うれしいですね。自分からいろいろ「こんな曲書きたいな」って挑戦はできるんですけど、「こういうふうにしなさい」と言われても書けないので、ほんまだめやな~って思うんですけど(苦笑)。

−ちょこちょこ自己評価の低い発言が出てきますね(笑)。


ちゃんと就職して結婚して子どもを育ててる、っていう同い年の友達が多いんです。でも自分はほんま好きなことしかでけへんし飽き性やから、朝6~7時に起きて会社に行って仕事して夕方に家に帰って夕飯の用意をする......っていう生活をしている友達を見ると「すごいなあ」と思うし、「それがでけへんわたしはほんまにだめやな~」って思うし、うらやましくもなったりして。そういう気持ちが根本にあるから自己評価低いんやと思います(苦笑)。でも音楽で勝てたらそれもチャラやから、今は突っ走ってこうかなと。

−その「勝ちたい」というのは、「見返したい」ということですか?


見返したい気持ちもあるけど、恨んでる人がいるわけではないというか。でも認められたい欲が強いので、やっぱり見返したいのかな。恨みつらみは曲で完結するんです。たとえば「ステータス」はめっちゃ見下してくる女の子がいて、その子のことがめっちゃ嫌いで(笑)。曲のなかでディスりにディスりまくって、わたしの気持ちはすっきりするという(笑)。ほぼ心の叫びですね。曲それぞれに自分の思ったことや感じたことがちゃんと入ってると思います。

−そうですね。曲それぞれにその時その時の感情が込められている。曲のバラエティも豊かですけど、ボーカルも同じくカラフルですし。


ほんまですか? ちゃんと変えられてます?

−声色を使って別人になるというスタンスではないのに、同じ人が歌っているとは思えない感覚があるというか。人はいろんな顔を持っているんだなとあらためて思わせるカラフルなボーカルワークでした。


そう言ってもらえるとうれしいです。もともとあんまり歌い分けができなくて、レコーディングした自分の歌声を聴いてヘタクソやな~と思うことが多かったんです。そこからエンジニアさんにディレクションやアドバイスを受けるようになって、最近やっとちょっと掴めてきました。努力の賜物です(笑)。そこでやっと、「自分まだまだいけるんやな」と思えたんですよね。

−というと?


ある時から歌のレベルがずっと止まったまんまやなと思ってたんです。去年は「歌い方全部一緒やね」と言われてたし。でも『catchy』のレコーディングで、その壁を越えられた感覚があって。その理由が、言ってくださった歌い分けなんですよね。歌い分けができるようになってきたことで、表現力がついてきたのかなって。カラオケ行っても抑揚の部分だけ異様に点数低かったんです(笑)。最近やっと真ん中くらいになってきました(笑)。

−(笑)。曲のバラエティが増えたことも、表現力を突き動かしてくれたのかもしれないですね。


ああ、そうかもしれないですね。

−やましたさんと言えばTuneCore JapanのYouTube CMに起用された「ダイエットのうた」が注目を集めましたが、『catchy』はそのイメージには収まらないなと。


「ダイエットのうた」は「痩せたいなー」という気持ちをそのまま書いた、ライトめの曲なんです。でもそれをSpotifyさんが公式プレイリストに入れてくださったり、TuneCoreさんがCMに起用してくださったりして。それだけでもびっくりなのに、「めっちゃいい!」みたいに反響もいろいろあって。なにがバズるかわからへんな~って思いました。

−ストリートみたいなお客さんと至近距離で音楽を届けることが日常的なやましたさんにとっては、ネットで急速に広まっていくのは新鮮だったのでは。


「SNSすごいねんな」ってあらためて思いました。カバー動画を精力的にアップしてるのでInstagramもフォロワーが6000人くらいになったんですけど、ライブに来てくださるのは「ダイエットのうた」で知ってくれた人が多かったりもするんです。

−ちゃんと現場につながってるんですね。今作を制作して、あらためて気付いたことや思ったことなどはありましたか?


弾き語りでやってた時は気付かなかったけど、ちゃんと全部アレンジが入ったものを聴いて「全曲めっちゃいいなあ」と思ったんです。「ちゃんとした曲書けてるやん~」っていう自信にもなったし、歌の幅も広がったし。自信がついた......かな? わたしの性格上「いいね」と言ってもらうことよりも、ディスられた言葉のほうがどうしても心に残ってしまうから、二十歳前後の頃に「こんな王道の曲書いてへんで、ちょっと人と違う曲書きなさい」というアドバイスをもらってたときのことを思い出しちゃって。

−ああ、その頃に書いた曲もたくさん入っているからなおさら当時の言葉を思い出したと。


そうです。でも『catchy』を完成させて、「ああ、王道でもいいやん」って思えたんですよね。すごくキャッチーな作品ができたと思ってますし、声がパワフルなほうなので、聴いてくれる方々にもわたしの曲で悩んでいることとかしんどい感情も吹き飛ばしてくれたらいいなって思います。やましたりなとしての色が出ていたらうれしいです。

−では最後に、やましたさんの今後のビジョンとは?


まじでミーハーなんですけど、小さい頃からずっと有名人になりたいんですよ(笑)。

−はははは。ソングライティング面に違わず正直ですね。


やっぱり自己顕示欲がすごく強いんです(笑)。認められたい。そういう意味でもどんどん聴いてくれる人を多くしたいなと思っています。あと、関西のTV番組で「目標は?」という質問をされたときに「3年後に日本武道館で弾き語りワンマンライブをする」って言っちゃって。自分のなかでは5年後のつもりやったんですけど、3年って言っちゃったんですよね......。

−2年も縮んでますけど(笑)。


TVやからかっこつけたくて(笑)。でもケツ叩かへんと動けへん性質やし、言ってしまったからにはそこに向けて全力でやるしかないですよね。自分を追い込んでがんばっていこうと思います!


ライター:沖 さやこ


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1stフルアルバム『catchy』

2019.11.20 Release
品番:LNCM-1293
POS:4573471801002
定価:¥2,800(tax out)
発売元・販売元: Mastard Records


【収録予定曲】
1. BEST BEFORE
2. ダイエットのうた
3. DUST
4. 日月日 (*読み「あした」)
5. 17:00  (*読み「ごじ」)
6. 朝とカフェラテ
7. サタデーナイト
8. Lovey Dovey (*読み「ラヴィダヴィ」)
9. ステータス
10. ヒカリエ
11. 失恋ソングを聴いて
12. ≒ (*読み「ニアリーイコール」)




1st full album"catchy" release one-man"全国デビュー!やりましたな!"

2020.1.12(日)心斎橋JANUS
開場18:00 開演18:30
ticket 3000円(+1D)

各プレイガイドで発売中!
詳しくはこちらから


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