SENSA

2025.08.14

SEVENTEEN AGAiN、分かり合えない私と僕が共に生きるための全33曲「歌おうぜ!それだけだよ」

SEVENTEEN AGAiN、分かり合えない私と僕が共に生きるための全33曲「歌おうぜ!それだけだよ」

2025年7月13日(日)、SEVENTEEN AGAiNが『ひとりのリプレイスメンツ』を東京・新宿Marbleにて開催した。SEVENTEEN AGAiNの主催イベント『リプレイスメンツ』の名を冠した今回のワンマンライブは、7月にリリースされた4年ぶりとなるアルバム『光は眩しいと見えない』を引っ提げたもの。『スズキ』ドロップ時の名阪ツアー以来、約8年ぶりとなる『リプレイスメンツ』単独公演という、エポックメイキングな1日は、3人の暖かさで満ち溢れていた。

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「よっしゃ、やりましょうか。昼からSEVENTEEN AGAiNを2時間見るのはしんどいよ。変な人しかいないよ。アホか!」と最大級の愛を添えて、「STAY GOLD」で開幕の号砲が鳴らされた。パンクを信条としてきた彼らがこのタイトルを冠したことからは同楽曲に対する比類ない自信と敬愛が伺えるけれど、〈くちびるに風がささやく あの時の輝きは消えない〉と紡ぐこの歌は、その詩に、その合奏に深い静けさを抱えている。開世(Dr)が柔らかく刻むハイハットとヤブユウタ(Vo,Gt)が響かせる流麗なアルペジオ、シンガロングパートの広がりを補強するろっきー(Ba)のベースが三位一体となってそよげば、「どんな⾔葉もただ通り過ぎてゆく」から「世界は君たちを変えることは出来ない」「FUCK FOREVER III」「戦争はおわりにしよう」へ転がり込んでいく。

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〈誰よりも老いて死にたい なにより普通になりたい〉と自らを「2025年世界で最も普通なバンド」と称するSEVENTEEN AGAiNらしい人生観を滲ませる「どんな⾔葉もただ通り過ぎてゆく」も、過去作に連なる形でフラストレーションを爆発させながら不死鳥のように今この瞬間のリピドーを燃焼させる「FUCK FOREVER III」も、そこに反射しているのは、どこまでも素朴で、ディストピアで暮らす毎日に疲弊して、それでも何とか今日を乗りこなす3人の背中だ。世界は私を、俺を変えることはできない。だからこそ、せめて少しばかりでも分かち合えたら。ちょっとやそっとのことで、僕らは衝突し、傷つけあってしまう。であるならば、〈どんなにかわっても 君は君のままだよ そうだ、おわりにしよう〉と共感しきれないこの距離ごと受容できたら。一色単に染まるわけではなく、白と黒とあらゆる色がそのビビッドな色彩を失わず、キャンバスの上で共存していく。そういう作為的なユナイトから距離を置いた先に存在する理想郷をこのバンドは求めている。

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続く「想像⼒ばかり育ちすぎてどこにも⾏けなくなった」でも、彼らに流れる血液は濁りを知らない。〈他に何もいらない〉のシャウトを通じて見せつけたのは、便利と手軽が指先ひとつでアクセスできる現代において、世界へ丸裸で飛び込んでいく姿勢。そして、時に鎖にもバネにもなり得る想像力を血肉に変え、動き出した一歩が何よりも尊いという事実だろう。たまに足跡を見返しながらも、自らのやりたいをその足で実現してきたSEVENTEEN AGAiNが放つからこそ、「やるっきゃない」のメッセージは身体の奥へスルスルと侵入してくる。

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ライブ中盤、「つづき」から「レコードを捨てて、旅に出よ」、「わずかな光」をまとめたブロックは「Just Do it」なんてスローガンが似合う3人の過去と現在、未来を追体験する数分間だった。愛する仲間たちと音楽に囲まれながら続けてきたSEVENTEEN AGAiNをこの先も動かしていくことを〈あぁ、俺は続けてく 今日も昨日も今日も〉〈今動き出せば宿命はいとも簡単に 必然じゃなくて自ら描く方〉(「つづき」)と強く約束。抗えない理不尽な現実も時にはあると大人になるにつれて知ってしまったから、自身の運命を紛れもない自分の手で掴もうとする3人の姿が眩しい。それは〈旅を続けるんだ いつまでもここで no no no〉と唇を震わせる「わずかな光」も同様。『スズキ』から『光は眩しいと⾒えない』まで約8年の時を経ようとも、変わらない青さを抱え込んでいるピュアネスたるや、並大抵のものじゃない。

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「ワンマンは本当に嫌だよ。だって誰かとやった方が楽しいじゃん。でも『みんなのリプレイスメンツ』をやって、みんながあるなら、ひとりもやるべきだなと。今日はSEVENTEEN AGAiNだけ見たいという稀有な人が集まっていると思うんですけど、こういう日がたまにあれば、そんな気持ちに応えられるんじゃないかと思いました。誰かとひとりという気持ちを込めた曲です」と「世界は君を変えることは出来ない」で後半戦へ突入すると、「Can't Leave Here」や「Yesterday」「Always Sing Alone」と1stアルバム『NEVER WANNA BE SEVENTEEN AGAIN』からの楽曲を乱れ打ち。ヤブの言葉を借りれば、「SEVENTEEN AGAiNだけ見たいという稀有な人」にとってのご褒美が贈られたわけだが、考えてみればここにも彼らのエンターテインメント性が露出していると言えよう。いやむしろ、「自分の楽しいがあなたの楽しいになったら」という純真な思いが溢れたというべきか。

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「Always Sing Alone」を終え、ヤブが語ったこんな言葉には、生身の人間として、換言すればクラシカルなロックスター像とは異なる「普通の人間」として、オーディエンスと気取ることなく対峙するバンドのスタンスが滲んでいた。

「僕らはチェーン店になりたいわけじゃなくて、街の美味い中華料理屋とか、キャベツを買ったら1個トマト付けてくれる八百屋とか、そういうことがやりたいんですよね。今日来てくれた人が楽しめるようにやる以外ないと思っているので。あなた達のおかげで楽しくバンドをやれてるし、やれる限りは楽しませたいと思ってずっとやっていきます」。

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全ての人の口にマッチしなくとも、間違いなく暮らしのそばで鳴っているミュージック。ふと思い立った時に立ち寄って、変わらない味に、その素朴さにホッとする楽曲群。打算とは無縁のままに音を鳴らしていくことを伝え、「あらゆる祈りを使って」が捧げられる。〈僕らは間違う あなたとは違う それでも交わる 分からなくても〉と分かち合えぬままに交錯する2つの人生を描くこの歌は、「戦争はおわりにしよう」や「世界は君を変えることは出来ない」とも共振。分かち合うために分かり合うを諦めること、団結するためにバラバラであることといった、一見矛盾する、しかしエッセンシャルなキーワードがぶっとく強調されていく。

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ここまで手を変え、品を変え、幾度もこの切実を反芻した理由。それは2時間全33曲に及ぶワンマンを「この気持ちは死ぬまで変わんないんだろうなと思います」と「Nobody Knows My Song」で締めくくった構成からも明白だろう。時代に求められなくとも、3人の音楽を求めるあなたとどこかで出会えたら。もう既にSEVENTEEN AGAiNと友達になった君と、「元気にやってる?」と出会い続けられたら。訳も分からないこの胸の空白を埋めるためにありとあらゆる事象へ手を出すのではなく、手に取れる範囲と目に見える世界を抱きしめていられたら。そんな優しさが拳に、絶唱に、特大のチャントに変換されていった『ひとりのリプレイスメンツ』。「みんな」があったからこそ、今回「ひとり」が掲げられたわけだが、「ひとり」を旗印にした結果、それぞれの人生を背負った仲間たちが集まってきてしまった点が、極めてSEVENTEEN AGAiNのワンマンらしかった。一人だけど、独りじゃない。みんなだけど、一塊じゃない。そういった共生の場に必要なものは、「シュプレヒコール」の最中、ヤブが放った台詞に詰まっている気がした。「歌おうぜ!それだけだよ。また会おう!」。

文:横堀つばさ
写真提供:SEVENTEEN AGAiN

RELEASE INFORMATION

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SEVENTEEN AGAiN「光は眩しいと⾒えない」
2025年7月9日(水)
Format:CD,Digital
品番:ODCP-031/CD価格:¥2,727+税
Label:only in dreams

Track:
1.どんな⾔葉もただ通り過ぎてゆく
2.あらゆる祈りを使って
3.STAY GOLD
4.⾏きたくないところばかりだよな
5.想像⼒ばかり育ちすぎてどこにも⾏けなくなった
6.あの頃
7.FUCK FOREVER III
8.つづき
9.新繁華街
10.光は眩しいと⾒えない

試聴はこちら

LIVE INFORMATION

真夏のリプレイスメンツ2025
新宿marble & MARZ
2025年9月14日(日)
チケット予約不要
Name Your Price(2000円以上自由価格 投銭制)
OPEN 23:00 / START 23:30 / END 4:30

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