SENSA

2025.08.13

オートコード「that you know」──僕と君がいた、あの夏を詰め込んで

オートコード「that you know」──僕と君がいた、あの夏を詰め込んで

あの感傷を知った夏へ

名前も知らない蝉の声と、電車へ注ぐやけにオレンジ色をした日差し。溶けたアイスでべたついた手と、雷雨の匂い。京都発の4人組・オートコードによる1stEPは、そんな夏のイデアをパンパンに袋詰めした1枚である。

生ぬるい風の隙間を縫って秋の到来を告ぐ、気怠さと朗らかさをないまぜにした轟の歌声と、牧歌的なメロディーを高らかに奏でるトランペットの音色が飛来する「hoop」。呟きにも鼻歌にも聞こえてくる吐息めいた歌唱がしずしずと鳴らされるピアノと共振し、艶めきを放つ「図鑑」。前作『Haiku club』に収録された「サマータイムマシンブルース」をビルドアップしたかのような、ゴツいサウンドメイクを身上とする「ライフイズサンダー」。田舎めいた晩夏の気配は、彼らが根を下ろす京都の、あるいは来客の時だけ麦茶が濃くなる都市郊外の日暮れ時に似ていて、ノスタルジーを帯びながら、我々の胸へと染み入っていく。

しかし、4人の楽曲は過ぎ去りゆく季節に対する寂寞を宿しているだけではない。青すぎる空や木漏れ日と混じり合っていた君の姿を振り返りながら、〈君がすごく好きだった〉の1ラインへ到達する「hoop」も、〈君の過去は君のもの 塗り替えずいてくれよ 言い足りぬ思いだけは浮かべておこう〉と苔の生すほどの永遠を囁く「湖畔」も、〈麦茶を飲み 図鑑を埋める夜 この思いは書き残すよ〉と2人のために言葉を当てはめる「図鑑」も、そこには寝汗で崩れた前髪さえ愛おしく思えるあなたの姿が朧げに浮かんでいる。そして、この時間を留めておく術が、歌うことであり、言葉にすることだと彼らは知っている。

「夏の終わり」や「はるかぜ」をはじめ、過去作でも丁寧な筆遣いで四季を額に収めてきたオートコードが、もう戻れないひと夏を借りて紡ぐ、私と僕の手の中にあった平穏な日々。瞼の裏にこべりついた記憶とオーバーラップする全5曲は、「ずっとこのまま」と願ったあの瞬間を今ここに出現させるはず。『that you know』──ご存じの通り。私はこのEPの手触りと寂しさを、とっくのとうに知っていた。だから、懐かしかった。

文:横堀つばさ



RELEASE INFORMATION

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オートコード「that you know」
2025年8月13日(水)
Format:Digital / CD
Label:FRIENDSHIP.

Track:
1.hoop
2.ライフイズサンダー
3.湖畔
4.図鑑
5.再就職ブギ

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LIVE INFORMATION

オートコード pre.that you know リリースツアー
2025年8月14日(木)
心斎橋 Pangea
w/ カラコルムの山々 / Highvvater / コロブチカ

2025年8月22日(金)
下北沢 THREE
w/ すなお / 年齢バンド / さらば帝国

2025年9月20日(土)
京都 nano
w/ ナードマグネット

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