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2025.06.04

GOOD BYE APRIL・Nolzy・First Love is Never Returnedの3組で作り上げた、過去と未来の間で踊れる夜
5月25日、GOOD BYE APRIL、Nolzy、First Love is Never Returnedの3組による共同企画スリーマンライブ『Reflections』がGRIT at Shibuyaで開催された。GOOD BYE APRILとFirst Love is Never Returnedの両バンドと交流があったNolzyが「この2組と過去・未来の間で踊れる夜を作りたい」と提案をして、共同で開催されることになったこのイベント。音楽的な共通点だけでなく、3組の精神性やシーンとの距離感でも確かな繋がりが感じられる一夜となった。

トップバッターのNolzyはシティポップ風の「Bittersweet」からライブがスタート。NolzyはFirst Love is Never Returnedと初共演を果たした昨年2月の『FEAT. by FRIENDSHIP.』が2度目のバンドセットでのライブだったが、この一年でMEMEMIONのメンバーを中心に構成されたサポート陣とステージを重ね、明らかにショーとしての完成度が増している。キーボードやギターのソロ回しを交えた「Outsider」に続いて、序盤のハイライトを刻んだのは「#それな」。イントロから『サタデー・ナイト・フィーバー』のジョン・トラボルタばりのダンスを披露するこのキャッチーなディスコファンクでは、オーディエンスが一斉に手を振る光景も見られた。


MCではイベントの開催に至る経緯が語られ、「(GOOD BYE APRILとFirst Love is Never Returnedを)自分が繋がず誰が繋ぐんだ」という言葉にオーディエンスからは大きな拍手と歓声が起こる。そして、3組の共通点として1980年代や1990年代に通じる懐かしい、キュンとするメロディーを挙げ、Nolzy自身は大江千里や槇原敬之などから影響を受けつつ、そういった空気感のサウンドに、過去の自分を肯定して、未来へ向かうメッセージを乗せた「Throwback(slowjam)」を披露。1980年代のブラコンの影響下にあった1990年代J-POPは個人的にも大好物で、僕は大江千里や槇原敬之とも時代を共有したKANを連想した。ジャンルや年代を問わない様々な音楽を愛し、オマージュを散りばめながら楽曲を構築するNolzyの研究者のような作家性自体も、KANとシンクロする部分があるように思う。

サポートメンバーによるセッションから始まった「Scent of melancholy」、軽快なブレイクビーツポップで痛切な心象を歌うギャップがNolzyらしい「リセット」に続いて届けられたのは、今月リリースされたばかりの最新曲「fit感」。この曲もやはりマイケル・ジャクソン、プリンス、岡村靖幸、スガシカオらのオマージュを感じさせつつ、「自分探し」という普遍的なテーマを「fit感」というワードで現代的に表現しているのが面白い。こういうファンクナンバーはNolzyはもちろん、サポートメンバーとも相性が良く、中盤のコール&レスポンスもバッチリ決まって、新たなライブの定番曲になることは間違いなさそうだ。最後は「次にお届けする曲がこんなにふさわしい日はないんじゃないかと思うくらい、愛と感謝を込めて作った歌を最後にお届けして、次のバンドに繋ぎたいと思います」と話して、エモーショナルなミドルバラードの「キスミー」を熱唱。この日の立役者がトップバッターという重要な役割を最後まで全うしてみせた。


2番手のFirst Love is Never Returned(以下、ラブネバ)は「夜的平成浪漫」からスタート。1990年代のJ-POPを連想させる切ないイントロ、〈カーステレオは80's song〉という歌い出しからして「あの頃」を思い出させるこの曲は『Reflections』にピッタリだし、ボーカルのKazuki Ishidaだけでなく、両脇に位置するKeita KotakemoriとArata Yamamotoも歌いまくって、多彩なハーモニーやユニゾンを聴かせるラブネバらしさを存分に感じさせる曲でもある。前述した一回目の『FEAT. by FRIENDSHIP.』の段階ではまだ東京遠征2度目だったが、この一年で彼らもまた北海道の内外で数多くのステージを重ね、ライブバンドとしての成長ぶりは明らか。「泡と文學」でのメンバーそれぞれのソロ回しも余裕を感じさせたが、やはり素晴らしいのが「恋する歌声」を担うIshidaのパフォーマンス。ソロ歌唱から始まった「シューズは脱がないで」は、もともと持っていた海外のソウル〜R&Bシンガー譲りのテクニックに加え、力強さがはっきりと増していて、彼のステージ上での存在感の高まりが、そのままバンドの勢いにも繋がっているように感じられた。





そんな彼らの現在地を強く認識させたのが、東京ではこの日が初披露だったという最新曲の「挿入歌」。Ishidaが「これまでとは違うチャンネルを意識して作った」と語るこの曲は、音源にはBIGMAMAの東出真緒がヴァイオリンで参加し、さらにスケールを増したスタンダード感のあるポップスだ。こういう曲が生まれたのも、バンドの状況の広がりはもちろん、やはりIshidaのシンガーとしてのスケールが増してきたことが背景にあるように感じられ、イベント前に行われたIshidaとの対談でNolzyが語っていたように、いずれこの曲がホールのような大きな会場で披露されることが想起される。ステージ上での口数は多くないし、〈リアルな世界に音楽は鳴らない ドラマティックな展開なんて何もない〉と、綴られる言葉には市井の人の感覚があるが、それでもロマンティックであることは忘れずに、歌い始めるとその場の空気が一瞬で変わるIshidaは実に魅力的なフロントマンだと思う。

「バックミラー」からのライブ後半戦は再びギアを上げていき、クラップやシンガロングでオーディエンスを巻き込みながら熱量を高めていくそのステージングはバンドの確かな自信を感じさせるもの。人気曲の「Unlucky!!」ではその盛り上がりがさらにもう一段階上がって、力強くシャウトをするIshidaの姿はもはやロックシンガーのようであり、フロアを煽るKotakemoriのアジテーションも加わることで、「シティポップ」という言葉の持つ端正なイメージからはいい意味ではみ出すラブネバのロック気質を見事に表現。最後は「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」でオーディエンスが一斉に手を振って、まだまだ終わらない日曜の東京の夜を駆け抜けてみせた。


イベントのトリを務めたGOOD BYE APRILはサックスにTRI4THの藤田淳之介を迎えた5人編成で、「feel my hush」からライブがスタート。バンド4人がハーモニーを聴かせるイントロのゴスペルコーラスはラブネバにも通じる部分がありつつ、倉品翔が歌い始めるとやはりニューミュージック的な雰囲気にガラッと変わるのが面白い。さらにサックスのソロをフィーチャーして、ディスコファンクな「サイレンスで踊りたい」でステージを華やかに盛り上げていく。この日の3組は世代こそ近いものの、ライブバンドとしてのキャリアで言うとGOOD BYE APRILに一日の長があり、オリジナルはブレッド&バターの1974年作で、山下達郎が好んで演奏していることでも知られる「ピンク・シャドウ」のカバーにしても、巧みなキメやソロ回しを織り交ぜながら、フレッシュかつ洗練されたアンサンブルを聴かせてくれた。






MCでは大阪出身の延本文音と吉田卓史が関西弁の掛け合いで盛り上げ、倉品が「僕らはネオ・ニューミュージックというキーワードでやってるバンドなんですけど、今日の3組を繋ぐのは『ポップス』という言葉だと思う」と話すと、ピアノとサックスの音色が爽快な「夜明けの列車に飛び乗って」を披露。さらにメンバー紹介を挟んで、カッティングとリードギターの絡みが印象的な「CITY ROMANCE」でフュージョン感を高めると、「missing summer」では梅雨を通り越して、一足早い夏の訪れを感じさせる。倉品が「『Reflections』最高!」と叫んでから吉田とツインハモを聴かせ、フロントの全員がステージ前方に出て行ってセッションを聴かせる終盤の高揚感はこの日随一のものだった。

「3組で『Reflections』という素敵なタイトルのイベントができて本当に嬉しいです。今日限りじゃ勿体ないなと思いました。またこの3組で一緒にやれたら嬉しいです」という言葉に大きな拍手が送られると、最後に演奏されたのはメジャーデビュー曲の「BRAND NEW MEMORY」同様に林哲司のプロデュースによる「Love Letter」。アース・ウィンド&ファイアのようなホーンをフィーチャーしたダンスチューンで、フロアは最後まで大盛り上がり。個人的にこの曲は米米CLUBであり、「Throwback(slowjam)」同様にKANを連想させる部分もあって、以前から仲が良かったというNolzyとの親和性であり、過去と未来を繋いで2020年代のポップスを鳴らす3組の親和性が改めて感じられるものだった。

アンコールではGOOD BYE APRILのメンバーに続いて、NolzyとラブネバのIshidaもステージに登場し、イベントタイトルの基になった寺尾聰のアルバム『Reflections』に収録されている名曲「ルビーの指輪」を全員でカバーして大団円。1981年にリリースされた「ルビーの指輪」の輝きは今も色褪せることなく、これまでに3度『NHK紅白歌合戦』で披露されているように、『Reflections』の名の下に集った3組が奏でるポップスもまた、時代を超えて聴かれ続けることを願いたい。

文:金子厚武
撮影:小畑ちひろ
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First Love is Never Returned
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トップバッターのNolzyはシティポップ風の「Bittersweet」からライブがスタート。NolzyはFirst Love is Never Returnedと初共演を果たした昨年2月の『FEAT. by FRIENDSHIP.』が2度目のバンドセットでのライブだったが、この一年でMEMEMIONのメンバーを中心に構成されたサポート陣とステージを重ね、明らかにショーとしての完成度が増している。キーボードやギターのソロ回しを交えた「Outsider」に続いて、序盤のハイライトを刻んだのは「#それな」。イントロから『サタデー・ナイト・フィーバー』のジョン・トラボルタばりのダンスを披露するこのキャッチーなディスコファンクでは、オーディエンスが一斉に手を振る光景も見られた。


MCではイベントの開催に至る経緯が語られ、「(GOOD BYE APRILとFirst Love is Never Returnedを)自分が繋がず誰が繋ぐんだ」という言葉にオーディエンスからは大きな拍手と歓声が起こる。そして、3組の共通点として1980年代や1990年代に通じる懐かしい、キュンとするメロディーを挙げ、Nolzy自身は大江千里や槇原敬之などから影響を受けつつ、そういった空気感のサウンドに、過去の自分を肯定して、未来へ向かうメッセージを乗せた「Throwback(slowjam)」を披露。1980年代のブラコンの影響下にあった1990年代J-POPは個人的にも大好物で、僕は大江千里や槇原敬之とも時代を共有したKANを連想した。ジャンルや年代を問わない様々な音楽を愛し、オマージュを散りばめながら楽曲を構築するNolzyの研究者のような作家性自体も、KANとシンクロする部分があるように思う。

サポートメンバーによるセッションから始まった「Scent of melancholy」、軽快なブレイクビーツポップで痛切な心象を歌うギャップがNolzyらしい「リセット」に続いて届けられたのは、今月リリースされたばかりの最新曲「fit感」。この曲もやはりマイケル・ジャクソン、プリンス、岡村靖幸、スガシカオらのオマージュを感じさせつつ、「自分探し」という普遍的なテーマを「fit感」というワードで現代的に表現しているのが面白い。こういうファンクナンバーはNolzyはもちろん、サポートメンバーとも相性が良く、中盤のコール&レスポンスもバッチリ決まって、新たなライブの定番曲になることは間違いなさそうだ。最後は「次にお届けする曲がこんなにふさわしい日はないんじゃないかと思うくらい、愛と感謝を込めて作った歌を最後にお届けして、次のバンドに繋ぎたいと思います」と話して、エモーショナルなミドルバラードの「キスミー」を熱唱。この日の立役者がトップバッターという重要な役割を最後まで全うしてみせた。


2番手のFirst Love is Never Returned(以下、ラブネバ)は「夜的平成浪漫」からスタート。1990年代のJ-POPを連想させる切ないイントロ、〈カーステレオは80's song〉という歌い出しからして「あの頃」を思い出させるこの曲は『Reflections』にピッタリだし、ボーカルのKazuki Ishidaだけでなく、両脇に位置するKeita KotakemoriとArata Yamamotoも歌いまくって、多彩なハーモニーやユニゾンを聴かせるラブネバらしさを存分に感じさせる曲でもある。前述した一回目の『FEAT. by FRIENDSHIP.』の段階ではまだ東京遠征2度目だったが、この一年で彼らもまた北海道の内外で数多くのステージを重ね、ライブバンドとしての成長ぶりは明らか。「泡と文學」でのメンバーそれぞれのソロ回しも余裕を感じさせたが、やはり素晴らしいのが「恋する歌声」を担うIshidaのパフォーマンス。ソロ歌唱から始まった「シューズは脱がないで」は、もともと持っていた海外のソウル〜R&Bシンガー譲りのテクニックに加え、力強さがはっきりと増していて、彼のステージ上での存在感の高まりが、そのままバンドの勢いにも繋がっているように感じられた。





そんな彼らの現在地を強く認識させたのが、東京ではこの日が初披露だったという最新曲の「挿入歌」。Ishidaが「これまでとは違うチャンネルを意識して作った」と語るこの曲は、音源にはBIGMAMAの東出真緒がヴァイオリンで参加し、さらにスケールを増したスタンダード感のあるポップスだ。こういう曲が生まれたのも、バンドの状況の広がりはもちろん、やはりIshidaのシンガーとしてのスケールが増してきたことが背景にあるように感じられ、イベント前に行われたIshidaとの対談でNolzyが語っていたように、いずれこの曲がホールのような大きな会場で披露されることが想起される。ステージ上での口数は多くないし、〈リアルな世界に音楽は鳴らない ドラマティックな展開なんて何もない〉と、綴られる言葉には市井の人の感覚があるが、それでもロマンティックであることは忘れずに、歌い始めるとその場の空気が一瞬で変わるIshidaは実に魅力的なフロントマンだと思う。

「バックミラー」からのライブ後半戦は再びギアを上げていき、クラップやシンガロングでオーディエンスを巻き込みながら熱量を高めていくそのステージングはバンドの確かな自信を感じさせるもの。人気曲の「Unlucky!!」ではその盛り上がりがさらにもう一段階上がって、力強くシャウトをするIshidaの姿はもはやロックシンガーのようであり、フロアを煽るKotakemoriのアジテーションも加わることで、「シティポップ」という言葉の持つ端正なイメージからはいい意味ではみ出すラブネバのロック気質を見事に表現。最後は「OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT」でオーディエンスが一斉に手を振って、まだまだ終わらない日曜の東京の夜を駆け抜けてみせた。


イベントのトリを務めたGOOD BYE APRILはサックスにTRI4THの藤田淳之介を迎えた5人編成で、「feel my hush」からライブがスタート。バンド4人がハーモニーを聴かせるイントロのゴスペルコーラスはラブネバにも通じる部分がありつつ、倉品翔が歌い始めるとやはりニューミュージック的な雰囲気にガラッと変わるのが面白い。さらにサックスのソロをフィーチャーして、ディスコファンクな「サイレンスで踊りたい」でステージを華やかに盛り上げていく。この日の3組は世代こそ近いものの、ライブバンドとしてのキャリアで言うとGOOD BYE APRILに一日の長があり、オリジナルはブレッド&バターの1974年作で、山下達郎が好んで演奏していることでも知られる「ピンク・シャドウ」のカバーにしても、巧みなキメやソロ回しを織り交ぜながら、フレッシュかつ洗練されたアンサンブルを聴かせてくれた。






MCでは大阪出身の延本文音と吉田卓史が関西弁の掛け合いで盛り上げ、倉品が「僕らはネオ・ニューミュージックというキーワードでやってるバンドなんですけど、今日の3組を繋ぐのは『ポップス』という言葉だと思う」と話すと、ピアノとサックスの音色が爽快な「夜明けの列車に飛び乗って」を披露。さらにメンバー紹介を挟んで、カッティングとリードギターの絡みが印象的な「CITY ROMANCE」でフュージョン感を高めると、「missing summer」では梅雨を通り越して、一足早い夏の訪れを感じさせる。倉品が「『Reflections』最高!」と叫んでから吉田とツインハモを聴かせ、フロントの全員がステージ前方に出て行ってセッションを聴かせる終盤の高揚感はこの日随一のものだった。

「3組で『Reflections』という素敵なタイトルのイベントができて本当に嬉しいです。今日限りじゃ勿体ないなと思いました。またこの3組で一緒にやれたら嬉しいです」という言葉に大きな拍手が送られると、最後に演奏されたのはメジャーデビュー曲の「BRAND NEW MEMORY」同様に林哲司のプロデュースによる「Love Letter」。アース・ウィンド&ファイアのようなホーンをフィーチャーしたダンスチューンで、フロアは最後まで大盛り上がり。個人的にこの曲は米米CLUBであり、「Throwback(slowjam)」同様にKANを連想させる部分もあって、以前から仲が良かったというNolzyとの親和性であり、過去と未来を繋いで2020年代のポップスを鳴らす3組の親和性が改めて感じられるものだった。

アンコールではGOOD BYE APRILのメンバーに続いて、NolzyとラブネバのIshidaもステージに登場し、イベントタイトルの基になった寺尾聰のアルバム『Reflections』に収録されている名曲「ルビーの指輪」を全員でカバーして大団円。1981年にリリースされた「ルビーの指輪」の輝きは今も色褪せることなく、これまでに3度『NHK紅白歌合戦』で披露されているように、『Reflections』の名の下に集った3組が奏でるポップスもまた、時代を超えて聴かれ続けることを願いたい。

文:金子厚武
撮影:小畑ちひろ
GOOD BYE APRIL×Nolzy×First Love is Never Returned"Reflections"(2025.5.25 GRIT at SHIBUYA )
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