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2025.05.27

今年はThe fin.・ She Her Her Hers・ VivaOla・Ålborgが登場!イギリスの音楽フェス「The Great Escape」で開催されたFRIENDSHIP.ショーケース「SSR FROM TOKYO」ライブレポート
『The Great Escape(以下TGE)』は2006年にスタートしたイギリスの音楽フェスティバル。毎年30を超える国々から450組以上の新進気鋭のアーティストたちを招いて、海辺の街ブライトンで4日間に渡って開催される。街中に散らばる大小さまざまなサイズの30のヴェニューを使用し、さながらブライトンを丸ごとフェスティバル会場にしたような規模とユニークさが特徴だ。誰よりも早く新たなお気に入りアーティストを見つけようとする熱心な音楽ファンだけではなく、年に一度の新しい才能を発掘する貴重なチャンスでもあるために大勢の音楽関係者も参加する。彼らを対象に期間中は音楽ビジネスをテーマとしたカンフェレンスやトークなどもライブと並行して数多く開かれている。今年の『TGE』は5月14日から17日に行われた。



フェスティバル内では昨年に続き、5月16日に音楽ディストリビューションサービスFRIENDSHIP.によるショーケース『SSR(SHIBUYA SOUND REVERSE)」のイギリス編『SSR FROM TOKYO』が開催された。今年はThe fin.、She Her Her Hes、VivaOla、Ålborgが古い教会の建物を利用したその名もOne Churchというヴェニューで演奏を披露。ここは教会の宗教活動以外にもさまざまなイベントにも貸し出されているスペースで、近隣のサブカルチャー好きにはお馴染みの場所だ。そんな会場を目指してブライトンの駅から歩いていくと、歩道に並んだカフェのテラス席でその日のラインナップをTGEのアプリでチェックして、今日1日どのように街中を巡ってライブを観ようかと計画を立てているグループを何組も見かけた。

開演の定刻にステージに登場したのはトップバッターのShe Her Her Hers。1000人規模の会場を含んだ中国と日本でのツアーでは全公演がソールドアウトとなり、ますます波に乗る実力派だ。最初の曲『Diagram X』ではヴァイオリンもフィーチャーし、その清涼感溢れる音は教会の大きな窓から差し込む光に満たされた空間に溶け込んでいくようだ。続く『drip』では小気味よく刻むビートと儚げな高橋啓康のヴォーカルのミスマッチが聴き手の心を捉える。見渡すと幅広い年齢層のオーディエンスは皆、身体でリズムを取って音に身を委ねている。



キーボードのとまそんが英語でのMCをそつなくこなした後は、彼らの紡ぎ出すみずみずしい音楽がさらに会場内を満たしていく。透明感に溢れながらも力強く、それでいて洗練された音はいつまでも聴いていたい心地よさで溢れている。2度目のMCでTGEの後にはマンチェスターとロンドンでもコンサートが予定されているととまそんが告げると大きな歓声と拍手が起こり、彼らの音楽が広く受け入れているのが感じられた。最後の曲『Bystanders』の演奏後にオーディエンスの一人に感想を求めると「これまで日本のアーティストを知る機会がなかったから今日ここに来てみた。新しい音との出会いがあってとても嬉しい」と微笑んだ。

続いて登場したのはアメリカ・SXSWを筆頭に、台湾やシンガポールなどの数々のフェス出演のキャリアを持つ新世代R&BシンガーのVivaOla。She Her Her Hersの清流のような音から一転した、うねりのあるサウンドが特徴だ。まずは新曲の『D65』と『Who Cares?』を披露。早々にスタンドマイクをハンドに切り替えて、解き放たれたように自由に歌う姿が印象的だ。オーディエンスはそれに合わせて身体を揺らす。


中盤に差し掛かるとスモークが立ち込める中で『GIVE MINE』を演奏。献身的な愛だけではなく見返りも求める複雑な関係を深みのある音に乗せて歌い上げた。ライヴの最後は、昨年リリースしたセカンドアルバムのラストナンバー『O .M .M(feat. Kenya Fujita)』。オリジナルではVivaOlaと同じくR&BシンガーのKenya Fujitaを迎えた、スローテンポなソウルバラードで締めくくった。

Ålborgの演奏には開始前からかなり多くのオーディエンスが集まっていた。ステージに現れたフロントパーソンでヴォーカルとアコースティックギターのMiyaは虹が描かれたトップを着用し、トロンボーンとコーラスの安田くるみの胸には小さな虹色のバッジがはめられていた。ブライトンは音楽やナイトライフなどのサブカルチャーで知られるとともに、LGBTQ+のコミュニティが数多く存在していることでも有名だ。LGBTQ+のシンボルであるレインボーカラーを身につけていることで彼女たち、そしてバンドのメンバー全員のこの街の在り方へのレスペクトが伝わってきた。一曲目の『Somebody, Somewhere』ではベースの鎌田達弥とドラムの岩方禄郎の力強いリズム、功刀源の安定感のあるギターにMiyaの透き通った歌声が重なり、安田のトロンボーンの音色が乗ると他にはないÅlborgだけの世界が広がっていく。中盤で功刀がスチールギターを取り出すと観客はさらに興味津々。演奏中に隣に立っているグループが「めちゃくちゃいいね!」と囁き合っているのが聞こえた。



ラストの曲となったアップテンポでビートの効いた『Same Page!』ではスタージの上のメンバー全員とともに観客も笑顔でいっぱいに。演奏後は大きな拍手と歓声で包まれた。隣にいたグループに感想を求めると「彼らのことは全く知らなかったけれども興味があって聴きにきた。いろいろな楽器を操っていて才能に溢れているのを感じた。今後の活躍もフォローしたい」と興奮冷めやらない様子で話してくれた。演奏後は物販にCDを求める人たちの列ができており、その中の一人は「YouTubeで見てアルバムタイトル曲の『The Way I See You』がとても好きになったところ。今日はここでライブを観られただけではなく音盤も手に入って嬉しい」と語った。

4アーティストのトリを務めたのはThe fin.。かつてイギリスを拠点に活動していた彼らにとって、今回の出演は「帰還」とも言えるものだ。その後、FUJI ROCK FESTIVALやアメリカのSXSW、中国のStrawberry Festivalなど、世界の大型フェスティバルへの参加を経て、さらなる飛躍をみせる場となった。一曲目となった『Pale Blue』ではYuto Uchinoのしなやかなヴォーカルが美しく響く。フィーチャーされたサックスが印象的だ。落ち着いた確かな演奏は、イギリスになじみあるバンドならでは。



3曲目の『Old Canvas』は午後の日差しで満たされた会場でリラックスしながら聴くのにぴったり。軽快でアップテンポな『Night Time』では踊り出すオーディエンスも。一方で『Deepest Ocean』のような複雑な音を繊細に紡いだ曲もあり、彼らの巧みさを見せつけていた。

近年はイギリスから日本へ旅行する人たちが急増し、日本文化にますます関心を抱く層が厚くなっている。そして今回改めて未知の日本のアーティストたちを知り、その音楽を聴きたいと望む音楽ファンが非常に多いことも肌で感じられた。さまざまなジャンルの4組の演奏を一度に楽しめるこのショーケースは、そんなオーディエンスの要望にダイレクトに応えるものだったに違いない。筆者自身も新たなお気に入りに出会うことができた。
今後SSRは9月28日に東京・恵比寿のLIQUIDROOMを中心とした全4会場でSSR2025本編を開催する予定だ。これらのイベントを通して日本のインディーシーンを海外で紹介するだけにとどまらず、FRIENDSHIP.がデジタル配信するアーティストをリアルに感じられる場を提供していくことを目指していく。
文:坂本みゆき
撮影:Yutaka Akiyama

2025年9月28日(日)
恵比寿LIQUIDROOM、KATA、LIQUID LOFT、Time Out Café&Diner
OPEN / START 12:30
出演アーティスト:
SPARK!!SOUND!!SHOW!!、Enfants、揺らぎ、ゆうらん船、Blume popo、ベルマインツ、くゆる、烏兔-uto and more......
チケット購入:https://eplus.jp/ssr2025/
https://t.livepocket.jp/e/0g53f
チケット発売:4月15日(火)19:00 ~
チケット券種:(前売)¥ 5,500 + 1ドリンク代別途 / (学割)¥ 4,800 + 1ドリンク代別途 / (FRIENDS!ペア)¥ 9,000 + 2ドリンク代別途
注意事項
①「学割」、「FRIENDS!ペア」は枚数限定。
②「学割」を購入の方は入場時、学生証のご提示をお願いします。
③ 未就学児入場不可、小学生以上チケット必要。
主催:HIP LAND MUSIC / FRIENDSHIP.
@friends_hipland
@friends_hipland
@FRIENDSHIP_official



フェスティバル内では昨年に続き、5月16日に音楽ディストリビューションサービスFRIENDSHIP.によるショーケース『SSR(SHIBUYA SOUND REVERSE)」のイギリス編『SSR FROM TOKYO』が開催された。今年はThe fin.、She Her Her Hes、VivaOla、Ålborgが古い教会の建物を利用したその名もOne Churchというヴェニューで演奏を披露。ここは教会の宗教活動以外にもさまざまなイベントにも貸し出されているスペースで、近隣のサブカルチャー好きにはお馴染みの場所だ。そんな会場を目指してブライトンの駅から歩いていくと、歩道に並んだカフェのテラス席でその日のラインナップをTGEのアプリでチェックして、今日1日どのように街中を巡ってライブを観ようかと計画を立てているグループを何組も見かけた。

開演の定刻にステージに登場したのはトップバッターのShe Her Her Hers。1000人規模の会場を含んだ中国と日本でのツアーでは全公演がソールドアウトとなり、ますます波に乗る実力派だ。最初の曲『Diagram X』ではヴァイオリンもフィーチャーし、その清涼感溢れる音は教会の大きな窓から差し込む光に満たされた空間に溶け込んでいくようだ。続く『drip』では小気味よく刻むビートと儚げな高橋啓康のヴォーカルのミスマッチが聴き手の心を捉える。見渡すと幅広い年齢層のオーディエンスは皆、身体でリズムを取って音に身を委ねている。



キーボードのとまそんが英語でのMCをそつなくこなした後は、彼らの紡ぎ出すみずみずしい音楽がさらに会場内を満たしていく。透明感に溢れながらも力強く、それでいて洗練された音はいつまでも聴いていたい心地よさで溢れている。2度目のMCでTGEの後にはマンチェスターとロンドンでもコンサートが予定されているととまそんが告げると大きな歓声と拍手が起こり、彼らの音楽が広く受け入れているのが感じられた。最後の曲『Bystanders』の演奏後にオーディエンスの一人に感想を求めると「これまで日本のアーティストを知る機会がなかったから今日ここに来てみた。新しい音との出会いがあってとても嬉しい」と微笑んだ。

続いて登場したのはアメリカ・SXSWを筆頭に、台湾やシンガポールなどの数々のフェス出演のキャリアを持つ新世代R&BシンガーのVivaOla。She Her Her Hersの清流のような音から一転した、うねりのあるサウンドが特徴だ。まずは新曲の『D65』と『Who Cares?』を披露。早々にスタンドマイクをハンドに切り替えて、解き放たれたように自由に歌う姿が印象的だ。オーディエンスはそれに合わせて身体を揺らす。


中盤に差し掛かるとスモークが立ち込める中で『GIVE MINE』を演奏。献身的な愛だけではなく見返りも求める複雑な関係を深みのある音に乗せて歌い上げた。ライヴの最後は、昨年リリースしたセカンドアルバムのラストナンバー『O .M .M(feat. Kenya Fujita)』。オリジナルではVivaOlaと同じくR&BシンガーのKenya Fujitaを迎えた、スローテンポなソウルバラードで締めくくった。

Ålborgの演奏には開始前からかなり多くのオーディエンスが集まっていた。ステージに現れたフロントパーソンでヴォーカルとアコースティックギターのMiyaは虹が描かれたトップを着用し、トロンボーンとコーラスの安田くるみの胸には小さな虹色のバッジがはめられていた。ブライトンは音楽やナイトライフなどのサブカルチャーで知られるとともに、LGBTQ+のコミュニティが数多く存在していることでも有名だ。LGBTQ+のシンボルであるレインボーカラーを身につけていることで彼女たち、そしてバンドのメンバー全員のこの街の在り方へのレスペクトが伝わってきた。一曲目の『Somebody, Somewhere』ではベースの鎌田達弥とドラムの岩方禄郎の力強いリズム、功刀源の安定感のあるギターにMiyaの透き通った歌声が重なり、安田のトロンボーンの音色が乗ると他にはないÅlborgだけの世界が広がっていく。中盤で功刀がスチールギターを取り出すと観客はさらに興味津々。演奏中に隣に立っているグループが「めちゃくちゃいいね!」と囁き合っているのが聞こえた。



ラストの曲となったアップテンポでビートの効いた『Same Page!』ではスタージの上のメンバー全員とともに観客も笑顔でいっぱいに。演奏後は大きな拍手と歓声で包まれた。隣にいたグループに感想を求めると「彼らのことは全く知らなかったけれども興味があって聴きにきた。いろいろな楽器を操っていて才能に溢れているのを感じた。今後の活躍もフォローしたい」と興奮冷めやらない様子で話してくれた。演奏後は物販にCDを求める人たちの列ができており、その中の一人は「YouTubeで見てアルバムタイトル曲の『The Way I See You』がとても好きになったところ。今日はここでライブを観られただけではなく音盤も手に入って嬉しい」と語った。

4アーティストのトリを務めたのはThe fin.。かつてイギリスを拠点に活動していた彼らにとって、今回の出演は「帰還」とも言えるものだ。その後、FUJI ROCK FESTIVALやアメリカのSXSW、中国のStrawberry Festivalなど、世界の大型フェスティバルへの参加を経て、さらなる飛躍をみせる場となった。一曲目となった『Pale Blue』ではYuto Uchinoのしなやかなヴォーカルが美しく響く。フィーチャーされたサックスが印象的だ。落ち着いた確かな演奏は、イギリスになじみあるバンドならでは。



3曲目の『Old Canvas』は午後の日差しで満たされた会場でリラックスしながら聴くのにぴったり。軽快でアップテンポな『Night Time』では踊り出すオーディエンスも。一方で『Deepest Ocean』のような複雑な音を繊細に紡いだ曲もあり、彼らの巧みさを見せつけていた。

近年はイギリスから日本へ旅行する人たちが急増し、日本文化にますます関心を抱く層が厚くなっている。そして今回改めて未知の日本のアーティストたちを知り、その音楽を聴きたいと望む音楽ファンが非常に多いことも肌で感じられた。さまざまなジャンルの4組の演奏を一度に楽しめるこのショーケースは、そんなオーディエンスの要望にダイレクトに応えるものだったに違いない。筆者自身も新たなお気に入りに出会うことができた。
今後SSRは9月28日に東京・恵比寿のLIQUIDROOMを中心とした全4会場でSSR2025本編を開催する予定だ。これらのイベントを通して日本のインディーシーンを海外で紹介するだけにとどまらず、FRIENDSHIP.がデジタル配信するアーティストをリアルに感じられる場を提供していくことを目指していく。
文:坂本みゆき
撮影:Yutaka Akiyama
LIVE INFORMATION
【SSR2025】SHIBUYA SOUND RIVERSE

2025年9月28日(日)
恵比寿LIQUIDROOM、KATA、LIQUID LOFT、Time Out Café&Diner
OPEN / START 12:30
出演アーティスト:
SPARK!!SOUND!!SHOW!!、Enfants、揺らぎ、ゆうらん船、Blume popo、ベルマインツ、くゆる、烏兔-uto and more......
チケット購入:https://eplus.jp/ssr2025/
https://t.livepocket.jp/e/0g53f
チケット発売:4月15日(火)19:00 ~
チケット券種:(前売)¥ 5,500 + 1ドリンク代別途 / (学割)¥ 4,800 + 1ドリンク代別途 / (FRIENDS!ペア)¥ 9,000 + 2ドリンク代別途
注意事項
①「学割」、「FRIENDS!ペア」は枚数限定。
②「学割」を購入の方は入場時、学生証のご提示をお願いします。
③ 未就学児入場不可、小学生以上チケット必要。
主催:HIP LAND MUSIC / FRIENDSHIP.
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