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2025.03.02
New Release Digest Part 1
みさと:2月24日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全24作品の中から、Part-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。さあ、DURANがリリースです。
金子:DURANさんは2024年も大活躍で、ご自身の長いツアーがあって ファイナルをLIQUIDROOMで終えたり、B'zの稲葉さんのソロツアーに参加したり、年末には藤井風さんの紅白の中継にもさらっと出演していたりと、本当にいろんなところでお見かけしました。
で、DURANさんは日本とフィリピンにルーツがあるんですけど、去年の11月には第2の故郷とも言えるフィリピンでツアーを行っていて、そのときにフィリピンの伝説のロックバンド・JUAN DELA CRUZの名曲をカバーして、その曲が今回リリースされると。JUAN DELA CRUZは僕も今回初めて知ったんですけど、主に70年代に活動していて、フィリピンのロックシーンをすごく盛り上げたバンドだったみたいで。
最近はアジアのいろんな国の音楽が盛り上がっていて、日本とも交流がどんどん盛んになっているけど、フィリピンにも独自のシーンがあって、今のフィリピンのシーンがどうなってるのかも気になるような、DURANさんを通じてそれが再発見されていくのも面白いなと思いました。
みさと:DURANさんを通じていろんな国のロックを知れるというか、触れられるというか、広い意味でのロックスターじゃないですか。彼はギターを持ってさえすれば、どの国でもスターになれるなという。もちろん今回はルーツがあるフィリピンで、というところでのカバーの選曲だったと思うけど、どの国でも絶対にスターになれちゃう、その技術とパッションがありますよね。2025年も期待です。そして、穴熊がアルバムリリースです。
金子:タイトルが『光』ということで、そのタイトルトラックであり、ラストナンバーがこの「光」という曲なんですけど、出だしの歌詞で僕は"おっ"となって。〈僕が初めてギターを弾いた時 それはギターじゃなくてベースだった 僕が初めてロックを聴いた時 それはロックじゃなくて光だった〉っていう、それに結構グッと掴まれました。楽器をやってる人とか音楽好きな人には当たり前っちゃ当たり前なんだけど、結構ギターとベースの区別がつかないっていう人は多くて。
みさと:最初、つかなかった。
金子:結構あるあるですよね。ギターは弦が6本で、ベースは弦が4本で、低い音が出るわけですけど、フォルム的にも似てるので、意外とそこを知らない人が多いから、それが歌詞になってるのがまずいいなと思ったし、その後の〈それはロックじゃなくて光だった〉からさらに〈悲しいだけの光だった〉という歌詞が続くんですけど、それがまさに秋月さんにとってのロック、音楽というもののあり方で、この感触がアルバム全編の通底した感覚になってる。ちょっと物悲しいけれども、やっぱり希望なんだ、という。その感覚が非常に素敵だなと思いました。
みさと:Keishi Tanakaさんのときとちょっと似てるんですけど、日記を読ませてもらってるような、そんな感覚になれる言葉が並んでいて。音楽で自分を見せたい、というスタートではなくて、音楽でしか自分の気持ちを消化できなかった、光にすがるような気持ちで音楽を始められたんだなと。彼の人生を見させてもらった楽曲であり、アルバム全体にそういった言葉が散りばめられているので、とても丁寧に作られたんだろうな。制作期間はもしかしたら1年ぐらいかもしれないけど、きっと何十年分、秋月さんの人生が詰まってるんだろうなと想像できるアルバムでした。そんなPart-1からどうしましょう。
金子:Broken Kangarooの新曲を紹介しようと思います。
みさと:ちょうどお誕生日のタイミングでアルバムリリースですよね。おめでとうございます!
金子:22歳になったということで、まだ若いけど、でもBroken Kangarooの場合は10代から活動してるから、キャリアを重ねてきたんだなというふうにも思いますね。アルバムタイトルが『Sirius』で、恒星、星の光みたいなところが伝わってくるタイトルなので、さっきの穴熊ともちょっと通じる部分もありつつ。
みさと:確かに。
金子:ご本人のコメントで、"僕にとって音楽とはいつか自分と誰かを愛せるようになる日までの冒険です。その冒険の中で描きたいのは人と人との間で生まれる愛そのものです。ただ個人的な感情だけでなく、愛が持つ力やその存在そのものを見つめることをテーマにしています"と。この"愛"という言葉と"光"という言葉がニアリーイコールな感じがします。
「万有引力」はアルバムの一番最後に収められてる曲で、喪失を感じさせる歌詞でもあるんだけど、でも次元を超えても愛が存在するという、そこにたどり着くようなスケールの大きな楽曲になっていて。これは20代になったBroken Kangarooだからこそ描くことのできた、壮大な心象風景みたいなもので、一つの達成だったなという感じがしました。
みさと:宇宙の摂理であったり、すごく哲学的な切り取りもできるような歌詞、世界観になっていて。1番だけ、サビだけ、で切り取られる現代において、一曲丸々聴いて完成し、さらに歌詞が深まるというところがすごく反映されている楽曲だなとも感じています。"大丈夫"という言葉が3回登場するんだけど、それぞれに意味合いが違う、"大丈夫"のニュアンスが違ってくる、というのは日本語としての美しさも感じるし、そういったストーリー性を持たせられる作家力も際だった一曲だったと思います。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。さあ、福岡のMcGradyがリリースです。
金子:3月に入りましたが、もうちょい冬が続くでしょうから、冬らしい曲を出してくれているのでピックアップしようかなと。
みさと:お家へ帰ろう〜♪ ポタージュを飲もう〜♪
金子:的なね(笑)。まさにスープの温かみを感じさせるような曲になっていて、McGradyは3人組なわけですけど、今回の曲はラジオにも来てくれたボーカルのソシロくんとギターのミノリくん2人で作っていて。アコースティックでのライブもやってるって話だったし、こういうのが作れるのは強みにもなってる気がする。シンプルだからこそ、ソシロくんの歌、ミノリくんのギターの良さがダイレクトに伝わってくる楽曲になっていて、まさに冬にぴったり。家の中で温まりながら聴くのにぴったりな曲かなと思います。
みさと:ですね。ゆらめくサイケっぽいギターと甘い歌声という対比的な2つの魅力が詰まっていて、ド真ん中R&B好きの方にも刺さりそうだし、2度美味しい、3度美味しい、そんな一曲になってたかなと思います。続いて、shew。
金子:shewさんはギタリスト、コンポーザーとして様々なアーティストのライブサポートや楽曲提供を行いながら、2023年にソロアーティストとしての活動をスタートした方で、クラブミュージックやAOR を基調としたサウンドとシニカルな歌詞からなる楽曲が特徴。ホームページを覗いたらアニメ系の楽曲とかも手がけているみたいで、だからこそのプロダクションの洗練された感じはなるほどと思いました。
今回の曲もディスコとかを基調としつつ、ちゃんと現代的なダンストラックに仕上げていて、レベル高いなあと思って。あとタイトルが「1990」で、ご本人のコメントによると、"ミュージシャンになってからの憧れていたことの一つに自分の生まれ年をタイトルにした曲を書くというものがあり、今回はそれを形にした楽曲"と。
みさと:ワイン職人みたいですね(笑)。
金子:あはは。年の名前の名曲ってたくさんあって、僕は1979年生まれなんですけど、The Smashing Pumpkinsに...。
みさと:スマパン!
金子:「1979」がありまして。正直に言うと、スマパン自体にそこまで強い思い入れはないんですけど、でも「1979」という曲自体にはやっぱり思い入れがあって。オルタナ世代だなあと感じさせたりとか、年数の曲って印象的ではあるんですよね。
みさと:そうやって1990年生まれの方たちがこの曲を聴いて、さらにはその90年代の当時を楽しめるような大人世代も聴けるという。全世代に刺さるような一曲になりましたよね。いい意味で、その当時の空気感を知らないことがいい結果になっている。現代感というか、最新楽曲だなという落とし所が素晴らしかったですね。そんなPart-2から、どうしましょう?
金子:タロの新曲を紹介しようと思います。
みさと:めちゃめちゃかっこよかったです。
金子:タロはFRIENDSHIP.からのリリースは初めてなんですけど、ボーカル・ギターのmmm(ミーマイモー)を核としたアンサンブル、バンドということで。mmmはインディー系の音楽が好きな人だと知ってる人も多いであろう名前で、僕からするとシンガーソングライター的なイメージが強かったんですけど、タロに関してはがっつりバンドで。
しかも、サポートメンバーが豪華で、シンセがエマーソン北村さん、シアターブルックとかでも長く活動されている方だったり、ドラムの菅沼雄太さんは坂本慎太郎さんのバンドだったり、FRIENDSHIP.的には阿部芙蓉美さんのバンドだったりにも参加されているという、凄腕たちががっちり固めていて、歌もサウンドも素晴らしい楽曲になっています。「BOO!」に関しては、コメントに"エマーソン北村さんのルーツミュージックを解釈して作られたニューウェーブ"みたいに書いてあって、確かにその感じもするし、ポストパンクというふうにも言える気がする。ギターの音がね、鉄系の。
みさと:鉄ですね(笑)。
金子:鉄系のギターの音が鳴っていて、その感じはすごくポストパンクっぽい雰囲気。mmmのボーカルも曲調に合わせてアグレッシブで、すごくかっこいい。さっきも言った通り、僕はもうちょっとシンガーソングライター的なイメージがあったんだけど、こういうアグレッシブな曲を歌っても、すごくかっこいいんだな、というのを改めて思わされました。今回4曲入りのEPで、4曲それぞれが違ったテイストの楽曲にもなっていて、これはかっこいいバンドが新しく生まれたなと感じました。
みさと:2025年、今のところトップ10に入るくらい心ざわついたバンドに出会えたなという感じがしていて。エマーソン北村さんと菅沼雄太さんは自分たちの魅力を全面に出しながらもフロントに立つ方をさらに輝かせられる、そんな経験と魅力を持っていらっしゃるプレイヤーだなと改めて感じたところと、そういった凄腕たちに引けを取らないmmmさんのコケティッシュな歌唱方法とあの声というのは特大の武器ですよね。3人が重なるとこんな感じになるんだっていう。全然違うことを過去やられてきた3人だけど、3人で合わさるとここが着地点なんだなぁと。どこまでも活躍されていくであろう、タロ、カタカナでタロというバンドです。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。Takeshi Kuriharaさん、アルバムリリースです。
金子:これまでもコンスタントにリリースがありましたけど、ついにアルバムということで。今回は作編曲・録音・ミックス・マスタリングまで全てKuriharaさんが一人で作ったアルバム。もちろんサックスというのもありつつ、アナログシンセだったり、電子音との組み合わせによって楽曲が作られていて、触れるような質感の音をイメージして作りましたと。
さらにはコメントとして"特に役に立たない置物のような音で、メッセージがガンガン入ってくるような音楽とは違います。なんとなくその曲線をぼんやり眺めてしまうような、ただそこにあるだけ"と。エリック・サティの提唱した「家具の音楽」というものがありますけど、その現代版というか、それのアンビエント・ジャズバージョンというか。
みさと:本当ですね。エリック・サティに通じる空間演出というか、芸術的なところが秀でた一曲になっているかなというのは感じていて。サックスの音色の太くて強くて芯が通ってるというのはKuriharaさんの性格というか、人柄にもマッチするところではあるんですけど、いろんな方のサポートをされていらっしゃることもあって、ご自身がセンターに立つということよりも、今いる場所を最高の場所にできる人だなという。全体を俯瞰して見たときに、ここに必要な音をここに置く、みたいな感覚が秀でている方なんじゃないかなと改めて感じたアルバムでした。続いて、超☆社会的サンダル、こちらもEPですね。
金子:超☆社会的サンダルは前にリリースした「可愛いユナちゃん」がかなり聴かれていて。
みさと:すごい数ですよね。
金子:ミュージックビデオは200万回再生を突破していると。より勢いが増している中でのEPリリースという感じですけど、こういう病む感じとか痛みみたいな感覚をポップに変換できる人たちというのは現代的な表現者だなという感じがします。
去年11月にオニザワマシロさんの生誕祭を渋谷クアトロでやったときに大森靖子さんがゲストで出てたりとか、4月から始まる全国ツアーでは東京初期衝動がゲストで出る日があったりとか、そういう人たちにも通じるような、現代の一側面を体現するバンドだなという感じは、今回のEPからも改めて伝わってきました。
みさと:今の一側面がだいぶニッチなところなんだけど、確実にこの世に存在する人に刺さっているというか。
金子:結構、拡大してる気がする。
みさと:そうですね。幸せの象徴として"君といつかフランス料理を毎日食べたい"という歌詞があったんですけど、その盲目な感じがすごくいいなと思って。幸せになっても、フランス料理は毎日食べないじゃないですか。お金があったとしても。嘘つかれてるのもこの主人公はわかってるんですよ。だけど、それでも君が好きだったっていうふうに言い切っている感じとか、ワードとして「富士そば」とか「パチンコ」とか「小田急線で急行乗ってる」とか、そういった情景が見えることで、"歌舞伎町での恋愛かな?"とかそういったところまで想像できるこのリアリティっていうのは、まさに拡大している一側面の人たちにぐっさぐさに刺さる世界観だなと思って。新宿で聴きたいですね。そんなPart-3からどうしましょう。
金子:エスキベルの新曲を紹介しようと思います。
みさと:アルバムになります。
金子:この前ポッドキャストでちらっと喋った、キタニタツヤくんが最近オルタナシーンに注目しててという話で、Xで挙げてたバンドの中に雪国とかと一緒にエスキベルも入っていて、注目を浴びている中でのアルバムリリースになります。少し前のエスキベルはもうちょっとオルタナ色が強い、歪んだバンドサウンドみたいなイメージだった時期もあったと思うんですけど、アコースティックだったり、シンセを使ったりして、より歌が真ん中にある音楽性に変化してきている印象です。
ちょっと前にリリースされていた、えんぷていの奥中くんをフィーチャリングした楽曲「Little Easier(feat. 奥中康一郎)」もまさにその感じがあったし、今回のステレオガールの毛利安寿さんをフィーチャリングした「feelgrey(feat.毛利安寿)」に関しても、基調はアコースティックになっていて、その中で男女の歌が寄り添ったり離れたりしながら情景を描き出す。そうなってくると、ボーカルの石井くんのちょっと男臭い声が改めて魅力的だなということが伝わってくる。
一方で、エンジニアが雪国とかも手がけている、前も名前を挙げていたかなと思うんですけど、Kensei Ogataさん、彼が関わっていることによって、サウンドの広がりみたいなものも生まれているし、新たなエスキベルの魅力を見せてくれた作品だったなと思います。
みさと:今からお送りする「feelgrey(feat.毛利安寿)」で〈この距離がいいんだろう〉という歌詞が出てくるんですけど、まさにそのサウンド感で曲とリスナーの距離であったりとか、アコースティックだからこそ感じられる近い距離感であったり、ライブハウスも小箱だからこそ届けられる息遣いや汗や視線、その全ての距離感とか、いろんな距離が見えてくるなという楽曲であり、エスキベルの今のムードが伝わってきて。リスナーの今の立ち位置、この距離だから何を得られるのか、何を感じられるのか、みたいなところが楽しめる曲になってるかなというのも思いました。
番組の後半はPablo Haikuがゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武の2人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10