SENSA

2024.06.27

雪国「pothos」──終わらない自分探しの旅に寄り添う純白の光

雪国「pothos」──終わらない自分探しの旅に寄り添う純白の光

2023年結成、2003年生まれの3人で東京を中心に活動する雪国の1stフルアルバム。結成から1年、しかも若いメンバーが歌い鳴らしている初々しさや繊細さはあるものの、それ以上に、何十年も脈々と受け継がれてきたインディロックの懐かしさや、様々な経験を重ねてきたうえで宿る達観した姿勢を感じる。しかも、東京で活動しているのに"雪国"?という謎を納得させる、都会の凍てついた心と雪国の体感的な寒さをあわせ持つ世界観や、都会には似合わぬ澄んだ視線で雪国を見つめるような言葉と音色もあふれ出てくる。2024年のロックシーンに降った季節はずれの純白の雪、もしくは、カラフルな色彩のなかで凛と咲く真っ白な花のような、奇跡を感じさせる一枚だ。

「今回の作品は、雪国にとって自分探しのようなものでした」──そうセルフライナーノーツには書かれているが、リスナーにとっても自分探しのきっかけになるようなキーワードや、本能や記憶を撫でる手触りを感じる演奏が、今作には封じ込められている。特にインディロックにルーツを持つリスナーなら、若者に限らず、幅広い年代がグッときたり、立ち止まったりしてしまうはず。全15曲収録というボリューム感だが、激しい起伏があるわけではなく、同じ温度感のなかでレイヤーを描くように変化していくので、空気や水のようにするすると心身に入ってくる(それでいて5分超えの壮大な楽曲も多いところも秀逸)。また、目に焼き付いたニュースや風景、心境を物語へと昇華したような歌詞は、ポエティックでありながら、私たちの日々の延長線上にあるものと捉えられるので、日記帳をめくるように読み解くことができる。〈歌〉など、音楽にまつわる言葉がふんだんに盛り込まれているところも、他人事ではないリアルを感じられていい。

「ゲルニカ」というタイトル、ビートルズを思わせる旋律という、偉人たちの意志を受け継いでいく姿勢と共に〈僕たちも死んでいく/命知らずの戦いの意味を教えて〉と歌うラストナンバーの余韻が延々と続く。これからの彼らが、雪明かりのように時代の光となって成長していくことを願わずにはいられない。

文:高橋美穂



RELEASE INFORMATION

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雪国「pothos」
2024年6月5日(水)
Format:Digital
Label:Pothos Records

Track:
1. 本当の静寂
2. あけぼの
3. ポトス 
4. 二つの朝
5. 東京
6. ステラ
7. 夕立
8. 消失点
9. 樹海
10. 真夜中
11. 素直な君は
12. 火に行く彼女
13. 帰り道
14. 海を忘れて
15. ゲルニカ

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LIVE INFORMATION

Schizo vol.3
2024年6月30日(日)
下北沢SPREAD
OPEN / START : 18:30 / 19:00
DOOR : ¥3,000 (+1D代)
U23 : ¥2,000 (+1D代)

出演 :
雪国
くぐり
ゆうさり+椿三期&綿貫雪

Schizo vol.4
2024年7月11日(木)
下北沢LIVE HAUS
OPEN / START : 18:00 / 18:30
DOOR : ¥3,000 (+1D代)
U23 : ¥2,000 (+1D代)

出演 :
雪国
Ando Yuta (Ken is my friend)
Ukas
吉村晶

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オフィシャルサイト
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