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2023.03.30
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色彩豊かな4組のサウンドが交錯した一夜『FRIENDSHIP. Presents SHINSAIBASHI SOUND RIVERSE vol.3』@心斎橋Pangea
大阪の人気ラジオ局FM802と、音楽ディストリビューションサービスFRIENDSHIP.がタッグを組んで主催する『FRIENDSHIP. Presents SHINSAIBASHI SOUND RIVERSE(以下、SSR)』のvol.3が、3月4日(土)に行われた。昨年9月のvol.1、12月のvol.2を経て、今回は初のサーキット形式での開催。心斎橋ANIMAとPangeaの2会場に全8組のアーティストが出演した。今回出演のアーティストには関西出身者が多く(8組中6組)、またPangeaは4組中3組が弾き語りというラインナップ。オーディエンスは皆、徒歩約4分の距離にあるANIMAとPangeaを行き来しつつ、音楽を楽しんでいた。そんな『SSR vol.3』の幕開けはPangeaから。今回もFM802 DJの土井コマキ(『MIDNIGHT GARAGE(毎週月曜24〜27:00)』担当)と板東さえか(『Poppin'FLAG!!!(毎週水曜24〜27:00)』担当)がMCをつとめ、Pangeaのステージで挨拶をした後、「vol.3スタートしましょう! 楽しんで!」と高らかに開幕を宣言した。本記事ではPangeaの様子をレポートする。
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トップバッターはWuinguin。インディポップグループ・cescoのボーカルとソングライティングを担当していたuiのソロプロジェクトで、セルフプロデュース&宅録で楽曲制作を行うアーティスト。ブルーとオレンジで薄暗く染められたステージに現れた彼女が、しばしの静寂の後「Voiceless」を歌い始めると、スモーキーで芯のある歌声が美しく響き渡った。
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3月にリリースされた新曲「Gloria」に続けては「Elevator」を披露。エレキギターとアコースティックギターを使い分けながら、静かに楽曲を紡いでゆく。彼女のライブは空気感がとても印象的だ。間近に感じる息遣いや、凛とした佇まいから発せられるオーラとギターの音、憂いを含んで変幻自在にゆらめく歌声が空気を動かし、様々な表情を見せる。曲間のチューニングタイム(静寂)を長めに取ることで、1曲ごとの存在感が増しているようにも感じられた。
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また、ライブ全編を通して暗めに抑えられた照明は自身のブランディングによるもの。はっきりと顔を確認できないほどだが、その暗さが聴く者の集中力をより一層高めていた。最後の「It's OK」は、ライブ1週間前に亡くなった愛犬に向けて歌った歌。聖歌隊出身の彼女ならではの高音の置き方が本当に綺麗で、悲しみと慈しみが同居する美しい時間となった。しっかりと引き込む歌唱力で、全6曲を歌い上げたWuinguin。堂々たる存在感はさすがの一言だった。
兵庫県在住のシンガーソングライター・みらんは、みずみずしく四季の風を吹かせて会場を魅了した。「好きなように」からライブはスタート。ゆったりとギターをつま弾きながら、緩急のついた豊穣な歌声を響かせてゆく。〈デュバデュバ シュービ ドュビドュバ〉というスキャットがロマンティックさを醸し出す。〈春は手持ち無沙汰〉で始まる「意地と寂しさと」では、柔らかな空気が会場を満たしていった。
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MCでは「日本語の曲は季語がたくさんあって、それがすごく良いなと思うし、どの季節も味方につけられたら楽しいなと思って。今日はこの後、夏の歌、秋の歌、冬の歌を歌おうと思います」と話し、「夏の僕にも」「そこで僕はミルクを思い浮かべて」「レモンの木」と、季節にちなんだ楽曲を続けて披露した。ラフな雰囲気の中に大人っぽさが見え隠れする自由度の高い歌い方と、日常から抽出した、馴染み深いのに特別に響く言葉が軽やかに弾む。こんなにもハミングや口笛がラブリーなアーティストがいるだろうか。
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常々弾き語りが大好きと話すみらんだが、この日も「歌うのが楽しくて仕方ない!」といった様子が伝わってきた。「私どこまでも歌えるなあ。こんな気持ちにさせていただいてありがとうございます」とはにかみながら挨拶し、最後に「成り立つ人」でライブを締め括った。一度見たら忘れられない、歌と言葉の魔法にかかった素敵な30分だった。
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「ギター1本での弾き語り」といっても、Pangeaに登場した3人は三者三様の雰囲気を纏っていた。東京出身のシンガーソングライター・優河は、大阪でのライブは昨年の年末以来。ギターを手にステージに立ち、「やわらかな夜」を歌い始めると、一瞬で耳も目も釘付けになってしまった。少し高い位置で抱えられ、大切そうに奏でられるギター。丸く柔らかで包容力のある歌声。浄化されるようにうっとりと身を任せるオーディエンス。さらに「さざ波よ」では、Pangeaの壁を突き抜けてしまいそうなほどの伸びやかなボーカルに、全身を飲み込まれる。清涼感とゆらぎが体と心に沁み渡り、思わずトリップする感覚に陥った。壮大なサウンドスケープを描き出した「手紙」は神々しく、ディーバ感すら感じさせた。まさに歌そのものが癒しのエネルギーを放っている。
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MCではライブハウスへの出演が久しぶりでドキドキすると語り「楽しいですよ。皆さんどうですか?」と問うと、フロアからは大きな拍手が贈られた。ラスト2曲は、脆く不確かな人間関係を歌った「people」、大事な人に書いたドラマ主題歌の「灯火」を演奏。羽が生えて飛んでいきそうなほどの幸福感に満たされた贅沢な時間だった。夏には盟友「魔法バンド」とともに『FUJI ROCK FESTIVAL'23』への出演も控えている優河。彼女の音楽がひとりでも多くの人の元に届くことを願ってやまない。
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Pangeaのラストアクトは、京都出身のアーティストKENT VALLEY。1月に初出演した台湾のフェスで「開花した」とのことでMCの土井から「仕上がってると思います」と期待たっぷりに呼び込まれる。この日はバンドメンバーにSATOSHI YOSHIOKA(Key/Sawa Angstrom)、児玉真吏奈(Syn&Cho)、吉居大輝(Gt/幽体コミュニケーションズ、toggle)、senoo ricky(Dr)を迎えた5人編成。1曲目の「Blueworks」から爽やかにライブをスタートした彼ら。KENT VALLEYの温かい歌声が心地良く、耳を喜ばせる。
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続いてボサノヴァ調の「Morocco」で会場を異国に誘い、リズムやフレーズが複雑に絡み合う「Hop Along」でじわじわと盛り上げる。YOSHIOKAはフランス発のスタートアップ企業「Embodme」のライブパフォーマンス向けコントローラー「Erae Touch」を器用に操り、サウンドに多様性を与える。総じてポジティブな雰囲気が会場を駆け巡り、メンバーも嬉しそうな表情を滲ませた。
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1月に配信リリースされた新曲「HALL-ROLL」では児玉がタンバリンを持ち、呼応したフロアはクラップの嵐に。バンドの生音と電子サウンドが巧妙に混ざり合うアンサンブルが素晴らしく、彼らの調子の良さを感じさせた。MCでは「大トリですよ! すごく嬉しいです。ありがとうございます」と喜び、ボーカルハーモニーがチルタイムをもたらした「In Heaven」を経て、ラストナンバー「Clear Up」へ。メンバー編成ゆえ、結果的にアルバム『Momentary Note』(2020年)からの楽曲が多めに披露されたが、立体的なサウンドでバッチリまとめ上げたKENT VALLEY。これからの進化がますます楽しみだ。
こうしてPangeaでのアクトは大団円で終了した。それぞれ全く異なるサウンドとライブパフォーマンスで潤わせてくれた4組に、心からの拍手を贈りたい。この後オーディエンスは、大トリの揺らぎのライブを見にANIMAに走っていた。次回のSSRはまだ未定だが、続報を楽しみに待つことにしよう。
文:久保田瑛理
撮影:キシノユイ
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2023年6月3日(土)
渋谷STREAM HALL/SPACE ODD/CIRCUS TOKYO/IKEBE SHIBUYA/Creator Collaboration Space/FS.
OPEN/START 13:00
■出演アーティスト第1弾発表
Fake Creators(LITE、DÉ DÉ MOUSE)
NIKO NIKO TAN TAN
ODD Foot Works
odol
TENDOUJI
The fin.
The Wisely Brothers
VivaOla
Wez Atlas
下津光史(踊ってばかりの国)
INFO:https://soundriverse.com
■ TICKET
STANDING
前売り ¥5,800(Drink代別)
学割 ¥4,800(Drink代別)
※学割チケットは高校生・専門学校生・大学生を対象とします。
入場時に学生証の提示が必要です。
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空間の全てをプロデュースする、Wuinguinの佇まいと表現力
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トップバッターはWuinguin。インディポップグループ・cescoのボーカルとソングライティングを担当していたuiのソロプロジェクトで、セルフプロデュース&宅録で楽曲制作を行うアーティスト。ブルーとオレンジで薄暗く染められたステージに現れた彼女が、しばしの静寂の後「Voiceless」を歌い始めると、スモーキーで芯のある歌声が美しく響き渡った。
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3月にリリースされた新曲「Gloria」に続けては「Elevator」を披露。エレキギターとアコースティックギターを使い分けながら、静かに楽曲を紡いでゆく。彼女のライブは空気感がとても印象的だ。間近に感じる息遣いや、凛とした佇まいから発せられるオーラとギターの音、憂いを含んで変幻自在にゆらめく歌声が空気を動かし、様々な表情を見せる。曲間のチューニングタイム(静寂)を長めに取ることで、1曲ごとの存在感が増しているようにも感じられた。
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また、ライブ全編を通して暗めに抑えられた照明は自身のブランディングによるもの。はっきりと顔を確認できないほどだが、その暗さが聴く者の集中力をより一層高めていた。最後の「It's OK」は、ライブ1週間前に亡くなった愛犬に向けて歌った歌。聖歌隊出身の彼女ならではの高音の置き方が本当に綺麗で、悲しみと慈しみが同居する美しい時間となった。しっかりと引き込む歌唱力で、全6曲を歌い上げたWuinguin。堂々たる存在感はさすがの一言だった。
春夏秋冬をまばゆくラブリーに歌い上げた、みらん
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MCでは「日本語の曲は季語がたくさんあって、それがすごく良いなと思うし、どの季節も味方につけられたら楽しいなと思って。今日はこの後、夏の歌、秋の歌、冬の歌を歌おうと思います」と話し、「夏の僕にも」「そこで僕はミルクを思い浮かべて」「レモンの木」と、季節にちなんだ楽曲を続けて披露した。ラフな雰囲気の中に大人っぽさが見え隠れする自由度の高い歌い方と、日常から抽出した、馴染み深いのに特別に響く言葉が軽やかに弾む。こんなにもハミングや口笛がラブリーなアーティストがいるだろうか。
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常々弾き語りが大好きと話すみらんだが、この日も「歌うのが楽しくて仕方ない!」といった様子が伝わってきた。「私どこまでも歌えるなあ。こんな気持ちにさせていただいてありがとうございます」とはにかみながら挨拶し、最後に「成り立つ人」でライブを締め括った。一度見たら忘れられない、歌と言葉の魔法にかかった素敵な30分だった。
癒しのエネルギーで大らかに包み込んだ、優河の歌声
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「ギター1本での弾き語り」といっても、Pangeaに登場した3人は三者三様の雰囲気を纏っていた。東京出身のシンガーソングライター・優河は、大阪でのライブは昨年の年末以来。ギターを手にステージに立ち、「やわらかな夜」を歌い始めると、一瞬で耳も目も釘付けになってしまった。少し高い位置で抱えられ、大切そうに奏でられるギター。丸く柔らかで包容力のある歌声。浄化されるようにうっとりと身を任せるオーディエンス。さらに「さざ波よ」では、Pangeaの壁を突き抜けてしまいそうなほどの伸びやかなボーカルに、全身を飲み込まれる。清涼感とゆらぎが体と心に沁み渡り、思わずトリップする感覚に陥った。壮大なサウンドスケープを描き出した「手紙」は神々しく、ディーバ感すら感じさせた。まさに歌そのものが癒しのエネルギーを放っている。
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MCではライブハウスへの出演が久しぶりでドキドキすると語り「楽しいですよ。皆さんどうですか?」と問うと、フロアからは大きな拍手が贈られた。ラスト2曲は、脆く不確かな人間関係を歌った「people」、大事な人に書いたドラマ主題歌の「灯火」を演奏。羽が生えて飛んでいきそうなほどの幸福感に満たされた贅沢な時間だった。夏には盟友「魔法バンド」とともに『FUJI ROCK FESTIVAL'23』への出演も控えている優河。彼女の音楽がひとりでも多くの人の元に届くことを願ってやまない。
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立体的なサウンドでバンドの現在地を提示した、KENT VALLEY
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Pangeaのラストアクトは、京都出身のアーティストKENT VALLEY。1月に初出演した台湾のフェスで「開花した」とのことでMCの土井から「仕上がってると思います」と期待たっぷりに呼び込まれる。この日はバンドメンバーにSATOSHI YOSHIOKA(Key/Sawa Angstrom)、児玉真吏奈(Syn&Cho)、吉居大輝(Gt/幽体コミュニケーションズ、toggle)、senoo ricky(Dr)を迎えた5人編成。1曲目の「Blueworks」から爽やかにライブをスタートした彼ら。KENT VALLEYの温かい歌声が心地良く、耳を喜ばせる。
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続いてボサノヴァ調の「Morocco」で会場を異国に誘い、リズムやフレーズが複雑に絡み合う「Hop Along」でじわじわと盛り上げる。YOSHIOKAはフランス発のスタートアップ企業「Embodme」のライブパフォーマンス向けコントローラー「Erae Touch」を器用に操り、サウンドに多様性を与える。総じてポジティブな雰囲気が会場を駆け巡り、メンバーも嬉しそうな表情を滲ませた。
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1月に配信リリースされた新曲「HALL-ROLL」では児玉がタンバリンを持ち、呼応したフロアはクラップの嵐に。バンドの生音と電子サウンドが巧妙に混ざり合うアンサンブルが素晴らしく、彼らの調子の良さを感じさせた。MCでは「大トリですよ! すごく嬉しいです。ありがとうございます」と喜び、ボーカルハーモニーがチルタイムをもたらした「In Heaven」を経て、ラストナンバー「Clear Up」へ。メンバー編成ゆえ、結果的にアルバム『Momentary Note』(2020年)からの楽曲が多めに披露されたが、立体的なサウンドでバッチリまとめ上げたKENT VALLEY。これからの進化がますます楽しみだ。
こうしてPangeaでのアクトは大団円で終了した。それぞれ全く異なるサウンドとライブパフォーマンスで潤わせてくれた4組に、心からの拍手を贈りたい。この後オーディエンスは、大トリの揺らぎのライブを見にANIMAに走っていた。次回のSSRはまだ未定だが、続報を楽しみに待つことにしよう。
文:久保田瑛理
撮影:キシノユイ
LIVE INFORMATION
SHIBUYA SOUND RIVERSE 2023
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2023年6月3日(土)
渋谷STREAM HALL/SPACE ODD/CIRCUS TOKYO/IKEBE SHIBUYA/Creator Collaboration Space/FS.
OPEN/START 13:00
■出演アーティスト第1弾発表
Fake Creators(LITE、DÉ DÉ MOUSE)
NIKO NIKO TAN TAN
ODD Foot Works
odol
TENDOUJI
The fin.
The Wisely Brothers
VivaOla
Wez Atlas
下津光史(踊ってばかりの国)
INFO:https://soundriverse.com
■ TICKET
STANDING
前売り ¥5,800(Drink代別)
学割 ¥4,800(Drink代別)
※学割チケットは高校生・専門学校生・大学生を対象とします。
入場時に学生証の提示が必要です。
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