SENSA

2023.03.30

「オルタナティブ」を体現する4バンドがそれぞれの方法論で音を鳴らした『FRIENDSHIP. Presents SHINSAIBASHI SOUND RIVERSE vol.3』@心斎橋ANIMA

「オルタナティブ」を体現する4バンドがそれぞれの方法論で音を鳴らした『FRIENDSHIP. Presents SHINSAIBASHI SOUND RIVERSE vol.3』@心斎橋ANIMA

3回目の開催にして、初の2会場同時開催となったFRIENDSHIP.とFM802によるライブイベント『SHINSAIBASHI SOUND RIVERSE vol.3』。弾き語りを軸にする魅力的なシンガーソングライターが揃ったPangeaに対して、ANIMAでは「オルタナティブ」を体現するバンドが4組並び、それぞれの方法論で音を鳴らしてみせた。

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トップバッターは約20年のキャリアを数え、京都インディシーンの顔役と言っても過言ではないバンドとなったスーパーノア。ライブは曲タイトル通りのミラーボールが輝く中、「ミラーボール」でゆったりとスタートしていく。淡々としていながらも一癖あるひねくれたリズムとコード進行に乗って、ギターやエレピがソロを回しながら進んでいき、途中で2本のギターがハモりを聴かせつつ、反復でジワジワとサイケに盛り上がっていくのはWILCO譲りの気持ちよさ。ラストになるとドラムがTHE WHOかPAVEMENTかといった手数の多い前のめりなプレイで盛り上げて、一気に場を掌握していく。

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ここからは1月にリリースした5年ぶりの新作『ぬくもりはたしかに』の楽曲を披露。各楽器がそれぞれの拍子を刻みながら、ポリリズムを基調に進む「Something You Know」や「午前中のコップ」は相当に構築的だが、決して頭でっかちにはならず、ちゃんとライブ感を伴っているのが素晴らしい。シンプルに刻むベースと音数を絞ったドラムの組み合わせが抑制されたグルーヴを生む「Something You Know」は徐々にダイナミズムを増し、初期のDIRTY PROJECTORSのような暴力性を感じさせる瞬間も非常にスリリングだ。

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複雑なリズムの曲でも心地よく聴くことができるのは、井戸健人の歌心による部分も大きいだろう。フリーキーな間奏が印象的なダブ風の「ぬくもりはたしかに」にしろ、浮遊感のある音像によるギターポップ「なつかしい気持ち」にしろ、熟練の演奏と記名性の強い歌が両立しているからこその味わいがある。スーパーノア、やっぱりいいバンドだなあ。

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荘厳なSEが流れ、白を基調とした衣装で登場したのは2番手のULTRA。スーパーノア同様に約20年のキャリアを誇るMASS OF THE FERMENTING DREGSの宮本菜津子が、同時代にecosystemで活動した壺坂恵に「一緒に歌ってみたい」と声をかけ、やはりそれぞれのバンドで活動をしてきたベースの柳本修平とドラムの杉本昂とともに2020年11月に結成した凄腕たちによる新人バンドである。フィードバックノイズを鳴らし、スケール感のあるイントロから始まった「door」と「flash back」という最初の2曲では、壺坂と宮本が基本ずっとハモっていて、歌声の相性の良さを印象付ける。

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ミドルテンポの「泡沫」では壺坂がメインボーカルを担い、赤のストラトで耳に残るフレーズを弾けば、「INU」では普段ベースの宮本がジャズマスターを持って、SONIC YOUTHばりのソリッドなリフを奏でるのが非常に新鮮。パワフルなリズム隊がボトムを支え、その上で壺坂と宮本の2人が躍動するその構図からは、今年のグラミー賞でオルタナ部門を受賞し、世界で旋風を起こしている2人組・WET LEGを連想したりも。長く続いたコロナ禍が徐々に収束し、ライブハウスにも歓声が戻ってきた中、今必要なのは彼女たちが発するような陽性のエネルギーだと感じる。

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ラストはULTRAが最初に発表した曲で、切迫感のある高音に壺坂のボーカルの魅力が凝縮されている「愛など」。宮本が惚れ込んだその歌声に自らの声を重ね、最後には柳本と杉本も加わって4人でのコーラスを聴かせるという展開は、ULTRAがバンドになっていく過程を追体験するようでグッと来た。

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3番手に登場したGateballersは1月に発表した新作『未来から来た人』の収録曲である「涙のSS」からスタート。現在のメンバーはボーカル/ギターの濱野夏揶とドラムの久富奈良の2人だが、ライブではギターとベースのサポートを交えた4人編成だ。

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濱野が「東京のバンドです。みんなに30分歌を聴いてもらうために来ました。よろしく」と声をかけると、「未来から来た人」ではGateballersらしい空間系のサイケなギターに乗せて、濱野がメランコリックなメロディーを届けていく。物販のTシャツに描かれている天使の絵について触れ、「前に描いたのに、去年生まれた娘にそっくりだった」という微笑ましいエピソードを話してから演奏された「Dancing」の人懐っこいポップさは、子どもと一緒に踊ることをイメージして作られたものかもしれない。

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濱野と久富は元andymoriの小山田壮平のバンドでも活動していて、「Rooftop」でのアームを用いたギターソロやアグレッシブなビートなど、それぞれが一プレイヤーとしても素晴らしい。濱野は2020年に交通事故で両腕を骨折するというアクシデントも経験しているが、その後のリハビリを経て、こうしてまたステージでギターを弾いている姿を見れることは単純に嬉しいことだ。一曲一曲丁寧に歌と演奏を届けていくその姿勢は、人生の様々な場面でも常に傍にある、音楽に対する真摯な気持ちの表れのよう。ラストはサイケ期のTHE BEATLESのようなミドルバラード「end roll」で大団円を迎え、充実のステージを終えた。

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この日の大トリを務めたのは、国内シューゲイザーシーンを代表するバンドの一組となった感もある揺らぎ。ライブは2月に発表された最新曲「Here I Stand」でスタートした。叙情的なギターの反復フレーズから突如轟音がかき鳴らされると、一気に荒涼とした世界が広がっていく。スローコアのような前半から途中でリズムが変わり、再度の轟音と浮遊する歌声に照明演出も加わって生み出される恍惚とした音世界は揺らぎらしいものであると同時に、長尺の中で刻一刻と変化していくこの曲の物語性の高さは、バンドの進化を確かに感じさせるものだ。

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ギターポップ寄りの「While My Waves Wonder」、低音の効いたベースが重厚な雰囲気を生み出す「Unreachable」と没入感の強い楽曲が続き、ボーカル/ギターのみらこが「大トリ嬉しいです。ありがとうございます」と挨拶をすると、場内からは温かな拍手が贈られる。2会場を往来しながら8アクトを楽しんだことによる心地よい疲労感と一日が終わってしまうことに対する寂しさが同居したその気持ちはまるで、オルタナティブなアクトの出演率が高いフジロック3日目のホワイトステージで感じられるようなものだった。

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未発表の新曲「Falling」から、フロアタムを用いた力強いリズムが楽曲の陶酔感を強める「I Want You By My Side」で本編を締め括ると、鳴り止まない拍手に応えてのアンコールでは初期曲の「sleeptight」を披露。細かく刻まれるハイハットとノイズギターから一気に恍惚としたクライマックスを迎えるショートチューンを叩き付けて、濃密な一夜が幕を閉じた。

文:金子厚武
撮影:原田昴

LIVE INFORMATION

SHIBUYA SOUND RIVERSE 2023
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2023年6月3日(土)
渋谷STREAM HALL/SPACE ODD/CIRCUS TOKYO/IKEBE SHIBUYA/Creator Collaboration Space/FS.
OPEN/START 13:00

■出演アーティスト第1弾発表
Fake Creators(LITE、DÉ DÉ MOUSE)
NIKO NIKO TAN TAN
ODD Foot Works
odol
TENDOUJI
The fin.
The Wisely Brothers
VivaOla
Wez Atlas
下津光史(踊ってばかりの国)
INFO:https://soundriverse.com

■ TICKET
STANDING
前売り ¥5,800(Drink代別)
学割 ¥4,800(Drink代別)
※学割チケットは高校生・専門学校生・大学生を対象とします。
入場時に学生証の提示が必要です。


LINK
オフィシャルサイト
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FRIENDSHIP.

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