SENSA

2023.02.28

NITRODAY『I'll Never Cry(from tomorrow)』──ニューアルバムをライブ音源でリリース、その必然がわかる新作

NITRODAY『I'll Never Cry(from tomorrow)』──ニューアルバムをライブ音源でリリース、その必然がわかる新作

 実に5年ぶりとなる、NITRODAYのセカンド・フルアルバム。2016年結成で、最初の音源が出たのが2017年(まだ高校生の頃)、と考えると、このインターバルはちょっと異常だが、実は2021年いっぱい活動を休止していたり(コロナ禍のせいで騒がれなかったが)、リリース元のレーベルを移籍したり、と、いろいろあったようだ。

 で、そんないろいろの末のリリースされた本作は、ニューアルバムでありながらライブ録音。未発表の新曲9曲と、既存曲1曲(7曲目の「homerun!」)を、横浜のB.B.STREETで曲順どおりに演奏したさまが、そのまま音源になっている。RCサクセションの『RHAPSODY』方式、とでも言いましょうか。例が古すぎるか。
 ともあれ。今どき、ライブ音源にせよライブ映像作品にせよ、そして歌にせよ演奏にせよ、録った後での修正や部分的なやり直しなど、いかようでもできるものだが、本作にはそのような形跡はない。歌って演奏したまんま、録ったまんまが作品になっている。

 なので、それゆえの乱れや粗さやいびつさが、そのまま残っている。が、その乱れや粗さやいびつさが、イコール「そうじゃないと表せない」表現になってもいる。2本のギターも、ベースも、ドラムも、「本来この楽器はこういう音です」という鳴り方をしている。どのタイミングで、どの楽器が、どの位置で鳴っているか、どのフレーズが、どの瞬間に、どんな役割を果たしているかが、1曲1曲よくわかる。

 小室ぺいの歌にも、迷いや曖昧さや言い訳がない。「こういう音楽です」「こういう人間です」だけでできている。何もあきらめていない少年のような視点と、何もかも見えてしまった老人のような視点の両方がある、そんなふうにきこえる。で、そのどちらもが、過去の、5年前の音源や、4年前の音源以上に、よりくっきりと、生々しく伝わってくる。

 具体的でわかりやすい、文章や散文に近い歌詞が全盛の今にあって、脳内の抽象的な感情を抽象的な言葉で表して外に投げ出したみたいな、歌詞の世界がいい。定型に従わないリフやコード進行の上を転がっていくようなメロディがいい。その言葉とメロディをクリアに耳に放り込んでくる、歌い方そのものもいい。
 何度も聴いていると、なぜニューアルバムをライブ音源でリリースしたかったのか、わかるような気がしてくる。

文:兵庫慎司



RELEASE INFORMATION

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NITRODAY「I'll Never Cry (from tomorrow)」
2023年2月15日(水)
Format: Digital

Track:
1. cobalt strike
2.~milky way wishes~
3.sea/son
4.Departure
5.my pollinosis (emerald candy)
6.white heaven
7.homerun!
8.*asterisk*
9.adorable
10.halo sunshine

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LIVE INFORMATION

NITRODAY "I'll Never Cry (from tomorrow)" Release Tour
2023.5.2 下北沢SHELTER ワンマン
adv¥2800+1d/door¥3200+1d
open/start 18:30/19:00
予約:nitroday.contact@gmail.com
※名前、枚数、日程を記載の上ご連絡ください

2023.5.13 心斎橋 火影 
2023.5.14 名古屋 KDハポン
2023.6.4 横浜 B.B.STREET
*上記3公演の詳細は後日発表


LINK
@nitrodayyy
@nitroday

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