SENSA

2023.02.24

ユレニワ、最高を更新。聴き手の心に突き刺す音楽を。渋谷CLUB QUATTRO公演

ユレニワ、最高を更新。聴き手の心に突き刺す音楽を。渋谷CLUB QUATTRO公演

2023年2月18日、ユレニワのワンマンライブツアー2023「LAND」のファイナル公演が開催された。東名阪3公演のツアーで、ファイナル公演の会場は過去最大規模キャパの渋谷CLUB QUATTRO。彼らは昨年の3月にも同じ「LAND」というタイトルのライブを、当時のユレニワにとって史上最大規模だった渋谷WWWにて開催している。つまり、この1年間で見事にバンドを鍛え上げて自身の最大規模を更新したということだ。しかし、そのためにバンドとひたすら向き合い続けた1年間は、決して楽な道のりでは無かったと語られた。ガムシャラに走り続けた彼らが辿り着いたこの日が、いかに感動的で胸を打たれるライブだったか。このレポートにしっかり言葉にして残したい。

ライブはとあるサプライズから開幕した。メンバーが順に登場すると、4人が"横並び"で演奏し始めた。そう、RENJU(Dr.)が一番左でギターを弾いていたのだ。2月8日に行われた「定期公演エロス -ラバーズ編-」以来このツアーではギターも披露しているとのことだが、やはり4人のシルエットが一列に並ぶ姿はかなりのインパクトだった。そして一度暗転し、4カウントの合図でパッと照明が当たると、既にRENJUはドラムセットに座っている。面白い仕掛けにまんまと驚かされ、初っ端からニヤリとしてしまった。『帝國』は2月1日に配信リリースされたばかりの新曲で、ツアー会場で発売開始された5th mini Album「ラヴ・バレエ」に収録されている。飾り気のある垢抜けた音遊びがとても素敵な楽曲だ。

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「待たせたな!ユレニワです!宜しく!」とシロナカムラ(V/Gt)が挨拶し、2曲目『恋人たちのヒム』へ。曲の始まりと共にミラーボールが煌めき、カラフルな照明がステージを鮮やかに照らす。そんな照明とダンサブルなサウンドで早速オーディエンスを気持ちよく踊らせると、RENJUの軽快なビートが『遺書』へと繋いだ。イントロから観客の拳が揃い、早速一体感が生まれるフロア。その様子を嬉しそうに見ながら演奏する種谷佳輝(Gt/Cho)の姿も印象的であった。このツアーは新型コロナウィルス感染対策ガイドラインが一部改訂されたことによりマスク着用の上で声出しが可能になったため、楽曲を終えると、拍手に加えて待ちに待った自由な歓声が飛び交う。シロがMCでお礼を述べると、すぐさま種谷が歪んだギターを響かせ、そのまま不穏でどこかヒリヒリとしたセッションへと突入。大忙しの展開だ。色々な音が交錯するセッションを経てシロの叫びと共に届けられたのは、ライブのボルテージを上げるのに必須なナンバー『Cherie』。抑揚の増したシロの歌、間奏でオーディエンスに近づき体を揺らしながら弾き倒す宮下レジナルド(Ba/Cho)と種谷。アウトロ前にスポットライトを浴びてダイナミックに叩くRENJUなど、各々のライブパフォーマンスが序盤から光りまくっている。そして、最後の音が鳴るや否やサイレンのように赤い照明がぐるぐると回り、ドキドキする空気感の中『だらしないね』を鳴らした。種谷が激しく体を動かしながら、立膝になったりと、かなり気持ちの乗ったプレイを魅せ、宮下の重厚感あるベースラインもRENJUの迫力あるドラムと絡みながら巧みに演奏されていく。最後のドラマチックな展開まで豪快なバンドサウンドで弾き切り、会場は拍手と歓声に包まれた。

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激しいドラミングを終えたRENJUが息を切らしながら、観客へのお礼を伝えた。そして4人でトークを回しながら声を出せることの喜びも味わった後に、美しいコーラス始まりが魅力的な『ひかりにひかれて』を演奏。この曲も「ラヴ・バレエ」に収録されているが、元々は"チケット購入者限定のLINEオープンチャットにて限定公開"という面白い試みで解き放たれた楽曲だ。綺麗なコーラスからパンクで衝動的な音像にまで変わる展開も、リスナーへ届ける手法も、様々な趣向が凝らされた作品。緩急ある演奏にも関わらず、ひとつひとつの音のキメがバッチリでグルーヴが最高に気持ちいい。そこに彼らの演奏力が格段に上がっていることをひしひしと感じた。彼らのライブにおける楽しみの一つは、毎ライブ毎ライブの進化が手に取るようにわかることだ。だが、この段階での感動はまだ早かった。ライブ後半にもっと度肝を抜かれる演奏が待ち受けていたのだから。

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『ひかりにひかれて』のフワッと消えていくような音と似た音像でナチュラルに繋がれたのは『Bianca』。温かみのあるオレンジ色の照明は一定に彼らを照らしているだけで、特段演出はなく、ただただ自分たちの演奏と歌だけでシンプルに真っ直ぐに会場を魅了した。そのメリハリもライブに彩を持たせている。そこから、種谷がエフェクトのかかったスペーシーで浮遊感のあるサウンドを鳴らし会場の空気を柔らかに変えていくと『焦熱』が演奏された。変則的なリズムのアウトロでは、宮下とシロがRENJUの方を向いてお互いの呼吸を確認しながら演奏している姿が良く、続く『fusée 101』から『まぼろしの夜に』では、一つ一つの言葉や音、想いを噛み締めるように丁寧に演奏と歌を紡いでいる姿に惹き込まれた。目の前にいる一人一人に届けようとする嘘のない、等身大な佇まいはユレニワの素敵な魅力だ。その魅力がこの後のMCでより一層明確なものになる。

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シロは、少しの静寂を経て、ゆっくりと話し始めた。去年の3月に当時のユレニワ史上最大規模のワンマンライブを渋谷WWWにて行ったこと。その熱が冷めないうちに今回のツアーを解禁したものの正直不安しかなかったこと。堂々とユレニワのワンマンライブとして立つ為に、一人でも多くの人の手にチケットが届くために、一番いい活動は何かを常に考えたこと。そして、路上ライブ、10日間連続でライブをする武者修行ツアー、特設オープンチャットにて新曲リリース、対バン形式にリニューアルした定期公演など怒涛の日々を送ったこと。その結果を、シロはこう言った。「そうこう忙しくしているうちにさ、なんか自分の顔がやつれるというか。鏡を見るとボロ雑巾みたいな表情をしててさ。振り返ると他の3人も同じような顔してるのよ。ただそれを...感じてながら、それを見ていながら...全身全霊をかけてユレニワに向き合ってくれたお前らに、言い表せないほどの感謝と敬意を、歌に込めたいと思って今日ステージに立っています。本当に、どうも、ありがとう。」キュッと喉が詰まるような、泣いているような声で。でも力強く、そして優しく言葉を吐いた。徐にギターを弾きながら、たまに上を仰ぎながら、続けて話した。「一人の力じゃ何もできませんでした。お前らがいなかったら俺はもう終わってた。武者修行ツアーの段階でもう死んでたかもしれないね。本当に感謝を言いたい。言葉だけじゃ足りないから歌を紡ぐんだよ。本当にありがとうって魂からそう叫びたい。そして...、みんなと一緒に今日を作りたい。愛してます。」そう言い放って鳴らされたのは『革命児』。「革命を起こすぞ!」とシロが叫び、思いっきりバンドサウンドが鳴った時、フロアからは一斉に拳が力強く挙がった。いくつもの拳の先で革命児が全身全霊で音楽を鳴らしてる姿は間違いなく、この日のハイライトだった。

目的のために無我夢中で走り続けていると、気づいた時に心が疲労に負けて蝕まれていってしまうことがあると思う。周りへの感謝も忘れてしまうほどに。ただ、彼らは自ら選んだ荒波の中で、揉まれヘトヘトになりながらも、なんで音楽を鳴らし続けるのかという本質を見つめていた。試行錯誤を繰り返し、全てをユレニワのために注ぎ込んだ泥臭くてガムシャラな一年。その一年を駆け抜けてこれたのは支えてくれる全ての人のお陰だと心の底からの感謝を持ち、その気持ちを音楽で返すんだ、という強く本質的な想いを込める。それは、どんな高度な技術や演出をも超える、唯一無二の感動を生み出していた。この『革命児』は多くの人の心を打ったに違いない。後半のシンガロングでは、RENJUも前に出てきて4人でオーディエンスの顔を見ながら嬉しそうに声を受け止めた。その姿を見て、もっともっと応援されるバンドになると思った。シンガロングを終えてサウンドインするときの4人の表情といったら、とても幸せそうで、でも研ぎ澄まされた表情で。最高な多幸感に溢れていた。

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『革命児』が終わり、鳴り止まない拍手と歓声に重ねるように『まじまいえんじぇる』を届けると、ポップでノイジーな爆発力がある楽曲に会場のボルテージは更に上がり、そのまま音を止めずに『PLAY』へ。前述した、グルーヴが底上げされた演奏力はここで大爆発。まずは間奏で巧みなソロパートを2周すると、4人で合わさって自由自在に音を操り、リズムを速めたり元に戻したりと目まぐるしいセッションを畳み掛けていく。全く『PLAY』ではなくなる瞬間もあるのだが、少しするとまた戻ってくる。サウンドの厚みがどんどん増していったかと思えばフッと無音になって一瞬の静寂も操り、そこからまたもやソロパートを披露。まだかまだかと焦らしに焦らして、鳥肌が立つような一瞬の静寂で、シロが息を吸い、爆発するように最後のサビへ!圧巻のパフォーマンス。音も光も声も息も動きも全てがビタッとハマった空間。度肝を抜かれるとはまさにこのことだ。この日、一番長い拍手が起こった。そしてRENJUのテンポの良いビートから『purple』へ。ここまで『革命児』『まじまいえんじぇる』『PLAY』と矢継ぎ早にパワフルなステージングを披露した後に、この虚な孤独感をポップでコーティングした曲を平然と鳴らせるタフさ、バンドとしての強靭さにまたもや圧倒されてしまった。そして本編最後は新曲の『争いの花』で締めくくられた。フィナーレらしく優しい旋律と穏やかなサウンドで曲が始まり、そこからアウトロに向けてどんどんサウンドが増していき、虹色にキラキラと輝く照明の元で、大きな拍手と歓声と共に曲を終え、ステージを後にした。

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鳴り止まないアンコールに応えて、再び宮下とRENJUが先に登場。後からグッズを着用したシロと種谷が登場し、「懐かしい曲やるよ」と『Neverland』へ。センチメンタルを優しくも強く掻き立てるメロディが美しい同曲を大事に丁寧に届け、最後に演奏されたのは『Birthday』だ。全員が最後の力を出し切るように、エモーショナルに豪快に演奏しきる。音の洪水のような爆音とバチバチに光るストロボの照明の中で彼らの「LAND」は幕を閉じた。......と思いきや、まだ鳴り止まない拍手に応えてまさかのダブルアンコールへ!全員がステージに勢いよく走って登場し、自分の楽器を準備するや否や、宴のように明るい笑顔で、半分お遊びのように『阿呆』を思い切りかき鳴らしていった。種谷はフロアに降りて弾き、その姿を見てシロは大笑い。どこにそんな余力が残ってたんだ?と笑いたくなるくらい、ボリューム満点、大盛り上がりで「LAND」は終わった。

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ユレニワは嘘がなく、等身大なバンドだ。背伸びすることもなく、ファンと距離を作ることもない。人懐っこくて、人間臭くて、狂おしいくらいの愛情に溢れたバンド。感謝の気持ちや言葉であわらしきれない想いを歌と音に乗せ、まっすぐにぶつけてくる。聞き手の心を突き刺す強度を兼ね備えたバンドだ。昨年の「LAND」とは音楽的にもバンド的にも大きくなったユレニワ。目まぐるしいスピードで磨かれていく彼らの今後がとても楽しみである。

文:髙橋夏央
撮影:マチダナオ

ユレニワ ワンマンライブ 2023「LAND」SET LIST
1. 帝國
2. 恋人たちのヒム
3. 遺書
4. Cherie
5. だらしないね
6. ひかりにひかれて
7. Bianca
8. 焦熱
9. まぼろしの夜に
10. 革命児
11. まじまいえんじぇる
12. PLAY
13. purple
14. 争いの花

EN
1. Neverland
2. Birthday

EN 2
1. 阿呆





LIVE INFORMATION
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3月8日(水)
定期公演「エロス vol.19 -ラバーズ編 -」
出演:ユレニワ/ ENFANTS
チケット代:¥3,500(税込/別途1D)
開場:18:30 / 開演:19:00
チケット:e+にて販売中。
https://eplus.jp/sf/detail/3792710001-P0030001

info:渋谷La.mama
お電話は03-3464-0801(受付時間15:00-22:00)

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オフィシャルサイト
@JURENIWA
@jureniwa.official

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