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2023.02.02
FM福岡で毎週水曜日 26:00~26:55にオンエアしている音楽番組「Room "H"」。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本 大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。
今週のMCは、odolの森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)
(森山)今年最初の森山回ということで、皆さまあけましておめでとうございます。もう2月1日なんですけど、遅すぎるあけおめですね。
近況としては、オンエアの先々週になりますかね。ちょっと遅いんですけど、新年のご挨拶ということで実家や親戚のお家を周ってきて、福岡にももちろん帰りました。他には宮崎と沖縄にも一週間ぐらいかけて行ってきました。沖縄は実は初めてだったんですけど、本当にすごくいいところで、何より暖かすぎてびっくりしましたね。東京を出たときは気温が4度くらいだったんですけど、向こうは22度とかで、1人だけ服装が場違いみたいな感じになってました(笑)。とにかく、本当にいいところでした。
ここからは@リビングルーム。最近僕がハッとしたことと、今聴いてもらいたい音楽についてお話しする時間です。
最近ハッとしたことなんですが、番組冒頭でもお話ししたように大移動を1週間してきたんですよね。最初に福岡に行って、そこから宮崎に行って、沖縄に行って、沖縄から東京に戻ってきたという感じで、1週間ほど、親戚や実家を周っていました。実は実家はいま福岡じゃなくて、沖縄なんですよね。両親がめちゃくゃ引っ越しをするので、帰省するたびに都道府県が変わっているような感じなんですけど。そうやっていろんな場所に行けるっていうのはすごく楽しくもあります。僕自身も関東近郊で、県をまたいで何度も引っ越しをしていたりもするので、そういうところも含めると、住んでいたり、実家がある都道府県が多い方なのかなって思うんですけど。僕の印象というか、日本はある意味かなり成熟した国でもあると思うので、どこに行っても同じような街並みというか、均質化してるじゃないですか?どこに行っても大体同じお店があるし、同じ物を買えるし。気候の差はあっても、「基本的に大体同じ感じだな」と先週までは感じていたんですよね。
それで、ハッとしたことなんですけど、先週人生初の沖縄に行って、全然違うんですよね。日本なんだけど、街並みも文化も景色もかなり独特なものがあって、それがすごく面白くてハッとしたというか。まだまだ日本の中にもそうやって知らない部分がたくさんあるなと思って、いろんな所に行ってみたいなと思いました。ツアーで行ければ尚更いいんですけどね。それは目標として。そんなハッとしたお話ですね。
まず1曲目に選んできたのが荒井由実の「中央フリーウェイ」です。これは皆さんご存知かなと思いますが、ユーミンですね。「中央フリーウェイ」は僕は子供の頃に聴いていました。
僕の両親くらいの世代が一番近いんじゃないかなと思うんですけど、その影響もあって子供の頃に車の中でよく聴いていた記憶があります。当然東京の曲とは思わず聴いていていたんですけどね。中央自動車道の存在も知らないですし、でも「すごくいい歌だなー」って思って聴いたんです。僕は、福岡に都市高速道路があるんですけど、そこを走っている両親が運転する車の後部座席とかで、その景色とこの曲と少しリンクさせながら聴いていて。夜の高速道路のちょっとワクワクする感じというか。あの情景を一瞬で思い起こさせてくれるから、「すごい歌だな」と思っておりますね。ひさびさに僕も選曲して聴いたんですけど、やっぱり素晴らしいなと思いました。
続いては@レコーディングルームのコーナーです。本日は番組を通して沖縄行ってきたという話をひたすら擦るんですけど。沖縄のいろんな音をたくさん拾ってきましたので、その中のいくつかを皆さんと一緒に聴いてみたいなと思っております。フィールドレコーディングをしてきました。@リビングルームのハッとしたことでも話しましたけど、やっぱり独特の風土というか、文化があって、音に関しても聴こえる音もまた違うんですよね。
意外だったのは沖縄音楽というか、琉球音楽というか。そういう沖縄に住んでない人が思い描く沖縄の音楽みたいなものも、意外と全然観光地じゃない街中というか、普通の街にも溢れているんですよね。根付いているというか。駅メロだったり、お店の中だったりもそうなんですけど、ほとんど地元の人しか行かないようなショッピングモールみたいなところにも行ったんですけど、そういうとこでもエイサーのイベントをやっていたりとか。本当に普通にそこら中にあるというか、県全体が観光地化しているというのももしかしたらあるのかもしれないですけど、それがイメージと違ってすごく面白かったですね。やっぱりそういう中で生まれ育ったら、「ドレミファソラシド」じゃない音階を幼少期に多く耳にする可能性もあるわけで、そうするとまた基準となる音楽だったり、聴き方とか聴こえ方というのも変わってくるのかなと感じましたね。
ということで、フィールドレコーディングしてきた沖縄の音というものをいくつか皆さんと一緒に聴いていきたいなと思います。
これは琉球石灰岩の音なんですけど、琉球石灰岩って皆さん知っていますか?沖縄の土地の約30%はこの琉球石灰岩のようです。これは今から数万年前とか数十万年前とかにサンゴとか貝殻が堆積してできた堆積岩です。沖縄にはこの石灰岩が至るところにあります。もちろん大地そのものなので、海や山にもむき出しであるんですけど、道とか塀とかの多くもこの石でできていて。土地の30%がこの石灰岩なので当然そうなんですけど。お家とかにもこの琉球石灰岩が使われていて、やっぱり歩いていても音が違ったりするんですよね。今聴いてもらった音も軽くて、ちょっと高く響いていたと思うんですけど、でも石自体は重いんですよ。サンゴとか貝殻が堆積したもので、穴がめちゃくちゃ空いている石なので、すごく独特な響きですよね。この琉球石灰岩というのが、何十万年も前のサンゴや貝たちがこの中にいるんだって思うと面白いですよね。沖縄の人にとっては意識するまでもないほど、当然のようにそこら中にありました。
ここからは「今日の一枚」のお時間です。毎回何か1作品もしくはお一人にスポットを当てて僕の視点でその魅力を語らせていただくというコーナーです。
今回は「今日の一枚」にしてみました。取り上げるのは、坂本龍一の『12』です。教授の新譜ですね。幸宏さんの訃報からしばらく空白の気持ちというか、「何も聴けないな...」みたいな時間がありました。その直後にリリースされたこのアルバムですが、このアルバムの曲たちがゆっくりとその空白を埋めていってくれました。
教授も教授で闘病生活をしていて、なかなか音楽を作れないとか、演奏もできないという日々を過ごしてる中で、また音を出すようになって、日々の日記のようにスケッチした音をそのままアルバムにしたという作品です。
作品の作り方というか、コンセプト自体、すごく理想的だなと思うし、こんな作品をいつか出したいなと僕も思いました。自分の感性のままに音を出してそれをそのままパッケージして作品にするっていうのは、できそうなイメージがあるけど、なかなかできないことだと思うんですよね。やっぱりどこか全てをさらけ出すというか、そういう生の自分を出すっていうのはすごく難しいですよね。教授は音楽家として、やろうと思えばなんでもできると思うんですよ。どこまでも出来るんだけど、そこであえて何もしないということをする。それは教授が置かれた今の体調とか含めて、そういう背景もありながら、それを出すという勇気というか、選択というか、それがすごいなと心から思っております。
このアルバムについて、楽曲的なところでいくと、教授はもうずっと、10年以上、"より小さく遅く"というような演奏を好んでいたかなと思うんですよね。ピアノという物質のメカニカルな、物理的なノイズ、フェルトが当たる音とか、軋む音、揺れる音とか。そういうメカニカルだったり物質的なノイズと、楽器としてのいわゆるピアノの音というのを同列に捉えて、さらにこの世界に常にある環境音とかノイズというのを音楽と切り分けずに、全て同じ「音」として扱うという。そういうことを教授はずっとやってきていて、このアルバムではそれがさらに深まっている、ピュアになっているように感じます。ただ、そんな中でも力強さを感じるピアノの演奏というのもアルバムの中で一部聴こえてきて、それもまたなんとなく嬉しかったですね。
僕なりにですけど、もう一つの要素としては、"時間の無さ"への意識がすごく色濃く感じられるなと思いました。時間の方向性のなさというか、「時間が過去から未来に一方向に進んでいるわけじゃないよね」という考え方。そして"時間芸術"と言われる音楽で、それをどうやって表現するのかというような、教授がずっと考えてきたようなことが生々しく現れている作品だなという風に感じますね。アルバムを通して僕はすごく勇気づけられたなと思いました。
そんなアルバムの中から本日お送りしますのは「20220302 - sarabande」という曲です。このアルバムは全部それをスケッチした日付がタイトルになっていて、特に標題音楽っぽくない感じなんですが、この曲には「sarabande」というタイトルが日付と共に付いています。これは曲のタイトルではないんですよね。交響曲第何番みたいな。「田園」とか「運命」じゃなくて、「交響曲」と書いているみたいな感じです。「sarabande(サラバンド)」というのは、バロック時代に生まれた形式のようですけど、有名なのはヘンデルの曲とか、ピアノを習っていた方とかは、ギロックやサティの「sarabande」をご存知かもしれないですね。
バロック時代なので、今のピアノがまだない時代の音楽なんですよね。なのでこれって、普通にピアノで演奏されていると、「ピアノ曲の形式なのかな?」って思いがちですけど、こういうタイトルをわざわざ教授がつけているということは、やっぱりそういう文脈の中で聴いてほしいという想いがあるんじゃないかなと思うので、気になった方やお時間のある方は、ぜひさっき紹介したような「ヘンデル サラバンド」とか「サティ サラバンド」みたいな感じで調べると、すぐに出てくると思いますので、それも一緒に聴いてみると面白いんじゃないかなと思います。
ということでこのアルバム、僕もまだまだ聴き始めて一週間ぐらいしか経ってないので、もうちょっとたくさん聴いていきたいなと思います。
荒井由実「中央フリーウェイ」
くるり「赤い電車」
蓮沼執太「RAW TOWN」
坂本龍一「20220302 - sarabande」
松任谷由実「BLIZZARD」
番組へのメッセージをお待ちしています。
Twitter #fmfukuoka #RoomH をつけてツイートしてください。MC3人ともマメにメッセージをチェックしています。レポート記事の感想やリクエストなどもありましたら、#SENSA もつけてツイートしてください!
放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年12月1日に初のフルアルバム「6 case」をリリース。2022年8月24日にシングル「ありえないよ。」を、同年11月30日にはシングル「Blur」をリリース。2022年6月1日にソロ第1弾シングル「この星からの脱出」をリリース。2022年7月8日にはソロ第2弾シングルでギタリスト「こーじゅん」をフィーチャリングに迎えた「フライディ・チャイナタウン (Acoustic Cover)」をリリース。
オフィシャルサイト/ @yourness_on/ @yourness_kuro
松本大
長崎県出身。2021年までLAMP IN TERRENのフロントマンとしてバンド活動し、現在次の活動に向けて準備中。
@pgt79/ @n.trueve
森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した3人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2022年3月16日に「三月」を配信リリース。
オフィシャルサイト/ @odol_jpn/ @KokiMoriyama
今週のMCは、odolの森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)
(森山)今年最初の森山回ということで、皆さまあけましておめでとうございます。もう2月1日なんですけど、遅すぎるあけおめですね。
近況としては、オンエアの先々週になりますかね。ちょっと遅いんですけど、新年のご挨拶ということで実家や親戚のお家を周ってきて、福岡にももちろん帰りました。他には宮崎と沖縄にも一週間ぐらいかけて行ってきました。沖縄は実は初めてだったんですけど、本当にすごくいいところで、何より暖かすぎてびっくりしましたね。東京を出たときは気温が4度くらいだったんですけど、向こうは22度とかで、1人だけ服装が場違いみたいな感じになってました(笑)。とにかく、本当にいいところでした。
「東京の情景ソング」をテーマに紹介!@リビングルーム
ここからは@リビングルーム。最近僕がハッとしたことと、今聴いてもらいたい音楽についてお話しする時間です。
最近ハッとしたことなんですが、番組冒頭でもお話ししたように大移動を1週間してきたんですよね。最初に福岡に行って、そこから宮崎に行って、沖縄に行って、沖縄から東京に戻ってきたという感じで、1週間ほど、親戚や実家を周っていました。実は実家はいま福岡じゃなくて、沖縄なんですよね。両親がめちゃくゃ引っ越しをするので、帰省するたびに都道府県が変わっているような感じなんですけど。そうやっていろんな場所に行けるっていうのはすごく楽しくもあります。僕自身も関東近郊で、県をまたいで何度も引っ越しをしていたりもするので、そういうところも含めると、住んでいたり、実家がある都道府県が多い方なのかなって思うんですけど。僕の印象というか、日本はある意味かなり成熟した国でもあると思うので、どこに行っても同じような街並みというか、均質化してるじゃないですか?どこに行っても大体同じお店があるし、同じ物を買えるし。気候の差はあっても、「基本的に大体同じ感じだな」と先週までは感じていたんですよね。
それで、ハッとしたことなんですけど、先週人生初の沖縄に行って、全然違うんですよね。日本なんだけど、街並みも文化も景色もかなり独特なものがあって、それがすごく面白くてハッとしたというか。まだまだ日本の中にもそうやって知らない部分がたくさんあるなと思って、いろんな所に行ってみたいなと思いました。ツアーで行ければ尚更いいんですけどね。それは目標として。そんなハッとしたお話ですね。
1曲目:荒井由実「中央フリーウェイ」
本題に入っていきたいと思うのですが、@リビングルームはRoom "H"の住人がそれぞれのカラーで今聴いてもらいたい音楽を自由にセレクトしていきます。ということで。本日のテーマはいろいろと移動してきたという話をしましたけど、それで一週間くらいぶりに東京に戻ってきて、東京の情景というか、景色に少し客観的になったんですよね。そういう流れもあり、「東京の情景ソング」というテーマで、東京の情景を歌った音楽を3曲ほど選んでみましたので、ご紹介していきたいと思います。まず1曲目に選んできたのが荒井由実の「中央フリーウェイ」です。これは皆さんご存知かなと思いますが、ユーミンですね。「中央フリーウェイ」は僕は子供の頃に聴いていました。
僕の両親くらいの世代が一番近いんじゃないかなと思うんですけど、その影響もあって子供の頃に車の中でよく聴いていた記憶があります。当然東京の曲とは思わず聴いていていたんですけどね。中央自動車道の存在も知らないですし、でも「すごくいい歌だなー」って思って聴いたんです。僕は、福岡に都市高速道路があるんですけど、そこを走っている両親が運転する車の後部座席とかで、その景色とこの曲と少しリンクさせながら聴いていて。夜の高速道路のちょっとワクワクする感じというか。あの情景を一瞬で思い起こさせてくれるから、「すごい歌だな」と思っておりますね。ひさびさに僕も選曲して聴いたんですけど、やっぱり素晴らしいなと思いました。
オンエアでは、2曲目にくるり「赤い電車」、3曲目に蓮沼執太「RAW TOWN」を紹介!ぜひradikoタイムフリーでお聴きください!
沖縄でフィールドレコーディングした音を紹介!@レコーディングルーム
続いては@レコーディングルームのコーナーです。本日は番組を通して沖縄行ってきたという話をひたすら擦るんですけど。沖縄のいろんな音をたくさん拾ってきましたので、その中のいくつかを皆さんと一緒に聴いてみたいなと思っております。フィールドレコーディングをしてきました。@リビングルームのハッとしたことでも話しましたけど、やっぱり独特の風土というか、文化があって、音に関しても聴こえる音もまた違うんですよね。
意外だったのは沖縄音楽というか、琉球音楽というか。そういう沖縄に住んでない人が思い描く沖縄の音楽みたいなものも、意外と全然観光地じゃない街中というか、普通の街にも溢れているんですよね。根付いているというか。駅メロだったり、お店の中だったりもそうなんですけど、ほとんど地元の人しか行かないようなショッピングモールみたいなところにも行ったんですけど、そういうとこでもエイサーのイベントをやっていたりとか。本当に普通にそこら中にあるというか、県全体が観光地化しているというのももしかしたらあるのかもしれないですけど、それがイメージと違ってすごく面白かったですね。やっぱりそういう中で生まれ育ったら、「ドレミファソラシド」じゃない音階を幼少期に多く耳にする可能性もあるわけで、そうするとまた基準となる音楽だったり、聴き方とか聴こえ方というのも変わってくるのかなと感じましたね。
ということで、フィールドレコーディングしてきた沖縄の音というものをいくつか皆さんと一緒に聴いていきたいなと思います。
本編はぜひradikoタイムフリーでお聴きください!
これは琉球石灰岩の音なんですけど、琉球石灰岩って皆さん知っていますか?沖縄の土地の約30%はこの琉球石灰岩のようです。これは今から数万年前とか数十万年前とかにサンゴとか貝殻が堆積してできた堆積岩です。沖縄にはこの石灰岩が至るところにあります。もちろん大地そのものなので、海や山にもむき出しであるんですけど、道とか塀とかの多くもこの石でできていて。土地の30%がこの石灰岩なので当然そうなんですけど。お家とかにもこの琉球石灰岩が使われていて、やっぱり歩いていても音が違ったりするんですよね。今聴いてもらった音も軽くて、ちょっと高く響いていたと思うんですけど、でも石自体は重いんですよ。サンゴとか貝殻が堆積したもので、穴がめちゃくちゃ空いている石なので、すごく独特な響きですよね。この琉球石灰岩というのが、何十万年も前のサンゴや貝たちがこの中にいるんだって思うと面白いですよね。沖縄の人にとっては意識するまでもないほど、当然のようにそこら中にありました。
「今日の一枚」:坂本龍一『12』を解説!
ここからは「今日の一枚」のお時間です。毎回何か1作品もしくはお一人にスポットを当てて僕の視点でその魅力を語らせていただくというコーナーです。
今回は「今日の一枚」にしてみました。取り上げるのは、坂本龍一の『12』です。教授の新譜ですね。幸宏さんの訃報からしばらく空白の気持ちというか、「何も聴けないな...」みたいな時間がありました。その直後にリリースされたこのアルバムですが、このアルバムの曲たちがゆっくりとその空白を埋めていってくれました。
教授も教授で闘病生活をしていて、なかなか音楽を作れないとか、演奏もできないという日々を過ごしてる中で、また音を出すようになって、日々の日記のようにスケッチした音をそのままアルバムにしたという作品です。
作品の作り方というか、コンセプト自体、すごく理想的だなと思うし、こんな作品をいつか出したいなと僕も思いました。自分の感性のままに音を出してそれをそのままパッケージして作品にするっていうのは、できそうなイメージがあるけど、なかなかできないことだと思うんですよね。やっぱりどこか全てをさらけ出すというか、そういう生の自分を出すっていうのはすごく難しいですよね。教授は音楽家として、やろうと思えばなんでもできると思うんですよ。どこまでも出来るんだけど、そこであえて何もしないということをする。それは教授が置かれた今の体調とか含めて、そういう背景もありながら、それを出すという勇気というか、選択というか、それがすごいなと心から思っております。
このアルバムについて、楽曲的なところでいくと、教授はもうずっと、10年以上、"より小さく遅く"というような演奏を好んでいたかなと思うんですよね。ピアノという物質のメカニカルな、物理的なノイズ、フェルトが当たる音とか、軋む音、揺れる音とか。そういうメカニカルだったり物質的なノイズと、楽器としてのいわゆるピアノの音というのを同列に捉えて、さらにこの世界に常にある環境音とかノイズというのを音楽と切り分けずに、全て同じ「音」として扱うという。そういうことを教授はずっとやってきていて、このアルバムではそれがさらに深まっている、ピュアになっているように感じます。ただ、そんな中でも力強さを感じるピアノの演奏というのもアルバムの中で一部聴こえてきて、それもまたなんとなく嬉しかったですね。
僕なりにですけど、もう一つの要素としては、"時間の無さ"への意識がすごく色濃く感じられるなと思いました。時間の方向性のなさというか、「時間が過去から未来に一方向に進んでいるわけじゃないよね」という考え方。そして"時間芸術"と言われる音楽で、それをどうやって表現するのかというような、教授がずっと考えてきたようなことが生々しく現れている作品だなという風に感じますね。アルバムを通して僕はすごく勇気づけられたなと思いました。
そんなアルバムの中から本日お送りしますのは「20220302 - sarabande」という曲です。このアルバムは全部それをスケッチした日付がタイトルになっていて、特に標題音楽っぽくない感じなんですが、この曲には「sarabande」というタイトルが日付と共に付いています。これは曲のタイトルではないんですよね。交響曲第何番みたいな。「田園」とか「運命」じゃなくて、「交響曲」と書いているみたいな感じです。「sarabande(サラバンド)」というのは、バロック時代に生まれた形式のようですけど、有名なのはヘンデルの曲とか、ピアノを習っていた方とかは、ギロックやサティの「sarabande」をご存知かもしれないですね。
バロック時代なので、今のピアノがまだない時代の音楽なんですよね。なのでこれって、普通にピアノで演奏されていると、「ピアノ曲の形式なのかな?」って思いがちですけど、こういうタイトルをわざわざ教授がつけているということは、やっぱりそういう文脈の中で聴いてほしいという想いがあるんじゃないかなと思うので、気になった方やお時間のある方は、ぜひさっき紹介したような「ヘンデル サラバンド」とか「サティ サラバンド」みたいな感じで調べると、すぐに出てくると思いますので、それも一緒に聴いてみると面白いんじゃないかなと思います。
ということでこのアルバム、僕もまだまだ聴き始めて一週間ぐらいしか経ってないので、もうちょっとたくさん聴いていきたいなと思います。
Photo by Shaikh Sofian
2月1日(水) オンエア楽曲
odol「years」荒井由実「中央フリーウェイ」
くるり「赤い電車」
蓮沼執太「RAW TOWN」
坂本龍一「20220302 - sarabande」
松任谷由実「BLIZZARD」
番組へのメッセージをお待ちしています。
Twitter #fmfukuoka #RoomH をつけてツイートしてください。MC3人ともマメにメッセージをチェックしています。レポート記事の感想やリクエストなどもありましたら、#SENSA もつけてツイートしてください!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Room "H"」
毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"203号室(毎週水曜日の26:00~26:55)"では、音楽番組「Room "H"」をオンエア。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、本音で(Honestly)、真心を込めて(Hearty)、気楽に(Homey) 音楽愛を語る。彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年12月1日に初のフルアルバム「6 case」をリリース。2022年8月24日にシングル「ありえないよ。」を、同年11月30日にはシングル「Blur」をリリース。2022年6月1日にソロ第1弾シングル「この星からの脱出」をリリース。2022年7月8日にはソロ第2弾シングルでギタリスト「こーじゅん」をフィーチャリングに迎えた「フライディ・チャイナタウン (Acoustic Cover)」をリリース。
オフィシャルサイト/ @yourness_on/ @yourness_kuro
松本大
長崎県出身。2021年までLAMP IN TERRENのフロントマンとしてバンド活動し、現在次の活動に向けて準備中。
@pgt79/ @n.trueve
森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した3人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2022年3月16日に「三月」を配信リリース。
オフィシャルサイト/ @odol_jpn/ @KokiMoriyama