SENSA

2022.08.29

Small Circle of Friends「Another Cell」──時代の変化と共に生まれ変わった、もうひとつの『Cell』

Small Circle of Friends「Another Cell」──時代の変化と共に生まれ変わった、もうひとつの『Cell』

〈夏が過ぎて何処へ向かう?/今僕らは季節失って/迷い込んだこの世界で/何をしてる?/何を見てる?〉──Small Circle of Friendsの12作目のアルバム『Cell』はこんなフレーズと共に始まる。昨年12月にリリースされた同アルバムは、2019年の夏頃から制作していたが、コロナ禍の混乱のなかで一度白紙に戻した後、新たに制作した楽曲を含めて完成させた一作。本人たちも「この時期の『自分たちの置かれた環境』から確実に影響を受けています」と語る通り、激変した世の中で生きる自らの心情を冷静に、かつ詩的に切り取った作品になった。そのリリースからおよそ9ヶ月、同作を丸ごと作り変えたセルフ・リミックス/リメイク作品『Another Cell』が発表された。

リリックとメロディはそのままに、新たに生まれ変わった全11曲を聴いていると、アルバムがまるで生き物のように、我々と同じ時間軸に生きているようにも感じられる。進化というよりは変化。『Cell』とは確実に異なる空気感を感じさせる、まさにタイトル通りの『Another Cell』。

冒頭でも触れたオープナー・トラック「seasons change」は幻想的なシンセが全編を覆う仕上がりに。ほのかなアシッド・ハウスの香りを湛えつつ、前進でも後退でもない、どこか時の止まったような音風景を想起させる。かと思えば続く2曲目、「Sunshower」ではそのポジティブなヴァイブスを増幅させるような軽快なアレンジに。具体的な言葉も用いて時世を描いた「sad song」ではこれまたサイケなシンセが高揚感を演出、自らの足取りを振り返ったかのような「砂漠に靴紐」は大胆にもビートレスなトラックに刷新。また、『Cell』ではグルーヴィーかつファンキーな「NewType」がエンディングを飾っていたのに対して、『Another Cell』ではミニマルかつトライバルなサウンドで幕締め。全体的にどこか平熱感の漂う仕上がりになっているように感じる。

決して諦めや悲観ではないが、終わりの見えないループにも慣れきってしまった自分に対する、何とも言えない感情。『Another Cell』はそんな個人的なムードにもしっくりくる。しかし、時を経て変化したこのアルバムを聴いていると、不思議と先の未来へと思いを馳せてしまう。果たして、来年の僕らは何をしてる? 何を見てる? 迷い込んだこの世界から、抜け出せることを祈って。

文:保坂隆純



RELEASE INFORMATION

AnotherCell_scof_jk_20220817.jpg
Small Circle of Friends「Another Cell」
2022年8月17日(水)
Format:Digital
Label:75records

Track:
1.seasons change _ remix
2.Sunshower _ remix
3.瓶の中のエコー _ remix
4.コノサキノサキ _ remix
5.clap song _ remix
6.sad song _ remix
7.砂漠に靴紐 _ remix
8.I saw the Light _ remix
9.snore _ remix
10.playtime / cell _ remix
11.NewType _ remix

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