SENSA

2022.06.23

【読むラジオ】MC:森山公稀(odol) 前回に引き続きフィールドレコーディング特集!「Room H」 -2022.06.22-

【読むラジオ】MC:森山公稀(odol) 前回に引き続きフィールドレコーディング特集!「Room H」 -2022.06.22-

FM福岡で毎週水曜日 26:00~26:55にオンエアしている音楽番組「Room "H"」。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本 大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。
今週のMCは、森山公稀が担当。SENSAでは、オンエア内容を一部レポート!
(聴き逃した方やもう一度聴きたい方は、radiko タイムフリーをご利用下さい。)

前回に引き続き、フィールドレコーディングを特集!

森山:前回の森山回では「フィールドレコーディング特集」の前編をやらせていただいたのですが、みなさまTwitterで様々なリアクションをいただき本当にありがとうございました。前回たっぷりと語らせていただいたのですが、全部は入りきらなかったので、今回も引き続き後編ということで「フィールドレコーディング特集」をやらせていただきます。

前回オンエアしたフィールドレコーディング特集 前編は、下記からチェックしてください!


森山:本日もスペシャルゲストにお越しいただきました。odolのマネージャー今井さんです!

今井:どうもodolのマネージャーの今井です。よろしくお願いします。

森山:いや〜今井さん、さすがですね!すでにファンがすごくいっぱい居ますよ(笑)。リスナーのみなさんにも大人気で、「聞き上手!」とか「主張しすぎないユーモアがいい」とか大絶賛でした。

今井:私が真に受けてしまうタイプなので、ちょっと調子に乗らないように気をつけないといけませんね(笑)。みなさま、ありがとうございます!

森山:実は今井さんは、かなりのラジオリスナーとして長年色々と聴いてきている方ですので、ラジオでは伝わりづらいこととか聞きたいこととかを的確に理解してくださっているのだろうなと思います。

今井:なによりフィールドレコーディングという特集内容が少しでも伝わりやすくなったなら良かったと思っています。本当にリスナーのみなさまと同じような知識と言いますか、フラットに会話をさせてもらったので、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

森山:ということで本日もよろしくお願いいたします!
前回は「フィールドレコーディングとは何か?」みたいな入り口に、「フィールドレコーディングを面白がっている人が何を面白がっているのか」を、今井さんと会話しながら、「音の写真」という形で説明させていただきました。

今井:その説明は秀逸でしたね。

森山:ありがとうございます。そこに関してもたくさん反応をいただきましたので、一応補足をしておくと、フィールドレコーディングをすることを、似ている言葉で「フォノグラフィー」と呼んだりすることがあります。「フォトグラフ」は写真ですけど、それと「フォン」という音を意味する言葉を掛け合わせて「フォノグラフィー」。

今井:そうなんだ。

森山:フィールドレコーディングをする行為が"写真的だ"というイメージ自体は、皆さんにもすでに何となく共有されていると思います。ただ、前回「音の写真」という言葉で特にお伝えしたかったのは、その楽しみ方も、写真と同じくらい多様な可能性がまだ秘められているのでは?ということでした。
そんな話を前回はいろいろとしながら、コーナーの最後では、odolの曲でもフィールドレコーディングの音などが使われている、という話で終わりました。

今井:前回は1曲お聴きいただいたかと思うのですが、2017年リリースの『視線』というEPに収録されている「またあした」という曲を聴いていただきましたね。

森山:そうでしたね。あの曲はかなり分かりやすかったのではないでしょうか。フィールドレコーディングを始めたかなり最初の時期のものなので、僕としても思い入れのある楽曲なのですが、実はその後に出したアルバム『往来するもの』にも楽器の音ではない音が使われております。

今井:というのが前回の最後にクイズ的な感じで、皆さまに投げかけましたけど。

森山:今井さんどうですか?正解できましたか?

今井:「この曲じゃないか?」というのが、2曲あります。1つが「発熱」、もう1つが「声」。この2曲はかなり自信があります。ただ「他の曲もだいたい入っているんじゃないかな...」とだんだん思い始めて、この2曲に関しましても具体的に「この音だ!」というのはまだ掴めていない状態で、なんとなくこの曲なんじゃないかなと感じて選びました。

森山:今井さん、大正解です!

今井:ありがとうございます!

森山:ただ、予想通りそれだけではないのです。そして実は僕自身も記憶が曖昧で「この曲は使っていたかな...?」というようなものもあって、ちょっと正確ではないのですが、僕が思い出せる範囲で確実なのは「声」、「発熱」、「時間と距離と僕らの旅」、「人の海で」。そして「four eyes」が「どっちかな...」という感じなのですが、この4〜5曲は使われています。

今井:なるほど。でもみんな怪しいと思っていました。

森山:ということでこの『往来するもの』の楽曲を聴く前に、どんな音を録っていたかというのを少し流してみますね。まずは「人の海で」で使った音が、もともとどんな音だったのかを、少し分かりづらいと思うのですが、一度聴いてみてください。

(マッチを擦る音)

森山:というような音です。

今井:これはうっかりしていました。これイントロですね?

森山:そうです!イントロから曲中も割と続くのですが、何の音かわかりますか?

今井:なんか花火っぽかったね。

森山:あー!かなり近いですね。マッチを擦る音なんですよ。マッチを擦って、水につける音でして、これをかなり近くにマイクを立てて録っています。すごく面白い音だと思うんですよね。
これはフィールドレコーディングと言いつつも、サンプリング的に収録したものです。メンバーと一緒に1人がマイク持って、1人がマッチ付けてみたいなことしながら、当時使っていた制作スタジオで、半分遊びながら色々な音を録っていた中の一つになります。
ということで、少し、前半だけでも「人の海で」を聴いてみましょうか。



森山:マッチの音、わかりましたか?編集しているので、先ほど聴いていただいた音がそのまま使われているわけでは無いのですが。

今井:この曲のイントロから入っているので、印象的な音だなとは思っていたのですが、僕は「人の海で」はリアレンジの方をその後ライブでもやってたりとか、リリースも新しいので若干忘れていましたね。聴いてみたら納得でした。

森山:ちなみにリアレンジにも入っています(笑)。

今井:あ、そっか(笑)。リアレンジの方はピアノのフレーズが強すぎて、すみません、少し消えていました(笑)。

森山:ということで「人の海で」ではこういう音が使われていたと。
せっかくなのでもう1曲、サンプリング音を聴いてみましょうか。これで何の曲かわかったらすごいかもしれません。

(なにか擦れる音)

森山:という音です。

今井:これはまず何の音を録ったかというと...紙にペンで何か書いている感じですか?

森山:惜しい!ほぼそうですね。2枚の紙を擦っている音になります。(擦る音)いま収録中に台本の紙を擦り合わせてみました。近しい音が聴こえているはずだと思います。紙を2枚擦る音を使用している曲、わかりますか?

今井:「時間と距離と僕らの旅」!

森山:おお!さすがですね。

今井:こういう音が入っていたなと気づいてというよりは、いま聴かせてもらって、「そういえば!」みたいな感じです。

森山:なんとなく印象のどこかに残っていたのではないかなと思うのですが、これも「人の海で」と同じくどちらかというとサンプリング的なものになります。同じ時期に作っていたので、メンバーも一緒に居て、色々録っていた中の一つですね。
この曲を聴く前に、先ほどから言っている"サンプリング的に"という意味を、前回聴いた「またあした」との違いと一緒にご説明しますね。
「またあした」のときは、数十分の長いフィールドレコーディングから一部、砂利の庭で歩いている音を取り出して、それをさらにビートに落とし込むというやり方でした。
そのフィールドレコーディングの場所が僕の祖父母の家であったり、子どもの頃によく遊んでいた庭であることというのが、楽曲のコンセプトにもなっていたのですが、今回聴いた「人の海で」のマッチの音や、「時間と距離と僕らの旅」での紙を擦る音って、その音自体にコンセプトがあるわけではないんですよ。
言ってしまえば何の音でもいい、という感じなんですけど、なにが大事であったかというと、この音がオリジナルであることが僕たちにとって重要だったんですね。自分達でマイクを立てて録った音は、他のどこにもない唯一無二のオリジナルの音じゃないですか?そういう部分に当時の僕たちは価値を感じていました。ミュージシャンがサンプリングとして何かの音を録るときは、そういう側面が求められていることも多いと思います。
なので、「人の海で」という曲だからマッチを選んで収録したということではないんですね。
これは、「森山の祖父母の家」「子どもの頃によく遊んでいた庭」というような具体性が大事だった「またあした」とは逆で、「その部屋にあったマッチ」「メンバーと一緒に収録した」というような具体性を分離させて、音だけを剥ぎ取っているようなイメージですね。

今井:マッチじゃなきゃダメということではないよね。

森山:ということではないですね。マッチを擦ってこの音が録れたんだけど、録った以上それはただの音としてしか扱っていないというか。それをただ曲の中で使っているというような形です。

今井:これは両方の曲について聞きたいのですが、「こういう音が入っているといいな」というのがどういうタイミングで出てきたのでしょうか?

森山:それに関しては実は順序が逆でして、そもそもこういう音が頭の中にあって、それが楽曲に欲しくて狙って録ったというわけではないんですね。今回の場合は、いろいろ音を録ってみようという時間がまず先にあったんですよ。その中でスタジオの身の回りにあるものを触ってみたり、マッチを擦ってみたりということをして録って、それを聴いてみると「あ、面白い!」みたいなところから、逆に発想の取っ掛かりをもらって、楽曲を作っていくという感じでしたね。
ただこれも4、5年前の曲で、いまの僕自身のフィールドレコーディングやサンプリングというものに対する考え方は、変わってきている部分があるので、最近の楽曲でもこういうやり方をするのかと聞かれると少しまた違う部分もあるのですが、当時はそういう風に楽しんでいました。

今井:それは生活の中で、特に自分の身の回りにあるものとかで、とにかくいろいろ録ってみようという時期だったという感じだったんですかね?

森山:そうですね。当時のサンプリングをするということの発想の発端は、先ほども話しましたように、その音がオリジナルであることが大事だというところだったと思うんですね。なので、今のように日頃からいろいろ録っているというよりかは、音楽を作るぞと思ったときに、音を集めるような。
それともう一つ、例えば、スネアの音やドラムの音、ベースの音、ギターの音というのも、それらも厳密にいえばその人が叩いたり、機材によってもひとつひとつ音が違ったりするわけですよね。録る場所や環境によっても音が違うので、そういう意味では楽器の音でも全てオリジナルではあるんです。
ですが、そういうものってある意味では音楽のために抽象化されている音じゃないですか?ベースの音といったら、みんなが思い浮かべるベースの音や、役割があると思うんですね。でもマッチや紙には楽曲のリズムを支えるとかハーモニーを作るというような音楽のための役割は無いですよね。そういう意味で、楽器という抽象的な要素だけで音楽を作るという、そのレイヤーを飛び越えるために、具体的な音や、自然界にある音を使うことで、ベクトルを1本増やすというか、次元を1つ大きくするような。そういうニュアンスで使っていたということですね。

今井:なるほど。

森山:ということで、紙の擦る音が使用されている「時間と距離と僕らの旅」を聴いていきましょう。



今井:これはめちゃくちゃ大きく紙の音が出ていましたね。

森山:こう聴くとめちゃくちゃ出ていますよね。

今井:気づかないものですね。

森山:ただ音楽の中で聴くと、1つの楽器的な要素に聴こえるというか。もともとは紙を擦った音でしたということですね。でもあんまりこういう元ネタみたいなものを見せすぎると、若干それが気になってきてしまうと思うので、聴く耳のバランスが変わってしまうと思うんですよね(笑)。

今井:(笑)。でもこの曲もリリースして随分経ちますので、改めてこういう切り口で教えてもらうと、すごく深みが増して聴こえるんじゃないかなと思いますね。

森山:たしかにそうですね。ということで、odolでフィールドレコーディングの音が使われている楽曲のお話でした。
そして、前回の放送に対する皆さまからの反応をたくさんTwitterを通していただけたのですが。

今井:たくさんツイートしてくださっていましたね。

森山:僕自身もいくつかツイートを拝見させていただいて、僕が語る必要ないくらいすごく良いコメントが多くありましたので、今回はいただいたコメントを元に話を広げさせてもらえたらなと思っています。

今井:はい、それではご紹介します。『森山さんが実際に過ごしていた生活の一隅が落とし込まれたものを改めて意識して聴くと、「またあした」はとてもいい曲に昇華した気がしました。自分の中ではいままでは間奏曲という感じでした。ただ切り取って背景音として使うのではなく、今井さんも言ったようにビートと融合しているのもすごい。』

森山:ありがとうございます!

今井:これは素晴らしい汲み取り方をしていただきましたよね。

森山:こうやって言っていただけると嬉しいですね。
このコメントで特にいいなと感じた部分が、『森山さんが実際に過ごしていた生活の一隅が落とし込まれたものを改めて意識して聴くと〜』と書いていただいているのですが、フィールドレコーディングというのはまさにその「僕が実際に過ごしていた」という所にとても重きがあると感じているんですね。
前回のミュージックコンクレートのお話の中で、具体的/抽象的みたいな話をしたと思うのですが、その具体的であるというのは、辞書的な意味では「個々の事物に即しているさま」と説明されているのですが、その「個々の事物」というのは結局、ある個人が、特定の場所であったり、時間であったりとかの中での経験にひとつひとつ紐づいていて、経験的であるとも言えると思うんですね。
そういう、僕のとある1つの経験というのを音で記録して、それを誰かが聴いて、またその人の経験の中で音から物語とか空間とか、何かを紡ぎ出すみたいな。そのプロセスって完全に普段音楽でやっているのと同じじゃないですか。

今井:たしかに。

森山:フィールドレコーディングというものの中にもそういう側面や構造がすごくあると思っています。それは人から人へでなくても、過去の自分から今の自分へとか。昔録った音をいま聴くとそれでしか立ち上がらない空間が生まれるみたいなこととかが、僕は面白いなと思っております。

今井:次のツイートを読みます。『フィールドレコーディング=音の写真。わかりやすい。イメージが湧いた。そしてOAのバックで流れている音と、タイムフリーで聴いている時間帯の自宅で聴こえる鳥の音とリンクしていて不思議な感じ。』これはまた楽曲が生まれた...。

森山:本当ですよね。すごく何というか、的確な表現だなと思います。音の面白さって、簡単に混ぜることができるという部分にもある思うんですよ。それは音というのが空間的なものだからこそですよね。それに対して色や形というのは、その物に張り付いているじゃないですか?だからこのノートの色と机の色を混ぜることは難しいのですが、ノートと机をぶつけると、ノートの音と机の音が混ざるじゃないですか?(乱暴な説明ですが...!)

今井:なるほど!

森山:それって音ならではの特徴の一つだと思っています。空気とかもそうなのですが。音というのは振動なので簡単に混ざってしまいますね。絵や写真って簡単には混ぜることはできないですよね。でもゲームセンターとかに行くと何十種類もの音楽が混ざりあっていますね。音というのは最初からその空間的な存在であるから、このコメントで言っていただいているように、複数の時間や空間が簡単に混ざってしまうんですよね。
僕が自然の音を収録した時間、ラジオを収録していた時間と、この方が現実に過ごしていた時間というのが、そのとき混ざっていたという。そしてこのコメントをくださった方が、そう混ざり合っていたその場の音を、そういう聴き方をしてくださっていた時間が、すごく魅力的なものに感じられるなーと思いましたね。

今井:音楽的ですね。ありがとうございます。それでは次のツイートです。『人間の耳はカクテルパーティー効果というか、意識的・無意識的に音の選別をしてしまうけれど、フィールドレコーディングだとその場の音が選別されずに録れて、耳では気づかなかった音の重なりがあったり、そういうものもフィールドレコーディングの面白さだったりするのかなと考えました。』

森山:いやーすごい。まさにそういう面白みを感じています。そしてカクテルパーティー効果の話がありますね。

今井:これはなんですか?

森山:これは簡単にいうと、すごくザワザワしたところでも、自分の名前とか自分が重要に思っていることとか、そういうワード、音を瞬時に判別して、そこにフォーカスが当たるという効果のことです。そのカクテルパーティー効果とかを考えると、耳ってものすごく性能の良いマイクというか、AI搭載で音に合わせて性能を自在に変えることができるような究極のマイクにも思えますね。他にも耳にはコンプレッサー的な機能もあって、大音量に対しては自動的に取り込む音を下げてくれたりもします。でもそういう耳の素晴らしい性能ってオフにすることはできないんですよね。
逆にいうと、フィールドレコーディングや録音の面白いところは、その性能をオフにできる部分にもあるとも言えるかなと思います。このコメントでも言っていただいているように、「無意識的に音の選別をしてしまうけれど」という部分を乗り越えられるというか。本当に収録時に気づけなかった音が聴こえてくることもあるし、当然といえば当然なのですが、そのとき聴いている音と、収録したものを聴く時では全く聴こえ方は違いますからね。

今井:このツイートはすごくわかる〜と思いましたね。一旦フラットになるというか、耳では気づかなかった部分というのに気づけるというのが、1つのフィールドレコーディングの面白さ。
この部分というのは、「たしかにこれはかなり大きいかも」という風に思いましたね。

森山:ちなみにこちらのコメントにあるような、その場では「気づかなかった重なり」という観点で、僕も最近の録音があるので、この辺りで音を聴いてみましょう。このコーナーをやるきっかけにもなった、長野での展示に行ったときに松本城を訪れまして、そこの周辺での音になります。

(松本城で録音した音)

森山:というような音となります。

今井:いろんな音が入っていましたね。

森山:これはなんてことのない録音なのですが、どういう状況で録ったかというのをご説明します。閉館時間の5分前くらいだったんですね。出入り口付近で録っていました。
人も少なくて、途中会話(そこに植えられている「宇宙ツツジ」の文字を読み上げる声)や足音がいくつか聴こえたと思うのですが後半少し急ぎ足で出て行かれる方もいて。
途中で鳥の鳴き声がすごく大きく聴こえたところがあったと思うのですが、この時僕はマイクを置いて離れたところにいたんですよ。そしたらマイクのところにスズメが降りてきて、すごく近くで鳴いたり、羽ばたく音とかが収録されているんですね。その羽ばたきでマイクに風が当たり「吹かれ」という、"ボフ"という音が少し入ってしまったのですが。
それと同時に、よく聴くとかすかに水の音が聴こえるんですね。その音は何かというと、松本城の塀の近くで録っていたのですが、お城なのでその外にお堀があって、その水(と魚や風)の音なんですよね。
今挙げた、「宇宙ツツジ...」と呟く人と、閉館間際の少し早い足音と、すごく近い距離のスズメと、塀の外側のお堀というのがありますよね。これらって、一見要素としてはすごくバラバラな感じと言いますか、写真や映像でこれらの重なり合いを収めることって難しいのではないかなと感じるんですね。でも、音としては確かにこの時こういう風に重なり合っていたわけです。
それと、このツイートでいただいたような、「耳では気づかなかった音」という話でいきますと、僕はその場にいるときはお堀が見えていないから、水の音には気づかなかったんですよね。でも後になって聴いてみると、「あれ?この水のような音ってなんの音だろう?」と考えて、その時には意識していなかったお堀の存在が、歩く人やマイク付近に降り立つスズメと同じレベルで、そこにあったものとして立ち上がってきたんですね。

今井:なるほど、面白いですね。

森山:そういう部分で、その場にいる時には耳の機能や、それだけでなく視覚などとの関連によってもカットされたり見(聴き)過ごしてしまっている情報がすごくいっぱいあるんだろうなという風に感じられますね。

今井:立体的というか。本当に写真とか映像とは違うもの、平面だけではないものというのをすごく感じますね。
それではもう一つ紹介させていただきます。『そういえば私が2歳のときに録音したカセットテープがあった。テレビに合わせて歌ったり、絵本を音読したり、何気ないおしゃべりを録りたかったようだけど、母が食器を洗う音の時間の方が長かった。あえて音だけを選んだのではなく、家にビデオカメラがなかったからですが、でももう少し大きくなってからそのカセットを聴くのが好きだったんですよね。滑り込みタイムフリーで聞き直しながらそんなことを思い出しました。』これは素敵ですね。その時の過ごした時間というのが思い出されますよね。

森山:素晴らしいですね。フィールドレコーディングの話とは違いますが、僕も小さい頃、自分がもっと小さい頃の映像とかをみるのすごく好きだった記憶がありますね。自分を確認するというか。

今井:ありますよね。

森山:それが音でも残っているというのは良いですね。

今井:音だけでイメージできるんですよね。ここでいう親子の会話や関係性、家庭の中の雰囲気みたいなもの。僕も個人的な話で恐縮ですが、2歳くらいのときのウルトラマンタロウの主題歌を歌っているカセットテープがあって、そこでの母親や姉との会話が一緒に入っていて、それはすごくいいなという風に思った記憶がありますね。

森山:良いですね。このいただいたツイートに、「何気ないおしゃべりとかを録りたかったようだけど、母が食器を洗う時間だけの方が長かった」と書かれていますね。もしこの方のお家にビデオカメラがあって、これをビデオカメラで回していたら、収録を止めてしまっていたかもしれないですね。

今井:そうですね!

森山:カセットテープだからこそ回しっぱなしにしていたというのはありそうですね。ビデオカメラには大抵ディスプレイやファインダーが付いていて覗きながら撮影をすると思いますが、カセットテープだとヘッドフォンでモニターをしながらというよりは、テープレコーダーをただ置いていたのではないですかね。
母が食器を洗うだけの時間って、子ども時代の生活の中でとても些細ではありながら、割と大きな部分を占めていると思うんですよね。良い音なんだろうなと想像します。

今井:そうですね。毎日の習慣という感じですよね。

森山:けれど見過ごされるというか。そこがかけらでも残っているのはすごく素敵なことに感じてしまいますね。いや、改めて皆さんのコメントすごく面白いですね。

今井:本当に素晴らしいです。皆さんこうやってハッシュタグで番組の感想を書いていただけると、すごくキャッチボールしている感じで良いですね。

森山:ラジオならではな感じがして、いいですね。

IMG_1775_20220622.jpg
6月22日(水) オンエア楽曲
odol「虹の端(Rearrange)」
odol「人の海で」
odol「時間と距離と僕らの旅」
odol「four eyes」

番組へのメッセージをお待ちしています。
Twitter #fmfukuoka #RoomH をつけてツイートしてください。MC3人ともマメにメッセージをチェックしています。レポート記事の感想やリクエストなどもありましたら、#SENSA もつけてツイートしてください!


RADIO INFORMATION

FM 福岡「Room "H"」
毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"203号室(毎週水曜日の26:00~26:55)"では、音楽番組「Room "H"」をオンエア。九州にゆかりのある3組のバンド、ユアネスの黒川侑司、松本大、odolの森山公稀が週替わりでMCを務め、本音で(Honestly)、真心を込めて(Hearty)、気楽に(Homey) 音楽愛を語る。彼らが紹介したい音楽をお届けし、またここだけでしか聴けない演奏も発信していく。

放送時間:毎週水曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)


番組MC
Yuji_Kurokawa_a_1500.jpg
黒川侑司(ユアネス Vo.&Gt.)
福岡で結成された4人組ロックバンド。感情の揺れが溢れ出し琴線に触れる声と表現力を併せ持つヴォーカルに、変拍子を織り交ぜる複雑なバンドアンサンブルとドラマティックなアレンジで、
詞世界を含め一つの物語を織りなすような楽曲を展開。
重厚な音の渦の中でもしっかり歌を聴かせることのできるLIVEパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2021年12月1日に初のフルアルバム「6 case」をリリース。
オフィシャルサイト @yourness_on @yourness_kuro

matsumoto_solo_20220309.jpg
松本大
2006年に長崎県で結成。バンド名「LAMP IN TERREN」には「この世の微かな光」という意味が込められている。松本の描く人の内面を綴った歌詞と圧倒的な歌声、そしてその声を4人で鳴らす。聴く者の日常に彩りを与え、その背中を押す音楽を奏でる集団である。
2021年12月8日にEP「A Dream Of Dreams」を配信リリース。
オフィシャルサイト @lampinterren @pgt79 / @lampinterren

odol_moriyama_202111.jpg
森山公稀(odol Piano&Synth.)
福岡出身のミゾベリョウ(Vo.)、森山公稀(Pf./Syn.)を中心に2014年東京にて結成した3人組。ジャンルを意識せず、自由にアレンジされる楽曲には独自の先進性とポピュラリティが混在し、新しい楽曲をリリースする度にodolらしさを更新している。
2022年3月16日に「三月」を配信リリース。
オフィシャルサイト @odol_jpn @KokiMoriyama


LINK
FM福岡「Room "H"」

気になるタグをCHECK!