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2021.11.26
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それぞれの「新たな始まり」を示した夜、 bonobos・Keishi Tanaka・LITE・odol出演「Soundscape」ライブレポート
11月22日、FRIENDSHIP.が主催するイベント『Soundscape:Curated by FRIENDSHIP.』が恵比寿LIQUIDROOMで開催され、bonobos、LITE、Keishi Tanaka、odolの4組が共演を果たした。「Soundscape」とは、昨年4月のステイホーム期間に「景色を想像できる音楽」をテーマとして、FRIENDSHIP.が作成したプレイリスト。それから約一年半が経過して、緊急事態宣言の解除とともに少しずつかつての日常が戻りつつある中で行われたこのイベントは、各出演者にとっても、この場に駆け付けたオーディエンスにとっても、新たな始まりの一夜になったはずだ。
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トップバッターのodolは7月からメンバーが3人となり、新体制でのライブはこの日が2回目で、東京では初お披露目。サポートにはギターの西田修大とドラムの深谷雄一という、中村佳穂の傑作『AINOU』の参加メンバーでもある2人が迎えられた。リリースされたばかりの最新作『pre』では深谷とともにギターで岡田拓郎が参加していたが、コラボレーションの自由度が上がったことは、バンドの可能性を広げたと言える。
ライブは今年発表したアルバム『はためき』収録の「未来」からスタート。空間系のエフェクトを駆使したギターと、ローの効いたベース、長短のディレイをかけ、同期も走らせたボーカルがアンビエント感のある独自の音像を作り出しつつ、開かれたメロディーと4つ打ちを基調としたリズムが前向きな印象を与える。続く「泳ぎだしたら」ではミゾベリョウもギターを持って、西田とともにウォールオブサウンドを立ち上げたかと思えば、「小さなことをひとつ」では森山公稀によるピアノのリフレインとストリングスが穏やかなムードを作り出したりと、曲ごとの質感の変化も印象的だ。
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時報のようなシーケンスを特徴とする「夜を抜ければ」は、ミニマルなギターフレーズの一方で、自由に動くShaikh Sofianのベースラインが耳に残る。〈それでも夜を抜ければ 新しいことばかりだ〉と歌うこの曲は、上京して間もない頃、深夜に部屋のなかで一人ピアノを弾いていた情景とリンクする曲だが、その景色がステイホームの期間ともリンクし、そんな時期を抜けて新たな何かが始まりつつあることを感じさせる。ラストは「虹の端(Rearrange)」で再びウォールオブサウンドを作り出し、西田がアームを用いたシューゲイズなプレイとソロで改めて存在感を示して、ステージが締め括られた。
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2組目に登場したのはKeishi Tanaka。彼はこの一年半の間も弾き語りを中心に活発にライブ活動を行ってきたが、7人編成のバンドセットは一年ぶり。まずはサポートメンバーがステージに現れ、セッション風の「How's It Going」が始まると、途中でKeishiが登場し、「This Feelin' Only Knows」へ。サックスとトランペットを交えた編成も手伝い、一気に華やかなパーティーモードに突入し、〈はじまりの合図 もう遮る話の向こう 遠くの夜に愛を仕掛けよう〉という歌い出しからして、やはり新たな始まりを感じさせる。
その後もテンション高く「It's Only My Rule」を続け、「Show Respect」では「僕らとクラップで遊びませんか?」とオーディエンスにクラップを求めると、サビでは一斉に手が上がり、さらにはPAJAUMIこと「パジャマで海なんかいかない」としても活動する別所和洋が軽快なピアノソロを聴かせる。「言いたいことはたくさんあるけど、今日はその時間をカットします。一曲でも多く踊っていってほしい」と伝えると、多幸感あふれる「Floatin' Groove」、LUCKY TAPESでも活動する田口恵人がファンキーなベースソロを聴かせる「The Smoke Is You」と続け、「Just A Side Of Love」で配信用のカメラに向かい、ステージを指さしながら、〈いつもの場所で待ち続けよう〉と呼びかけたのは非常に印象的なシーンだった。
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最後に披露されたのは「みんなで歌えるようになったら、全員で歌いたいと思って作った曲」だという新曲「I'm With You」。ゴスペルコーラスに乗せて、〈灰になる前の日々を抱いて 生きることをまた始めようか〉と歌うこの曲もまた、新たな始まりを高らかに響かせる一曲だった。
3組目に登場したLITEは、この一年半の間も歩みを止めることなく、進化を続けてきたバンドだ。ステイホーム期間中は遠隔でのリモートセッションを成功させ、その一方、コラボレーションによる新曲やリミックスをデジタルで定期的に発表し、その集大成となった10月のワンマンライブは非常に素晴らしかった。よって、LITEに関しては「新たな始まり」というよりも「常に始まり続けている」という印象で、この日はひさびさの異種格闘技戦的なイベントを平熱で楽しみつつ、ただその平熱がめちゃめちゃ高いとでもいうような、圧巻のステージを見せてくれた。
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ライブは隙間を生かしたソリッドなグルーヴを聴かせる「Temple」から始まり、武田信幸がタッピングを駆使したフレーズなどを織り交ぜながら、バンド全体がジワジワと熱を帯びていく高揚感がたまらない。続く「Hunger」ではファンキーなリズムにダブ展開も織り込み、「Blizzard」ではエレドラによるミニマルなビートにシンセも交えてエレクトロニックな質感を生み出しつつ、そこにギターがレゲエのリズムを加え、後半でバーストする構成によって、多彩なアレンジを強く印象付けた。
ゆるめのMCを挟み、後半はテクニカルなフレーズが多数詰め込まれたLITEの楽曲の中でも特にテクニカルな部類の「Bond」から始まり、武田によるリアルタイムサンプリングを駆使したイントロから、山本晃紀がオーディエンスを煽り、ハードコアな演奏に突入する展開が手に汗握る。さらに、こちらもこの一年半の間の成果と言える、映画『騙し絵の牙』の劇伴用に書かれたアッパーな「Breakout」で疾走すると、ラストは初期の名曲「Phantasia」でプログレッシブな世界を構築。この日唯一のインストバンドで、最も硬質な音を鳴らしながらも、開かれたポップネスとインテリジェンスは他の3組とも共振し、そして何より「バンドの演奏を生で体感するのはやっぱり最高」と思わせてくれるステージだった。
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イベントのトリを務めたのはbonobos。この一年半は数こそ少ないながらもライブを行いつつ、じっくりと制作を続けていたようで、この日はその片鱗を感じさせるライブとなった。CRCK/LCKSや象眠舎としても活動する小西遼をサポートに迎えた6人編成で、「THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)」から華やかにライブがスタートすると、アウトロでは早速小西のサックスをフィーチャー。続く「Hello Innocence」では森本夏子のベースによるループフレーズを軸としながら、トーキング・ヘッズを現代に更新するようなミニマルで幾何学的なグルーヴを長尺で聴かせると、12/8(水)に配信リリースを行う新曲「KEDAMONO」でも複雑な拍子を駆使しながらグルーヴを紡ぎあげていく。ハイエイタス・カイヨーテにも負けず劣らずなリズム構築は、バンドのさらなる進化を感じさせるものだった。
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ライブ後半では「Cruisin' Cruisin'」を挟んで、7月に発表された新曲の「Not LOVE」を披露。小西のクラリネットをフィーチャーし、ネオソウルやジャズの色を引き継ぎながら、エレクトロニックな質感やロック的なダイナミズムも混ぜ合わせたアレンジとそれを再現するバンドの力量がやはり素晴らしい。そして、「多様性」の明と暗がどちらも浮かび上がり、様々な愛の形を歌うラブソングが生み出されたこの一年半のなかで、日英韓の3か国語を混ぜ合わせることにより、使い古された「愛」ではなく、新時代へのアップデートを歌ったこの曲は、間違いなく今年を代表する一曲だと思う。蔡忠浩はこの1年半、歌詞を書くのに相当苦労したと語っていたが、その成果が見られるであろう来年が今からとても楽しみだ。アンコールでは一夜の締め括りに相応しい「グッドナイト」が歌い上げられ、美しいサウンドスケープとともに濃密なイベントが幕を閉じた。
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文:金子厚武
写真:稲垣ルリコ、マチダナオ
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恵比寿LIQUIDROOM
出演:bonobos、Keishi Tanaka、LITE、odol
配信チケット:¥3,000(税込)
アーカイブ配信期間:2021年11月30日(火)23:59まで
受付URL : https://w.pia.jp/t/soundscape-1122/
※配信チケットの販売は11/30(火)20:00まで
Keishi Tanaka オフィシャルサイト
LITE オフィシャルサイト
odol オフィシャルサイト
FRIENDSHIP.
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ライブは今年発表したアルバム『はためき』収録の「未来」からスタート。空間系のエフェクトを駆使したギターと、ローの効いたベース、長短のディレイをかけ、同期も走らせたボーカルがアンビエント感のある独自の音像を作り出しつつ、開かれたメロディーと4つ打ちを基調としたリズムが前向きな印象を与える。続く「泳ぎだしたら」ではミゾベリョウもギターを持って、西田とともにウォールオブサウンドを立ち上げたかと思えば、「小さなことをひとつ」では森山公稀によるピアノのリフレインとストリングスが穏やかなムードを作り出したりと、曲ごとの質感の変化も印象的だ。
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時報のようなシーケンスを特徴とする「夜を抜ければ」は、ミニマルなギターフレーズの一方で、自由に動くShaikh Sofianのベースラインが耳に残る。〈それでも夜を抜ければ 新しいことばかりだ〉と歌うこの曲は、上京して間もない頃、深夜に部屋のなかで一人ピアノを弾いていた情景とリンクする曲だが、その景色がステイホームの期間ともリンクし、そんな時期を抜けて新たな何かが始まりつつあることを感じさせる。ラストは「虹の端(Rearrange)」で再びウォールオブサウンドを作り出し、西田がアームを用いたシューゲイズなプレイとソロで改めて存在感を示して、ステージが締め括られた。
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その後もテンション高く「It's Only My Rule」を続け、「Show Respect」では「僕らとクラップで遊びませんか?」とオーディエンスにクラップを求めると、サビでは一斉に手が上がり、さらにはPAJAUMIこと「パジャマで海なんかいかない」としても活動する別所和洋が軽快なピアノソロを聴かせる。「言いたいことはたくさんあるけど、今日はその時間をカットします。一曲でも多く踊っていってほしい」と伝えると、多幸感あふれる「Floatin' Groove」、LUCKY TAPESでも活動する田口恵人がファンキーなベースソロを聴かせる「The Smoke Is You」と続け、「Just A Side Of Love」で配信用のカメラに向かい、ステージを指さしながら、〈いつもの場所で待ち続けよう〉と呼びかけたのは非常に印象的なシーンだった。
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3組目に登場したLITEは、この一年半の間も歩みを止めることなく、進化を続けてきたバンドだ。ステイホーム期間中は遠隔でのリモートセッションを成功させ、その一方、コラボレーションによる新曲やリミックスをデジタルで定期的に発表し、その集大成となった10月のワンマンライブは非常に素晴らしかった。よって、LITEに関しては「新たな始まり」というよりも「常に始まり続けている」という印象で、この日はひさびさの異種格闘技戦的なイベントを平熱で楽しみつつ、ただその平熱がめちゃめちゃ高いとでもいうような、圧巻のステージを見せてくれた。
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ゆるめのMCを挟み、後半はテクニカルなフレーズが多数詰め込まれたLITEの楽曲の中でも特にテクニカルな部類の「Bond」から始まり、武田によるリアルタイムサンプリングを駆使したイントロから、山本晃紀がオーディエンスを煽り、ハードコアな演奏に突入する展開が手に汗握る。さらに、こちらもこの一年半の間の成果と言える、映画『騙し絵の牙』の劇伴用に書かれたアッパーな「Breakout」で疾走すると、ラストは初期の名曲「Phantasia」でプログレッシブな世界を構築。この日唯一のインストバンドで、最も硬質な音を鳴らしながらも、開かれたポップネスとインテリジェンスは他の3組とも共振し、そして何より「バンドの演奏を生で体感するのはやっぱり最高」と思わせてくれるステージだった。
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文:金子厚武
写真:稲垣ルリコ、マチダナオ
LIVE INFORMATION
Soundscape : Curated by FRIENDSHIP.
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恵比寿LIQUIDROOM
出演:bonobos、Keishi Tanaka、LITE、odol
配信チケット:¥3,000(税込)
アーカイブ配信期間:2021年11月30日(火)23:59まで
受付URL : https://w.pia.jp/t/soundscape-1122/
※配信チケットの販売は11/30(火)20:00まで
LINK
bonobos オフィシャルサイトKeishi Tanaka オフィシャルサイト
LITE オフィシャルサイト
odol オフィシャルサイト
FRIENDSHIP.