REPORT

2026.02.04

Hammer Head Shark、Hedigan'sを招いた『After 27℃』で捧げた消失を超える慈愛──「私もあなたを愛します」

Hammer Head Shark、Hedigan'sを招いた『After 27℃』で捧げた消失を超える慈愛──「私もあなたを愛します」

2026年1月9日(金)、東京・渋谷WWWにてHammer Head Sharkが自主企画『After 27℃』を開催した。2025年6月にバンド初となるフルアルバム『27℃』を産み落とし、『Before 27°C tour』と題した全8公演に及ぶツアーを8月に完遂した彼ら。同作から次のフェーズへと向かうべく、Hedigan'sを招いたこの日は、ロックバンドがロックバンドであるための夜だった。

「負けたことある人?俺だって、負けたことあります。別に勝たなくたって良いと思うよ」。乾杯の音頭をとるがごとき間延びした空気感で、河西"YONCE"洋介(Vo,Gt)が話す。Hedigan'sはこの日、この台詞に象徴される、勝ち負けにも、音色にも、メトロノームにも左右されない、1秒ごとに変化する体温を即座に反映させる楽曲たちを届けてみせた。

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藍色の光が会場に充満すると、キラキラとした音が鳴り出す。鷹揚としたギターが加われば、「Fune」でキックオフである。親指でしずしずと押し込まれるベースラインを土台に〈早くあの場所に辿り着かなきゃ〉とリフレインするこの歌は、ややもするとホームグラウンドをいち早く捨て去れとでも言うような脅迫感にも繋がり兼ねないけれど、ここには自問自答を重ね、深層へダイブしようとする背中が存在するのみ。

〈白骨死体〉〈幸せな顔で滅びた種族〉と命の残骸を想起させるワードを不意に浮かばせる「その後...」だって、セクシュアルでちょっぴり下品なハンドサインと共に「良かったら、ロックンロールしない?」と誘った「But It Goes On」だって、情けなさやどうしようもなさに塗れたまま、魂を解き放っていく楽曲群だ。つまり彼らは、嘘偽りのない、生臭い営みをアンサンブルに翻訳していく行為をロックと呼んでいるのではないか。

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そう考えると、誰もが主役だとでも断言するようにそれぞれの楽譜が混線し、結果としてパンキッシュな手触りに収斂していったクライマックスの見方も一意に定まるはず。5人の立ち位置もぐちゃぐちゃだった通り、彼らは「思うままに行け」と、「やりたいことをやれ」と吠えていたのだ。

27。その2文字からは否応なしに、硝煙の匂いや薬物の気配、死の香りがする。ジャムセッション的な勢いを纏い、グランジからの影響を藤本栄太(Gt)のギターリフと音像にリフレクトする「アトゥダラル僻地」で幕開けを告げた瞬間、Hammer Head Sharkにとって今宵の命題は、希死念慮と対峙しつつ生き長らえている中で、いかにロックバンドになっていくのかだと直感した。アンコールにて「ジャンルなんて何だって良くて。ただ、ロックンロールがしたい。だから、Hedigan'sを呼んで良かった」と福間晴彦(Dr)が口にした言葉は、そのクエスチョンに対する1枚の回答用紙であり、Hammer Head SharkにとってHedigan'sが問答無用のロックスターであったことを示していたと言えよう。

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のっけから消失への誘いを超越する前傾姿勢を見せつけたとはいえ、彼らの楽曲と黄色い線の外側へ惹かれてしまう思いは不可分。今にも身体がはち切れてしまうのではと思うほどの微細な震えを抱え込んだながいひゆ(Vo)のアカペラに、グンと歪んだ後藤旭(Ba)のベースが重なる「しんだことになりたい」の〈時々壊れちゃうから 訳もなく虚しいのさ〉なんて最終ラインには、突如襲来する寂寞と焦燥に胸を掻きむしる様子がスナップされているし、福間の下へとメンバーがスッと終結していく姿からHammer Head Sharkの一蓮托生っぷりが垣間見えた「綺麗な骨」もそこに込められた思いは変わらない。肉体を破り捨てでも分かち合いたい孤独、宛先の見つからない怒り、無力感。渦を巻くこうした感情が、随所で語っている「安心できる場所でありたい」「音楽で居心地の良い場所を作りたい」という願いと結ばれていくのが4人の作品であり、ステージである。小さく頷きながら「名前をよんで」を歌い上げるながいの穏やかな表情は、「この場所は安心だよ」と頬に触れるみたいに語りかけていた。

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ライブも中盤に差し掛かり、「アコギを入れてみました」と嬉しそうに投下したのが「チューリップ」。マーチングビート上で朗々と<僕は君が思うよりも平気だよ 悲しいことも少し好きだからさ>なんて少しばかりの希望と「だから、安心して先に行ってよ」という優しさが溢れかえる同ナンバーは、哀しみに溺れるだけではなくなった現在のHammer Head Sharkを代弁する1曲のはず。それゆえに、トントンと2音を鳴らし、続けて披露された「Dummy Flower」の<ねえ、消えてよ 何も知らないくせに>といった強烈なラインが濃い影を帯びていく。なんせチューリップという瑞々しく咲き誇る花々を描写した後、一転、造花へと視点を移動させるのだからその構成は見事。さらに言えば、「Dummy Flower」のジャケットにはチューリップが収められているわけで、この2曲は月と太陽さながらに対を担っているのではないか。

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そして、両者を通じ、かそけき幸福を手放しで喜ぶわけではないそのアティチュードにはHammer Head Sharkの優しさが投影されていたように思う。取材にて「情の押し付け合いで衝突が起きるなら、消滅の方が美しいなと。自分にとっての優しさが消滅になったんです」と語ってくれた通り、彼らはある種自己犠牲的な側面を持ち合わせており、その性格は自らのハッピーが誰かを傷つけることに自覚的だとも捉えられるはず。だからこそ、彼らは「チューリップ」だけで句点を打つことなく、「Dummy Flower」でネガティブな一面へ焦点を当て、この場に集った全ての人を掬い上げんとしていたのだ。

分厚い音の壁を建立するように掻き鳴らしに掻き鳴らしを重ねていくアウトロが印象的な新曲で幕を降ろす直前、ながいはこう語った。

「私の愛しているものを愛してくれているから、私もあなたを愛します。音楽をやっている間だけは、正しく愛せる自信があって。そこにいて、生きていてくれてありがとうございます」

正しくあることの難しさだって、残酷さだって百も承知。それでも彼らは、目の前のあなたを真っ直ぐに愛するために爆音を鳴らす。アンコールで披露された「たからもの」のタイトルも、ステージを降りる直前にながいが贈った投げキッスも、Hammer Head Sharkからオーディエンスへと手渡すお守りそのものだったに違いない。彼らは27という数字を超え、他者の弱さを抱きしめ、肯定するバンドへ殻を破り始めている。

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文:横堀つばさ
撮影:藤咲千明

RELEASE INFORMATION

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Hammer Head Shark「27℃」
2025年6月25日(水)
Format:Digital

Track:
1.名前を呼んで
2.Blurred Summer
3.アトゥダラル僻地
4.Dummy Flower
5.レイクサイドグッドバイ
6.Daisy
7.Gummi
8.しんだことになりたい
9.綺麗な骨
10.うた
11.園
12.たからもの

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LIVE INFORMATION

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オフィシャルサイト
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@hammerheadshark_band
@hammerheadshark2900

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