SENSA

2025.10.09

大阪・寝屋川発grating hunny、つきみを迎えた自主企画で見せつけた人生を変える悪ふざけ「バンドって、魔法でも仕事でも革命でも奇跡でもなくて、悪ふざけなんです」

大阪・寝屋川発grating hunny、つきみを迎えた自主企画で見せつけた人生を変える悪ふざけ「バンドって、魔法でも仕事でも革命でも奇跡でもなくて、悪ふざけなんです」

2025年10 月5 日(日)、大阪・寝屋川発の4人組ロックバンドである grating hunnyが、自主企画『体育館壊す』を東京・下北沢SHELTERにて開催した。2025年7月にSEEZ RECORDSより発表した「インソムニアの底で」を皮切りに、「student」「未成年だった」と3カ月連続でのリリースを終えた彼ら。ここでは、3カ月の集大成として、そしてひとつのマイルストーンとして、つきみを迎えた同公演の様子をレポートする。

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開口一番、ににちゃん(Vo,Gt)のシャウトで始まりの合図を鳴らしたつきみは、「君のすべてを全部壊してしまいたかった」を1曲目にチョイス。しゅか(Dr,Cho)が全体重をかけるビートとりーたんが(Ba,Cho)が唸らせる低音、音割れすれすれの歌声に乗せ、グチャグチャになった君の心に潜り込んで、不格好でダサいことまみれの全てを愛したいんだというメッセージが初っ端から迫ってくる。いやむしろ、この曲に限らず、彼女たちは「絶望だらけの毎日を生きろ」と、「ただただ今日を生き抜け」としか言っていない。それは「大切な歌!」と投げ込んだ「さよなら春」を終え、ににちゃんが語ったこんな台詞からも明らかだった。

「何もなく、とりあえず1日を終えることは難しくて。何の絶望にも襲われないように朝を迎えるのがどれだけ難しいか。仕事だって、学校だって、自分で選んだことなのに絶望してしまうこともあるけれど、でも生きてくれていたから今日出会えたわけで。君たちが死にたい夜を超えた今日、お互いを抱きしめ合えるようなライブをします」。

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一歩間違えれば綺麗ごとや一時の慰めにしかならない言葉でも一切の嘘偽りなく響くのは、〈クソみたいに生きていた しがみついて生きてる自分を 肯定する歌を歌って〉〈救われたかった頃の自分を 抱きしめるように 歌えているだろうか〉(「さよなら春」)と自問しているように、彼女たち自身がちょーバッドな日でも、ありとあらゆる出来事が敵に思える日でも死んでたまるかと拳を握りしめているから。この日披露した「強い天使も超吠える」や「消えないで天使」をはじめ、つきみの曲中に幾度も舞い降りる天使とは、ただ無垢でピュアな存在であるわけじゃない。それはきっと、役目を遂行してすっかり黒ずんだ消しゴムのように、立ちふさがる現実に打ちひしがれても、どうにか明日へと辿り着かんとしている美しいあなたのことなのだろう。「消えないで天使」で〈絶望の果てに産み落とされた天使よ どうか強く強く生きてくれないか〉と祈りを捧げる中、ににちゃんが口にした「あんたらに言ってんだよ!」の叫びは、まさしくそのことを証明していたのである。

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「どうしようもない毎日を迎えてきたあんたが、今日を愛せますように」と届けた「ワールドエンド」でクライマックスに突入すると、ラストは「ミッドナイトセブンス」から「WANT YOU」を。ライブ中盤、ににちゃんが咆えた「生きろ!」の一言。その切実すぎる願いは、grating hunnyが3人に共振した理由を何よりも物語っていた。

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「つきみに初めて出来た後輩バンド、grating hunny始めます!」とつきみへの最大級の愛情と共に飛び出したgrating hunnyは「Donʼt forget grating hunny.」でキックオフ。弱々しさと強がりを綯い交ぜにしたスズキタイヨウ(Vo,Gt)のボーカリゼーションや、ヤマオカテッタ(Dr.Cho)による心臓をぶち抜くようなバスドラム、容赦なく飛び跳ねるオオグロマサミ(Ba.Cho)のアグレッシブなプレイは、いずれもひたすらに快活で、「バンドって、魔法でも仕事でも革命でも奇跡でもなくて、悪ふざけなんですよ。でも、その悪ふざけが人を変える瞬間を見たから、本気で歌を作ろうと思いました」と語った通りの、爆音を鳴らすことに対する憧憬を乱反射させていく。

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上述のMCから少年性を強く含んだ唱法で披露された「未成年だった」は、この手とこの足で1秒先へゴーストレートしていくことを宣言する1曲。未来への恐怖とかけがえのない人への感謝、そして敬愛を、整理もつかないままに書き殴ったリリックで突き付けるからこそ、〈幸せになるために生まれてきたから 僕は今日もチャリを漕ぎます〉という終の一行が殊更に強烈な重みを帯びる。ペダルを漕ぐ足を止めたら、ド派手に転んでしまう。それゆえに、彼らは親からもらった血液と愛情をその身に携えて、幸福へと歩みを進めているのだろう。

「みんなと会えたのって僕が音楽をやっていたからだと思うと、何があっても音楽を続けようと思ったよ」とプレイした「音楽準備室」を終えると、今回の企画につきみを呼んだ理由について、スズキはこんな説明を口にし始める。

「高3の6月にお母さんが自殺して、その後つきみと同じイベントに出た時、ににちゃんから貰った言葉が嬉しくて。ににちゃんみたいに人を救えるようになりたかった。めちゃくちゃ、つきみの音楽を聴いてきたから呼ばせてもらいました」。

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3人への憧れと感謝を真っ直ぐに伝え、「student」で腹の中でうごめくモヤモヤごと全てをブッ飛ばす絶唱をかますと「シェルター」へ。「地下室にいたら何も聞こえないし、怯えなくていいんだよ」という語りが、降りかかる厄災からプロテクトするための壁を建設するために打ち鳴らされるオダキッペイ(Gt,Cho)のチョーキングギターが、「ここにいれば大丈夫だ」と優しく語りかけていく。4人のやってみたいから始まったgrating hunnyは、確かに誰かを守るためのバンドへと脱皮を続けているのである。それはスズキを、そして4人をつきみが支えたように。

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だからこそ、「このバンドは続いていきます。綺麗ごとばかりの曲だけど、僕のことを好きって言ってくれた人に届くと良いなと思います」とピリオドを打った「インソムニアの底で」は素晴らしかった。元来〈ねぇ 今夜、君と手を繋いで 月の裏に逃げるよ〉と眠れない夜の下、誰もいない2人だけの街での逃避行を描き、愛を囁くこの曲は、「今から言うことよく聞いてて」と前置いて歌われた〈残酷な明日を僕らは知ってる でも君は誰よりも可愛いから 僕が死なせないから〉の数行によって彼らの決意表明に変わっていったのだ。

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アンコールでは「友達とバンドをやってる、この状況が幸せです。キラキラしていない学校生活を送っていたヤツが友達とはしゃいでるところを見ていてください」と「君が見てる」から、「この曲がみんなの生きる意味になったら良いなと思います」と2度目の「未成年だった」でゴールテープを切った。この日2度も「未成年だった」を届けた理由。それはインタビューで「正直この曲に関しては、自分勝手な歌詞かもな」と話しているように、この歌がひときわパーソナリティな仕上がりと相成っているからだろう。つまり、自分のために書いた曲を自らの慰めやエールとして音にするのではなく、仲間の力を借りることでどうやって届けていくのか、換言すればどれだけ愛してもらえるのか、を測る試金石がこの作品だったのだと思う。であるならば、その結果は大成功。数々のロックバンドから、寝屋川の先人たちから、そしてつきみから受け取った光と活力を、目の前の人々に託せるバンドへと彼らは成長している。そんなgrating hunnyの新たな目的地は、自身初のワンマンライブを含む、東名阪ツアー。チャリの代わりにバンドワゴンに乗って、4人は君の街まで至極の悪ふざけを届けにきてくれる。

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文:横堀つばさ
撮影:金子千夏

SETLIST

grating hunny自主企画「体育館壊す」9/26(金)@心斎橋Pangea




grating hunny自主企画「体育館壊す」10/5(日)@下北沢SHELTER




RELEASE INFORMATION

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grating hunny「未成年だった」
2025年9月17日(水)
Format:Digital
Label:SEEZ RECORDS

Track:
1. 未成年だった

試聴はこちら

LIVE INFORMATION

grating hunny「体育館壊す」
grating-hunny_フライヤー_1500_20251007.jpg
2026年1月9日(金)
名古屋 / 栄 Party'z
w/ 対バン有り

2026年1月17日(土)
東京 / 下北沢 SHELTER
w/ 対バン有り

2026年1月24日(土)
大阪 / 寝屋川 VINTAGE
初ワンマン!!

チケット前売:¥3,000 (ドリンク代別)

最速先着先行
10月5日(日) 22:00~
https://eplus.jp/gratinghunny/

EVENT
2025年10月10日(金)
新代田FEVER「FESTIVAL OUT × Ruby Tuesday "Sound Of Liberty" 」
w/ 少年キッズボウイ, JIJIM, 水平線

2025年10月11日(土)
「FM802 MINAMI WHEEL 2025」 

2025年10月12日(日)
広島市内10会場「SUPER ROCK CITY HIROSHIMA 2025DX」  

2025年10月18日(土)
大阪・心斎橋ANIMA
w/ 極東飯店, 奏人心, 爛漫天国

2025年10月19日(日)
嵯峨美術大学・短期大学「嵐芸祭2025」

2025年10月20日(月)
寺田町Fireloop
w/ Reinore, 赤気, スパノヴァ特急, BIG MOUSE GROLY

2025年10月24日(金)
寺田町Fireloop
w/ THE HAMIDA SHE'S, 炙りなタウン

2025年11月5日(水)
心斎橋Pangea
w/ mogari, muk, Viewtrade

2025年11月10日(月)
寝屋川VINTAGE w/ the paddles, Sunny Girl, the 奥歯's

2025年11月14日(金)
心斎橋BRONZE
w/ YAPOOL, Gill Snatch, The Dahlia

2025年11月23日(日)
心斎橋Pangea
w/ The Chats (from Australia)

2025年11月24日(月)
「歌舞伎町 MUSIC CHRONICLE 2025」@新宿10会場

2025年12月6日(土)
「下北沢にて'25」@下北沢21会場   
and more...

LINK
オフィシャルサイト
@gratinghunny
@gratinghunny_info
@gratinghunny
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