- TOPICS
- FEATURE
2025.05.25

FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!ゆうらん船・TAMTAM・yeti let you noticeほか全28作品 -2025.5.24-
New Release Digest Part 1
みさと:5月19日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全28作品、Part-1をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。さあ、小田奈都美さんです。
金子:福岡出身、シンガーソングライターの小田奈都美さんですけど、リリースは約半年ぶりぐらい。今回も伊豆スタジオでレコーディングをしているとのことです。小田さんはこういう幽幻でアンビエントな音像の曲が似合いますね。
今回「薄明」というタイトルで、日没や日の出ぐらいの時間、マジックアワーとかに近い言葉だと思うんですけど、どちらかに偏ることなく、中間で、ぼんやりしているけど、でもそこにこそ大事なものがあるんじゃないか、みたいな感覚は小田さんの音楽にすごく合ってる気がします。
みさと:本当ですね。母なる大地、海より深い愛みたいな、懐の深さが全面的に出ている世界観を、さらに盛り上げてくれるようなアンビエント感のアレンジというのが私も好みですね。頑張っていってほしい。続いて、zonji。ちょっとひさしぶり?
金子:FRIENDSHIP.からのリリースは結構ひさしぶりなんですけど、この間にTVアニメ『キングダム』のオープニング曲を担当していたり、アルバムを出したりしていて、もともとユニットだったんですけど、今年になってメンバーの脱退があり、阿部将也さんのソロプロジェクトとなってからは初めてのリリース。
ユニットのときから「在宅系ミュージシャン」としてホームスタジオで楽曲を作っていて、(新体制になっても)その延長にあって、今回の曲も打ち込みをベースにしつつ、ロック的なサウンドになっているという特徴は変わらずにありました。タイトルが「hero?」で、はてなマークがついてるんですけど、誰かにとっての正義はもしかしたら誰かにとっての悪かもしれないというその揺らぎを描きながらも、自分の正義を大事にしたいということを描いていて。〈やれるとこまではやってみるよ〉という歌詞がすごく印象的で、それが自分の正義でもあるし、1人になって、またここからやっていくよという決意表明にもなっている曲かなと思います。
みさと:私が気になったのは<みんな被害者で>というワードなんですけど、この時代、それぞれの正義があって、それを断絶しやすい世の中、一言言いやすい世の中にはなってしまってるなと思って。zonjiさんのこれまでの経歴的に、マス向けなポップさと、彼の音楽性だったり美意識をさらに高めるようなアウトプットのバランスがすごく面白い楽曲だったと思います。ミステリー要素のあるヒューマンドラマの主題歌とか合いそう。そんなPart-1からどうしましょう?
金子:ゆうらん船の新曲を紹介しようと思います。7月にアルバムリリースが決まっていて、そこからの先行配信。今回は2曲出ますけど、「Departure」に関しては音像がすごく独特で。このアナログとデジタルの中間、ローファイとハイファイの中間みたいな、ぼんやりサイケっぽさもあり、でも楽曲自体はフォーキーなポップさがある。このバランス感は他ではなかなか聴けないです。あとは後半にシンセが入ってきて、そこのパートはすごく高揚感があったり。ゆうらん船はやっぱりいいですね。
みさと:コーラスで始まったと思ったらすぐにデジタルノイズ。ずっと中間を泳いでいて、でもその中間はただの中間じゃなくて、一癖ある。「Departure」というタイトルで、別れと始まりという言葉を使わずとも表現する言葉選び。これもまたある意味、曖昧で真ん中を行く言葉選びをしていましたね。私の中で印象的な歌詞が<階段ひとつ飛ばしで駆けのぼった><扉ひらくのを見てた><君のこと瞬きの間に残した>。この3つってワクワク感があったり、未練や不安があることまで見えてくるけど、明言しないというのが、(ゆうらん船の)オリジナリティですよね。
金子:どういう風に曲を作ってるか聞きたいから、アルバムリリースのタイミングとかでゲスト来てくれないかな。
みさと:本当ですね〜。来てほしいな。
New Release Digest Part 2
みさと:
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-2でした。リリースおめでとうございます。 さあ、はじめましてさんです。End Must Be(エンドマストビー)。
金子:「縁を結ぶ音楽プロジェクト」 のEnd must be。
みさと:いいですね、おしゃれ。
金子:ボーカルとギターとコンポーザーの3人組のユニットで、End Must Beとしての活動は最近始まったみたいなんですけど、それぞれのSNSとかを覗くと、結構キャリアのある方たちのようで、この完成度は納得です。今回の「Live On (Minami-Aoyama Samba MIX)」はもともと原曲がシングルとして出ていて、その曲はこのユニトットのコンセプトである80年代シティポップと90年代渋谷系の感じが表れていたんですけど、今回は「Minami-Aoyama Samba MIX」ということで、まさにサンバ風になっていると。でも、こういうブラジル音楽からの引用も渋谷系らしさだったりするので、文脈的にも繋がると思いました。
みさと:ボーカルにあざとくないコケティッシュな大人のリラックスが詰まってて、サンバの懐かしさと現在のシティ感との間を行き来する、対極にあるものを結ぶ多様な魅力が詰まった1曲だったと思います。続いて、SuU。
金子:SuUはひさびさのリリースですね。約2年ぶり。2024年にもともと楽曲に参加していたminakoさんが正式メンバーになり、新体制で初めての新曲をリリースと。
みさと:すごくよかった。
金子:ダブでサイケデリックな世界観の楽曲になっていて、5分半以上と尺も長く、ジワジワと迫ってくるような楽曲の中、minakoさんのボーカルがアクセント的にいい効果を生んでいますね。最近で言うと、カネコアヤノさんの「ラッキー」とか、ダブな世界観という点で近しいものを感じたりもしました。
みさと:パワーワードに対して脳内で鳴ってるような音質でminakoさんの声が重なるんですけど、単純なコーラスワークではない。あの瞬間、minakoさんの方に耳がぐっと引き寄せられるような、言葉の持つ力とアレンジの力、宅録ならではの距離感がすごく詰まっていました。ユニットになったことによって、パワーアップしたんだなあと実感できる曲でした。そんなPart-2からどうしましょうか?
金子:TAMTAMの新曲を紹介しようと思います。
みさと:最高だよ!アルバムです!ありがとうございます。
金子:最高ですね(笑)。アルバムとしては『We Are the Sun!』から約5年ぶりなんですけど、去年EP 『Ramble In The Rainbow』がワシントンDCのレーベルPeoples Potential Unlimitedから出ていて、それによって海外のリスナー、好事家たちに絶賛され、いろんなメディアで取り上げられているという状況がありつつ、今回も同じレーベルからワールドワイドリリース。
TAMTAMの音楽性はいろんな要素が混ざっていて、「Dragon in the Lagoon」一曲だけをとっても、シンセファンク、エキゾチカ、バレアリック、ニューエイジとか、いろんな要素が入ってるんですけど、でもアルバム全体を聴くと、個人的にはもともとのダブバンドという出自に一周回って戻ってきたような感覚もあったりして。
それも含めて、今回のアルバムはルーツ回帰みたいな印象もあって、いろんなジャンル、いろんな国の要素が混ざってるんだけど、すごく日本的な音楽でもあるように感じたんですよね。今回『Where They Dwell』というタイトルで、"Dwell"は「住む」とか「存在する」みたいな意味を表す単語で、コメントでは"私たちが旅の途中で実際に訪れた街や自然の風景とパーソナルで心象的な世界、それらが重なり合って生まれた特別な場所をテーマにそれぞれの楽曲を制作しました。今作が誰かにとっての安らげる場所となれば幸いです"とあって。この「場所」というのは聴き手それぞれにとっての安らげる場所を当てはめることができると思うんですけど、TAMTAMにとってのルーツである日本だったり、ダブだったり、そういう「場所」も感じさせるアルバムになった印象を受けました。
みさと:同感です。やっぱり旅って帰る場所があるからこそ、新しい場所を見て思ったこと、感情に気がつけると思うし、透けてくる新しさと回帰した瞬間が1つの作品に共存するって自然な形なんだろうなと思いながら聴かせてもらいました。
金子:海外で広く聴かれたからこそ、改めて「自分たちのアイデンティティってなんだろう?」みたいな、そういう視点もあった気がする。
みさと:海外の人が自分たちのルーツを持ってどう受け止めるのか、日本のリスナーさんたちがどう受け止めるのか、反対方向から来ても、結局ここで混ざり合うという面白さがありました。あと、今回のタイトルが前作EPの『Ramble In The Rainbow』にちょっと通じるような感じじゃないですか。過去曲も含めて愛してほしいという感じがしますよね。
New Release Digest Part 3
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェストPart-3でした。リリースおめでとうございます。あべまえば、ちょっとひさしぶり?
金子:今年最初のリリースですね。プロフィールを見ると、昔の曲をマカロニえんぴつのはっとりくんがインスタで紹介してたり、去年出した「ベッドタウン・エンジェル」は川谷絵音くんのラジオで紹介されてたりして。この2人は僕がよく取材をしている人たちで、2人のやってる音楽性は全然違うんだけど、上の年代の音楽が好きなことが共通点で、くるりやスピッツやaikoさんの話とかをよくするんです。その流れでいうと、今回の曲はサニーデイ・サービスの感じに近いなと思って。サニーデイ・サービスはくるりの先輩バンドみたいな立ち位置だったりもするので、系譜的にも納得というか。その上で歌詞の世界観はあべまえばさん独自のものがあり、オリジナリティと文脈をどちらもちゃんと感じさせる、いい曲でした。
みさと:爽やかギターロックチューンにのせる悲しく辛い歌詞、まさに急に春になった天気を表しているなと思っていて、すごく置いてかれたような気持ちになるんですよね。でも、その置いていかれた気持ちをどういうふうに消化していくのか、とても寄り添ってくれる1曲だったと思います。続いてaccobin。
金子:accobinも今年最初のリリースですね。福岡晃子さんのソロプロジェクト、accobinですけど、今回の曲はダブ~アンビエント的な音響がすごく美しい楽曲で。フィールドレコーディングが入ってたり、5分ぐらいの尺をじっくり聴かせる曲になっていて、最後にビートが入ってくる展開の面白さもありました。「Flowers」というタイトルで、"神楽坂にある私にとって大切なお花屋さんのことを思って作った曲です"とのことなんですけど、生命の神秘を歌ったような楽曲のテーマとサウンド感がリンクしていて、いい曲でした。
みさと:お花って人間とは違う存在だけど共存してて、それぞれの美しさだけを追求していると思うんですよ。花の美しさ・強さは生きとし生ける存在の共通項かもしれないし、もしかしたら揺れがちな人間に足りない部分なのかも。生命の神秘と根源を感じさせてくれる壮大な1曲。でも、サウンド感はこっちに寄ってきてくれる感じ。
金子:フィールドレコーディングで声が入ってくるのがその"近さ"を感じさせますよね。実際にお花屋さんで録っているのかはわからないけど、そんな感じがすごく伝わってくる。
みさと:壮大になりすぎず、同じ日常生活の中で感じられる、味わえるんだという落としどころが福岡晃子節だなと思いました。そんなPart-3からどうしましょう。
金子:yeti let you noticeの新曲を紹介しようと思います。こちらもアルバムが完成しました。彼らはもともと2016年の末にミニアルバムを出して、そこから本格的に活動をスタートさせてるので、もう10年選手だったりするんですけど、オルタナシーンの盛り上がりにより、ついに時代とマッチしたというか、このアルバムは彼らにとっては記念碑的な作品になったんじゃないかなと思いました。彼ららしいオルタナティブなサウンドがベーシックにあるんだけど、10年やってきたのでアレンジはすごく多彩で、ビートミュージック的な要素も入っていれば、割とシンプルに弾き語りで歌を聴かせる曲もあったりして、そこは10年のキャリアを感じました。
あと今回ゲストも結構参加していて、客演で春ねむりさん、アレンジなどでFUJI、録音・ミックスでIvy to Fraudulent Gameのメンバー(福島由也)も参加と、FRIENDSHIP.色強めなアルバムにもなっていて、そういう意味でも嬉しかった。「37秒で」は実質的なアルバムのオープニング曲になっていて、アルペジオと変拍子で2分間を疾走していく。最近よくキーワードとして出てくるthe cabsの影響を感じさせるような1曲になっていて、かっこよかったです。
みさと:「opening」という曲が1曲目に収録されているんですけど、その曲自体がとってもノイジーで、チューニングが合っていないアルペジオから始まるんですよね。そこから2曲目の「37秒で」はチューニングがバチッと決まったイントロから始まって、最後のアウトロでまたノイズが乗るという。1曲目、2曲目が地続きになっているこの演出もやっぱりアルバムの醍醐味の1つなので、ぜひ全曲通して聴いていただきたいですね。
番組の後半は烏兎 -utoがゲストで登場!
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
NEW Releases FRIENDSHIP.
FM福岡で毎週水曜日の26:00~26:55まで放送中のラジオプログラム「Curated Hour〜FRIENDSHIP. RADIO」のアフタートーク、番組の中で紹介しきれなかったタイトルを紹介。DJの奥宮みさと、音楽ライターの金子厚武の2人でデジタル音楽ディストリビューション・プロモーション・サービスのFRIENDSHIP.から配信される新譜を中心に紹介するプログラム。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3奥宮みさと
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10