REVIEW

2026.07.15

caico「kinunari」──京都から届いた、生活が擦れる音

caico「kinunari」──京都から届いた、生活が擦れる音

絹鳴りが不和を示す

眠れない午前2時、汗でへばりついたパジャマと布団の隙間から、ガサゴソとした音が響く。朝6時半、改札と革靴の音に混じってスーツの擦れる音が鳴っている。2025年10月に始動した京都発の3ピースバンド・caicoが、3枚のデジタルシングルを経てリリースする1st EP。既発曲2曲を含む全4曲を閉じ込めた1枚に授けられた名前は、絹同士が上げるキュキュッとした繊維の鳴き声だった。

こうしたタイトルはバンド名にも直結するものだが、絹鳴りが摩擦から生じる現象であることを考えると、ここでいう"kinunari"とはズレや不和、衝突の暗示なのではないだろうか。実際、くぐもった2本のギターを重ね、みるみるうちにトーンを上げていく2曲目「繭」で歌われているのは、血で血を洗う戦いと平和の中で思いまどろむ己の対比だし、3rd シングルとして発表された「遠く離れて」も、過去と未来のあわいの中で卑近な日常を見直すための楽曲である。鏡堂章太(Vo,Gt)が「避け難い悲しみや惨たらしい戦争、他人の悪意、降って湧いてくる虚無から、我々はどれだけ遠く離れていられるだろうか」と記したセルフライナーノーツや、〈このままで居られれば 他に欲しいものなんてないよ〉〈さようなら またこの街で 出会えたら何を話そう それぞれ の夜が混ざり合っていく〉と綴られた詞からは、"互いの領域を侵犯することなく、自分を貫け"なんてメッセージを受け取れるのだ。

一方、彼らの音楽は決してどんよりと沈みきっているわけではない。〈轍をなぞる〉というよりも〈わだっちをなぞる〉、〈欠けた心〉というよりも〈かけった心〉のような発声は、その促音によって数秒のタメを生成しながら、軽やかな気配を醸し出していく。2ndシングルからの収録となった「Telepathy」のイントロを彩る弾んだビートだって、軽妙な歌声をドラムに翻訳したかのようである。

ついつい他人事になってしまいがちな、しかし一切他人ごとではない争いを、目前の暮らしへ咀嚼してくれるcaicoのミュージック。関西のインディーズシーンにて活動を続けてきた3人が縒る作品は、しなやかでありながらも、24時間の随所に潜む軋みを確かに指し示していた。

文:横堀つばさ



RELEASE INFORMATION

kinunari_caico_jk_20260713.jpg
caico「kinunari」
2026年7月15日(水)
Format:Digital
Label:FRIENDSHIP.

Track:
1. 通雨
2. 繭
3. Telepathy
4. 遠く離れて

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LIVE INFORMATION

caico 1st EP「kinunari」Release Party
日時:2026年7月31日 (金)
場所:京都livehouse nano
開場18:15/開演18:45

出演:
caico
Highvvater
降之鳥
砂場泥棒
ZOO KEEPER

前売り¥2,500/当日¥3,000(+1D)

TICKET:
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfg24onDo4jnRL8j6_DsyJOFdFs1Y3ql0aUAdAyAApeDIClrw/viewform?usp=header

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@caico_band
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