SENSA

2025.11.20

Age Factory、「Sono nanika in my daze」Release Tour 2025ファイナルでの燃えるような一夜。

Age Factory、「Sono nanika in my daze」Release Tour 2025ファイナルでの燃えるような一夜。

Age Factoryは美しくなったと思う。荒ぶるような激しさの中にも凛とした空気があり、洪水のようなノイズには眩い輝きがある。バンドとして心技体の全てが揃ったような感じだろうか。引き締まった強靭な演奏からはロックバンドとしての誇りと、仲間やリスナーを丸ごと連れて次のステージへと登っていこうという度量を感じる。そう、このバンドは加速度的に進化しているのである。「やっと始まりと言えるアルバムを作ることができた」とは8月に会った時の清水英介(Vo,Gt)の言葉だが、このライブの最後の言葉は「『Sono nanika in my daze』は今日をもって終わる。俺たちは新しい場所へ向かう」である。ここにはもう以前の彼らはいない。だが、これまでの何か一つでも欠けていたら今の彼らはいないのだ。「15年間やってきたことは間違いじゃなかった」「偶然が確かなものに変わっていく」。2026年11月8日、彼らは日本武道館のステージに立つ。

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燃えるような一夜だ。「Age Factory presents "Sono nanika in my daze" Release Tour 2025」、そのツアーファイナルのZepp DiverCity公演である。開演の30分ほど前に到着すると、会場前には既に大きな人だかりができていた。まだ始まってもいないのに、熱気が外まで漏れ出しているような雰囲気である。

ライブは閃光のような青い光で始まった。間違いなくAge Factoryを象徴するカラーだろう(多くの楽曲のMVや歌詞、イメージに「青」が使われている)。降り注ぐスポットライト、澄んだ色のノイズ、視界が霞むような轟音ーークリアな音像とアンセミックな楽曲が印象的だった『Songs』(2024年リリース)からは一転、ノイジーで粗暴なサウンドで押し通す新作『Sono nanika in my daze』のモードを反映させた幕開けだ。1曲目はもちろん「陽炎」、そして「rest/息」「海に星が燃える」と続いていく。新作を核にセットリストを組んだことは明白だ。

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「海に星が燃える」がいきなりハイライト。清水英介、西口直人(Ba)、増子央人(Dr)、サポートギターの有村浩希の鉄壁のアンサンブルに息を呑む。ポストハードコアやエモを消化した爆発力のある楽曲だが、踊れるリズムを感じさせるところが昨今のAge Factoryの特徴だろう。ここ数年のヒップホップやハウスからの影響は、間違いなく彼らの音楽に一層の魅力を付与している。「東京もたもたすんな」「全員でいこう」とアジテートする「Shadow」で会場のテンションが爆発。ライブ序盤にしてももう何が何だかわからないくらいのエネルギーである。

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いつも素晴らしい増子のドラムはこの日も絶好調。いつ頃からか清水は「連れていく」「行こう」というような言葉をよく口にするようになったし、彼らのライブを見ればそれが伊達ではないことがわかるだろう。だが、それは増子のドラムがあってこそだと思う。爆撃機のように力強いビートは会場全体を飲み込むような迫力があり、アルバムの取材で語っていた「踊れるかどうかは強く意識している」「スネアの位置は特に」という話は、まさに今のAge Factoryの精神性と不可分である。

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ブチギレたテンションの2ビートで駆け抜けていく「Shadow」を終えると、「3」「漆黒」とこのバンドの暗部が噴出する。どちらも殺気立ったボーカルを聴かせるハードコアであり、中でも「漆黒」における不穏なベースは極上だ。『Sono nanika in my daze』の作風にはどことなく彼らの原点を思わせるところがあったが、こういう肌が焦げつくような低音は西口の変わらない魅力だと思うーーと、そんなことを思っていたら、曲を終えると同時に「気合い入れすぎて」ギターに不具合が発生。併せてシンバルも割れたということでMCを挟む小休止(まあ、楽器がお釈迦になっても驚かないような勢いがありました)。

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「同じ時代に音楽を残せてよかった」(清水)というほどの共感を寄せるYDIZZYを招いて「hernoiz feat. YDIZZY」を歌い、そのまま「CLOSE EYE」までをコラボレート。後者は挑発的な音色のボトム、そして空間を切り裂くような有村浩希のギターがキマり過ぎてクラクラする。リリースと同時にアンセムとなった「向日葵」は西口のベースがよかった。この曲は清水の抒情的な歌が何よりもの魅力だが、同時に力強く腰に響く重低音によって実に踊れる1曲である。

「友達のために曲を作っている。あいつらが踊れればいいなと思っている。そこにみんなが入ればいいと思う」(清水)という言葉は、そっくりそのままAge Factoryを駆動する原動力だろう。そのMCがあったからか、「Dance all night my friends」はいつも以上にエモーショナルに響いたような気がした。そして「HIGH WAY BEACH」、盟友lil soft tennisが駆けつけた「may feat. lil soft tennis」を挟み「プールサイドガール」である。

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清水英介は始めから詩人だった。Age Factoryはライブに明け暮れた15年で仲間を増やし、演奏をタフにしていった。だが、感傷とロマンを含んだ繊細さと、ヒリヒリとした本音が同居するリリックはまさに初期から変わらない魅力だろう。〈ずっと踊っていたいんだ/この夜の終わりまで〉と歌う「Dance all night my friends」の風景に、〈明日が来ないようにさ/踊ってくれ〉〈17の夜に君と捨てたあの終電〉と歌う「プールサイドガール」の景色がオーバーラップしていく。以前、清水英介が「Age Factoryには夜のイメージがある」と言っていたのは偶然ではない。明日を見ないでこの夜を踊り明かすこと、あらかじめ決められた終わりを前に、刹那的に胸を焦がすこと。それはこの音楽に通底する光景である。

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次々と拳が上がり、会場中からコーラスが聴こえる「TONBO」を終えると後はクライマックスへと駆け抜けていくだけ。ART-SCHOOLからの影響を消化した「Blood in blue」はやはり最高、この曲の催眠感のある四つ打ちは是非これからも開拓してほしい。ハイライトの連続のようなライブだが、独断で後半から1曲だけ選べと言われたら「Everynight」を推したい。胸を締め付けるようなギターを鳴らす有村浩希のプレイは際立っており、清水英介のボーカルからも、心なしか楽器の音に身を任せるような余裕を感じる。ここまでギアを上げて加速し続けてきた本ライブにおける、唯一と言ってもいい華麗なるトーンダウン。回転するミラーボールがライブハウスを宇宙に変える。寂寞とした歌詞は、銀河の中にいるような照明の中でゆったりと浮かんでいる。

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「Sono nanika in my daze」は不思議な楽曲だ。視界を覆うような轟音が鳴っているのに、ひどく静寂を感じる。無駄なものは何ひとつなくて、ただ4人が奏でるアンサンブルだけがそこにある。歌詞は抽象的でほとんど情報がない。独白のような歌唱も、鼓膜をつんざくようなギターにかき消されていく......まるで清水英介の記憶の中に運ばれていくようで、聴いていると醒めた気分になっていくのだ。Age Factoryの源流にあるポストロックやエモ、オルタナティブロックからの影響を指摘するのは容易いが、むしろ今の彼らにしか作れない楽曲だろう。

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自主レーベル「0A」の設立を発表したのが7月。アルバムリリース後、2ヶ月かけて回ったツアーも無事に終了。だが、来年の11月までこのバンドに何もないわけがないだろう。Age Factoryは本気でひっくり返そうとしている。今が嵐の前の静けさに思えてならない。

文:黒田隆太朗
撮影:Odagiri Raku (Healthy Cream)、Kazma Kobayashi (Bearwear, UUWorks)

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